エンタープライズ:特集 2003/05/23 16:00:00 更新


特集:第1回:「WebSphere」を知ろう (1/4)

この特集「WebSphereで始めるJ2EEプログラミング」では、IBMソフトウェアの「WebSphere Express」を利用し、J2EEプログラミングへとステップアップするためのJavaプログラミングの基礎を解説しよう。第1回目は、WebSphereについてを知るためのプロダクト概要の紹介だ。

 IBMソフトウェアのWebアプリケーションプロダクト「WebSphere」。初めて同社のプロダクトを見ると、その製品数の多さにおどろき、それぞれの役割りを理解するには苦労するだろう。この特集では、IBMソフトウェアのプロダクトの1つ「WebSphere」を取り上げ、第1回目でWebSphere登場の背景やIBMソフトウェアの中での位置づけを解説し、第2回目で「WebSphere Express」のインストール環境から動作後の基本的な仕組み、そして第3回目ではWebSphere Expressを利用したサーブレット&JSPプログラミングの実例を紹介していく。


WebSphereは長野オリンピックのサイト運営でデビュー

 IBMでは、ハードウェアのサーバやPCを始めソフトウェア、コンサルティング、サービスなどさまざまなプロダクトがある。その中の1つ、IBMソフトウェアブランドには、アプリケーションサーバを中心とした「WebSphere」、リレーショナルデータベースの「DB2」、グループウェアやコラボレーションの「ロータス」(Lotus)、管理・セキュリティの「Tivoli」、そして2003年から加わったモデリングや開発プロセス構築を担う「ラショナル」(Rational)という5つのブランドに分かれている。WebSphereは、これらの中でも最も規模が大きなプロダクトであり、メインフレームに関わる大規模なソフトウェアから、「ホームページビルダー」のようなコンシューマ向けソフトウェアなども、WebSphereブランドとして提供されている。

Image1.gif

IBMにおける他ブランドの関わりとWebSphereブランドの関係


 WebSphereという名前が登場したのは1998年の冬である。そのデビューを飾ったのは、長野オリンピックサイトの運営であり、TVのCMでもIBM協賛として放映されていたため、読者の記憶にも新しいことだろう。

 Javaがサーバサイドで利用され始めたのは1996〜1997年であり、「JavaServlet」が登場したのがきっかけだ。当時のCGIパフォーマンスの悪さに悩んでいたWeb開発者は、「スレッド」、「オブジェクト指向」、「Write once, Run Anywhere」などの特徴により、開発、運営、生産性向上に注目したのだ。その成果は、長野オリンピックサイトの運営で実証されたのだ。

 1998年当時、巷ではHTMLプレーンなデータを扱うHTTPサーバが大半だった。この時期のIBMでは、IBM Internet Connection Server(ICS)、IBM Internet Connection Secure Server(ICSS)などの名称で呼ばれていた製品がある。一時期、Lotus Domino Go Web Server(LDGW)とも表現されていたが、同製品のことだ。これらを利用しCGIベースのソリューションが展開されていた。また、サーブレットの技術はプラグインとして提供されており、サーブレット・エクスプレスという名称で販売されていた時期もある。

VisualAgeもWebSphereに対応

 前述したように、1998年冬にサーブレット技術を中心としたミドルウェアとして発表されたのがWebSphereだ。まず最初にアプリケーションサーバ、次に新たなApacheベースのHTTPサーバー「IBM HTTP Server(IHS)」、そしてHTML、JSPソースコード開発に利用するツール「WebSphere Studio」が発表された。IHSは単独製品ではなく、WebSphereアプリケーションサーバのコンポーネントとして提供されているものだ。単体では提供されない。

 当時、IBMではJavaを中心としたIBM製品全体のブランド化が進められていた。多くの開発案件がJavaベースへと移行してきた時期であり、サーバ(ハードウェア)群も「S/390」、「AS/400」、「RS/6000」、「PC Server」と呼ぶプラットフォームごとの名称から「e-Server」へと統合される。これらもJavaにより、すべてのプラットフォームに同じ品質のソリューションを展開するという計画の基だった。

 開発ツールとしては「VisualAge」シリーズが用意されていた。このVisualAgeもほぼ同時期にWebSphere対応となり、サーブレットやEJB開発機能が搭載される。これにより、アプリケーションサーバ、Studio(スタジオ)、VisualAge for Javaと、3つの製品が出揃ったのだ。

Image2.gif

WebSphereを取り巻く製品の移り変わり


      | 1 2 3 4 | 次のページ

[米持幸寿,ITmedia]