エンタープライズ:インタビュー 2003/03/14 16:17:00 更新


Interview:Linuxのエンタープライズ浸透を支援するベリタス

「今の状況は、ちょうど10年前にUNIXが置かれていた状況に似ている」――米ベリタスでLinux戦略担当ディレクターを務めるラナジット・ネバティア氏はこう語り、当時と同じように信頼できるストレージ製品群を提供することで、Linuxそのものの堅牢性を高めていく役に立ちたいという。

 一連のストレージ管理製品群を、Solarisに引き続き、Linuxへも対応させる方針を明らかにしたベリタスソフトウェア(ベリタス)。同社の狙いはどこにあるのか。そして、この動きによってエンタープライズにおけるLinuxの位置付けはどう変わるのか。米ベリタスでLinux戦略担当ディレクターを務めるラナジット・ネバティア氏に話を聞いた。

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ベリタスは「ストレージ業界の永世中立国、スイスのようなもの。実にさまざまなベンダーと協業できている」と語ったネバティア氏

ZDNet ベリタスの中でLinuxはどういった位置付けにあるのですか?

ネバティア Linuxは、ベリタスにとって非常に重要なOSになっています。Linuxは急速に成長しており、その速度は、他のプラットフォームに比べても非常に早いものです。ただ、ベリタスは特定のプラットフォームに特化して製品を販売しているわけではありません。大事なのは顧客の要望に合わせていくことです。顧客がLinuxを望めばLinuxを、Windowsを望めばWindowsを、AIXを望めばAIXを提供する、そういうことです。

ZDNet これまでLinuxは、ヘビーユーザーや小規模サーバでは好まれても、エンタープライズの基幹システムにはなかなか浸透してきませんでした。

ネバティア だからこそ、われわれが参入するのです。ベリタスのストレージ管理技術やデータ保護技術によって、Linuxを堅牢なものとし、エンタープライズにおけるLinuxの浸透を支援していきたいと考えています。

 これまでのLinuxは、企業の基幹システムとして利用するに足るだけの準備が整っていなかったという見方は、確かに事実です。現在の状況は、ちょうど10年程前、メインフレームに代わってUNIXが登場し始めた時期に似ています。ベリタスは当時、UNIX向けに信頼性の高いジャーナルファイルシステムを提供することにより、UNIXをエンタープライズでも利用できる状態にし、市場の活性化を支援しました。それと同じことを、今度はLinux向けに行い、Linuxをいつでも企業の基盤として利用できるようにしていきます。

ZDNet 具体的にどういったソリューションを提供するのでしょう?

ネバティア 既に他のプラットフォームで提供してきたとおり、ハイアベイラビリティ、バックアップに代表されるデータ保護、それにストレージ管理という3つの分野でそれぞれ製品を提供していきます。

 ストレージ管理では、ボリューム管理やファイルシステムを通じて、パフォーマンスの向上やクラッシュ時の速やかなリカバリを支援します。2つめのバックアップですが、リスクにさらされていないデータなどはないのですから、これはもう欠かせない機能といっていいでしょう。ベリタスでは、既に多くの実績があるバックアップ機能を、Linuxにも提供していきます。最後のハイアベイラビリティも、ミッションクリティカルなシステムにとっては必須の機能です。これについても、他のプラットフォームと同様の価値を提供していきます。一連のLinux向け製品を提供することにより、しっかりとしたデータの保護と管理を実現し、Linuxを堅牢なものにしていきます。

ZDNet とはいえ、商用ベンダーだけでなく、オープンソースとしても、Linux環境でのストレージ管理を実現するためのツールやシステムが提供されています。ベリタス製品の特徴はどこにありますか。

ネバティア われわれが提供するのは、趣味で使うLinuxではなく、エンタープライズで使うLinux向けのストレージソリューションです。バックアップひとつとっても、さまざまなテープライブラリに対応するほか、遠隔地でのバックアップなどの高度な要件に応えられます。

 何よりの強みは、ヘテロジニアスな環境でストレージ管理を実現できることです。既に主要な5つのプラットフォームに対応していますし、「エージェント」の提供によって多数のアプリケーションをサポートしています。ハードウェアも問いません。さまざまなベンダーのシステムをここまで幅広くサポートしている製品は、まず他にないでしょう。

 またファイルシステムについては、EXT3やReiserFSなどオープンソースのものが提供されていますが、ベンチマークの結果、われわれのVERITAS Foundation Suiteは3〜5倍のパフォーマンスを実現しています。CPU負荷が増大したときに不安定になることもありません。というのも、ベリタスには過去10年もの蓄積があり、100名を超えるエンジニアを投入して技術開発に当たっているからです。この結果、予測可能で信頼性が高く、パフォーマンスにも優れたファイルシステムを実現できています。

ZDNet 企業にとっては、ストレージの運用管理にまつわるコストをいかに削減するかも課題です。

ネバティア それこそベリタスの真骨頂です。われわれは、よりよいデータ管理、ストレージ管理やリソースの最適化を通じて、LinuxのみならずSolaris、HP-UX、AIXなど主要なプラットフォーム上でコストを削減する手段を提供しています。ベリタスの製品には、コスト削減が最初からビルトインされているのです。

ZDNet Linuxの場合、メンテナンスなどにプロフェッショナルの人員を要することから、かえって運用コストが増大するという見方もあるようですが。

ネバティア そんなことはないと思います。まず、ハードウェアのコモディティ化によって、ベンダーに縛られることがなくなり、コストを削減することができました。次はOSです。OSもまたコモディティ化することで、同じようにコストを削減できると思います。

 究極的には、何に対して支払いを行うかという話になるのですが、さまざまな問題を解決するのは、実はソフトウェアです。ハードウェアもOSも、ソフトウェアを搭載する乗り物だと見なすことができます。なのに、ハードウェアやOSにそんなにお金を投資してもいいものでしょうか? ハードウェアやOSをコモディティ化すれば、コストの節約につながります。LinuxではTCOは下がらないなどという話には同意できません。

ZDNet 一方で、Linux市場に展開するにはパートナーシップも重要な役割を果たしそうです。

ネバティア そのとおりで、パートナーシップは非常に重要です。具体的な計画となると、現在進行中のものもあるのでお話できませんが、今後も引き続き、ハードウェア、ソフトウェアアプリケーションの両面にわたってパートナーシップを強化していきますし、コミュニティの土壌も尊重します。Linuxを巡る一種のエコシステムを作り上げ、エンタープライズにおけるLinuxを支援していきたいと考えています。

ZDNet 今後はどのような分野に力を入れていく予定ですか?

ネバティア ベリタスは既に、ストレージやサーバ、アプリケーションに対するアベイラビリティの実現は成し遂げましたし、ストレージのパフォーマンス管理やユーティライゼーションについても成功を収めてきました。今後は、サーバやアプリケーションに対して、パフォーマンス管理機能やユーティライゼーション機能を追加し、欠けている部分を補っていこうと計画しています。昨年末に買収したプレサイス・ソフトウェアやジェレバ・テクノロジーズの技術を活用して、こうした機能を提供していきます。



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[聞き手:高橋睦美,ITmedia]