エンタープライズ:ニュース 2003/05/15 22:20:00 更新


ITが市民と行政を結ぶ CRMで市民コールセンターを開設した札幌市

MSCE 2003初日、行政としてITを積極活用した北海道・札幌市の市民コールセンターの事例が紹介された。石狩平野の西南に位置する札幌市は、国内で初めて市民向け総合案内コールセンターを本格稼動。「市民第一主義」「市民志向の経営」に向けて、ITを積極活用していく。

 「the Microsoft Conference + expo 2003」初日、行政としてITを積極活用した北海道・札幌市の市民コールセンターの事例が紹介された。人口約180万人を抱える札幌市は国内で初めて自治体CRMを導入。市民に向けた総合案内コールセンターを今年4月から本格稼動した。

 札幌市は2001年3月、ITを積極活用して、都市経営・行政経営改革を目指す「IT経営戦略」を策定している。「市民サービスの向上」、「行政改革」、「産業振興」をその具体的なビジョンとして描いているが、市民コールセンターは「市民サービス向上」のための最重要施策として位置付けている。同市では、助役がCIOとなり、「先延ばし、形作りはしない」との厳格な方針の下、庁内から担当職員を募り6カ月という短期間で、CRMを利用した市民コールセンターを構築した。

北川氏

これからは個人情報の保護も問題。自治体のコールセンターとしては必要以上の個人情報を持たないのもポイント


 講演を行った札幌市役所の北川憲司氏(企画調整局情報化推進部IT推進課CRM担当係長)は、「CRMを用いたコールセンターは、電子自治体とは関係ないように思えるかもしれない。しかし、ほかのIT施策との相性がいい」と話し、電子自治体に向けた助走となるという。今後、様式(申請書)ダウンロードとの連携へとつながり、CRMには電子申請のためのナレッジが蓄えられてくる。「ヒューマンハイタッチなところから電子申請に対する裾野を広げていく」(北川氏)。

 自治体CRMは、企業向けCRMとは狙いが異なる。企業は顧客シェアなど市場を奪い合う武器にするのに対し、行政は市民やNPOなどと公的な課題を分け合っていく。札幌市にとって自治体CRMの導入は、「市民第一主義」「市民志向の経営」への決意表明に近いものだった、と北川氏。

 行政には行政組織としての課題もある。札幌市役所では、今後5〜10年で毎年1000人規模の団塊世代職員が退職する。大量のベテラン職員が去った後、少ない人員でどのように市役所を回していくかが課題だ。これによる退職金などの償還もピークを迎え、高齢化社会に伴う福祉ニーズも相まって、財政難も訪れる。これを解決するには、CRMを利用してナレッジを効果的に活用してかなければならない急務もあった。

 北川氏によると、札幌市の自治体CRMはまだ第1段階。最終ゴールは、eデモクラシーとも言える住民との政策議論の活性化を目指しているが、現在は“たらい回し”をなくし、情報の流れをスムーズにしていく段階だ。また、CRMを利用すれば、たらい回しの原因と批判されがちな“縦割り組織”の良いといころを引きすことになるという。

 市民コールセンターのCRMには、「Windows 2000 Server」「SQL Server 2000」「Excel 2000」を利用している。市民は、週7日8時から21時の間、電話、FAX、電子メールで問い合わせができる。6月からはWebからのFAQにも対応する。問い合わせを受けたコールセンターの職員がFAQデータベースを参照しながら回答し、市民対応状況を蓄積。市役所がサービス改善に役立て、さらにナレッジとしてFAQに蓄積するという流れ。コールセンターのモットーは行政には馴染みのない言葉"親切"だという。

 市民からの反応も上々だ。先行3区で行ったパイロットテストでは、問い合わせ内容に苦情は2%とほとんどなく、10点評価で行った満足度調査も平均8点以上となっている。

 札幌市では、Active Directory(AD)、Exchange 2000を利用してコールセンターとグループウェアとの連携を計っている最中。将来的には、施設の簡易電話予約やIPヘルプデスクサービスなどの機能追加を考えているという。

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関連リンク
▼the Microsoft Conference + expo 2003ページ
▼札幌市コールセンター
▼札幌市IT経営戦略
▼マイクロソフト

[堀 哲也,ITmedia]