エンタープライズ:ニュース 2003/03/04 14:06:00 更新


基調講演:「HP、インテル、そしてBEAはCIOのベストフレンド」とフィオリナCEO

「BEA eWorld 2003」カンファレンスの基調講演にHPのフィオリナ会長兼CEOが登場した。HPはBEAやインテルとの協業を通じて、最高のROIを提供できるとし、バンク・オブ・ニューヨークなどで上げた目覚しい成果を紹介した。フィオリナ氏は、同社のパートナーストラテジーをIBMとの差別化要素として強調する。

 米国時間の3月3日に開幕した「BEA eWorld 2003」カンファレンスの基調講演にヒューレット・パッカード(HP)のカーリー・フィオリナ会長兼CEOが登場した。HPは、昨年9月からHP-UX 11iへBEA WebLogic Serverをバンドルするなど、緊密なパートナーシップを築いており、フロリダ州オーランドの同カンファレンスではメインスポンサーを務めている。また彼女自身、1999年7月にHPのCEOに就任して以来、企業統合に取り組んできており、「Converge」(収れん)というテーマを掲げた今回のeWorldにはふさわしいといえる。

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公式には写真撮影が禁止されたフィオリナ氏の基調講演


 淡いブルーのスーツに身を包んだ彼女は、「高い信頼性はもちろん重要だが、ゲームのルールは、スピードやアジリティ(俊敏性)に変わりつつある。プラットフォームは変化へのイネーブラーでなければならない」とし、柔軟なシステム構築と開発生産性の高さを売り物にするBEAとのパートナーシップをアピールした。

 HPは、コンパックコンピュータとの合併によって、数少ないエンドツーエンドのソリューションプロバイダーとなった。フィオリナ氏は最近よく「もはや単に速いからといって顧客がマシンを買う時代ではない」と話すが、eWorldカンファレンスでもこの言葉を繰り返した。

「顧客が求めているのは、リターンであり、リアルバリュー。HPなら初期コストと運用コストを下げ、最高のROI(Return on Investment)を提供できる」とフィオリナ氏。

 彼女は、ROIで差別化するためにも、J2EEアプリケーションサーバのリーダーであるBEAとの協業が極めて重要だと強調する。

 HPとBEA、そしてインテルの3社による協業は、バンク・オブ・ニューヨークなどで目覚しい成果を上げており、eWorldカンファレンスでも同銀行によるカスタマーセッションが行われている。

 フィオリナ氏は、基調講演の中で同銀行によるパフォーマンス評価について触れ、「RISCアーキテクチャと比較して、トランザクション処理性能は70%向上し、コストは46%節約できる」と紹介した。

JRockitが好成績を叩き出す

 こうした大幅なプライスパフォーマンス向上の背景には、インテルアーキテクチャに最適化されたJVM、JRockitの存在がある。JRockitは、スウェーデンのアピール・バーチャルマシン買収によって手に入れたもの。ちょうど1年前のeWorldカンファレンスでその買収が発表されている。

 Javaランタイム製品グループを統括するボブ・グリズウォルド副社長は、初日に行われたプレスとの懇親会で「JVMを開発・提供しているのは、主にサンとIBMだった。彼らは自前のRISCプロセッサに力を入れており、マイクロソフトはJavaから手を引いてしまったため、インテルアーキテクチャに最適化されたJVMがなかった」と1年前の買収を振り返る。

 バンク・オブ・ニューヨークによるパフォーマンス評価についても「われわれ以上に彼らが驚いている。今回はWindows 2000 Advanced ServerとProLiant DL530 G2(4ウェイXeon MP×6ノード)の組み合わせだったが、ウォール街はLinuxでの評価も検討し始めている」と話す。

 フィオリナ氏は、BEAとのそれに代表されるパートナーストラテジーをIBMとの差別化要素として強調する。

「HPには、イノベーションを追求する規律があり、単に人や研究開発だけでなく、BEAのようなパートナーとの関係にも投資を行っている。それはわれわれの成功要因であり、自由な選択肢を提供するという点でIBMとの違いを際立たせている」(フィオリナ氏)

 BEAもWebサービスを介した.NETとのインテグレーションを掲げているが、顧客の異種混在環境をサポートするHPも同じだ。

 BEAとHP、どちらにとってもIBMは共通の敵だ。BEAのスコット・ディッゼンCTOが「WebSphereは歴史上最も複雑なソフトウェア」と酷評すれば、フィオリナ氏は「WebSphereは300以上の互換性のない製品を寄せ集めただけ。統合するには多くのコードを書く必要があり、IBMグローバルサービスに依頼しなければならない」とやっつける。

 最近、オラクルもIAサーバとLinuxへの肩入れを強めているが、プロセッサからミドルウェアまで自前で持つIBMは格好の標的になりやすい。

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[浅井英二,ITmedia]