エンタープライズ:ニュース 2003/02/18 19:42:00 更新


日本IBM、e-ビジネス・オンデマンドを支えるミドルウェア戦略を発表

日本IBMが渋谷のソフトウェア・コンピテンス・センターで2003年の同社ソフトウェア戦略を明らかにした。e-ビジネス・オンデマンドを支えるミドルウェア4ブランドを再編・強化し、顧客に新しい価値を提供していくという。その拠点となる同センターでは、パーベイシブコンピューティングの分野もカバーできるよう機能が拡充される。

 日本アイ・ビー・エムは2月18日、東京・渋谷の「ソフトウェア・コンピテンス・センター」(Software Center of Competency:SWCOC)でプレスブリーフィングを行い、2003年の同社ソフトウェア戦略を明らかにした。

 IBMは昨年秋、「e-ビジネス・オンデマンド」戦略を掲げ、生き残りを賭けてダイナミックな企業連携を図る顧客をソリューションプロバイダーとして支援しようとしている。冒頭の挨拶に立ったソフトウェア事業部長の堀田一芙常務は、「顧客の最大の課題は、ばらばらに機能しているITリソースの“連邦化”(フェデレーション)。その点では、顧客らが先行しており、われわれは1〜2年遅れていた」と率直に認め、そのうえで、ミドルウェアこそが、オンデマンドなビジネスの基盤となるとした。

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「4ブランド再編・強化の成果は2003年に」と話す堀田氏


 7月1日に堀田氏がソフトウェア事業部長に就任して以降、同社のミドルウェア4ブランド(WebSphere、DB2、Lotus、そしてTivoli)は、すべて新しい製品が出そろったが、それぞれのブランドで実証済みのコンポーネントをJ2EEベースで共有化していくという。これは単に、クロスブランドで開発工数を節約しようとか、製品投入のスピードアップを図ろうというだけにとどまらない。堀田氏によれば、真の狙いは、事実上の4ブランドの再編であり、新しいポートフォリオの拡充だという。

「オンライントランザクションシステムだったWebSphereはe-ビジネスの統合インフラへ進化し、DB2はベンチマークを競ったRDBから統合情報インフラへと生まれ変わっていく」(堀田氏)

 この日のブリーフィングでは、そうした例の中から特に、国内ではユビキタスという言葉の方が一般化した「パーベイシブ」と、IBM Lotus部門が得意としてきた「コラボレーション」に焦点が当てられた。日本IBMロータス事業部の新しい製品戦略については、別記事に書くとして、ここではパーベイシブコンピューティングに対する同社の取り組みについて紹介しよう。

SWCOCがパーベイシブ開発の拠点に

 IBMでは、パーベイシブコンピューティングを支えるミドルウェア製品として「Everyplace」シリーズを提供している。WebSphere EveryplaceやDomino Everyplaceがそれだ。

 この日のブリーフィングでは、Notes/DominoやMicrosoft Exchangeのフロントエンドとして、「WebSphere Everyplace Access」を稼動させ、Javaを搭載した携帯電話から効果的に社内の電子メールやスケジュールにアクセスできるデモを行った。1月23日、日本IBMでは業務システムに携帯電話からアクセスできるようWebSphere Everyplace Accessの機能強化を図ることが明らかにされている。

 会場では、待ち受けiアプリ「IBM Sync Client」が定期的に電子メールや在庫データなどをアクセスし、差分があれば、同期を図ってくれるデモが行われた。個人所有の携帯電話を仕事に使うことも多いが、これならプライベートと使い分けられる。iアプリを利用するため、PIM機能や業務アプリを開発し、使い勝手の良いシステムにするも可能だ。

 携帯端末を企業で使う場合、情報漏洩の心配がつきまとうが、管理者が電子メールや顧客データの削除指示を出すこともできるという。

 また、組み込み型システムの制御システムの一例として、次世代のビル管理システムのデモも行われた。将来は、ビル管理システムのホスティングサービスを提供するサービスプロバイダーが登場し、複数のビル管理会社から請け負うというシナリオだ。デモでは、2月12日にネットコンシャスから発表されたばかりのPowerPC搭載「405 Answerボード」がコントローラーとして使われ、WebSphere Everyplace Serverを介してJavaアプリケーションを配信、エアコンを制御・監視してみせた。

 405 Answerボードは、いわゆる「リファレンスプラットフォーム」として位置付けられ、Javaアプリケーションの開発・テストを経て、さまざまなデバイスを生み出す基盤となるものだ。今後、日本IBMでは、405 Answerボードを用意してデバイス機器メーカーとISVが動作検証を行えるようするほか、大和事業所のソフトウェア開発陣、約500人の力も結集し、ソフトウェア・コンピテンス・センターの機能を強化していくという。

 堀田氏は、「家庭市場や自販機などの分野で斬新な用途が出てくる」と期待する。

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[浅井英二,ITmedia]