エンタープライズ:インタビュー 2003/06/02 21:41:00 更新


Interview:SAPの欧州製品戦略ヘッド、「プラットフォーム中立でNetWeaverを進める」

SAP TechEdで、同社の新プラットフォームであるNetWeaverに関するセッションを担当するために来日した、マチアス・ヘンドリー氏に同社の製品戦略について聞いた。同氏は現在、ヨーロッパ地域の市場戦略担当のトップを務めている。

 SAPは先日の5月26、27日の2日間にわたって、技術者向けに情報提供を行うカンファレンス「SAP TechEd」を開催した。同社の新プラットフォームであるNetWeaverに関するセッションを担当するために来日した、マチアス・ヘンドリー氏に同社の製品戦略について聞いた。同氏は現在、ヨーロッパ地域の市場戦略担当のトップを務めている。

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ドイツに在住のマチアス・ヘンドリー氏。

ZDNet TechEdで中心になっているSAPの新戦略のNetWeaverは、どのような背景でリリースされたのでしょうか?

ヘンドリー NetWeaverを打ち出したのは、エンタープライズの分野で、市場のダイナミズムが明らかに変動していることが背景にあります。企業が求めるシステム要件の変化は早く、人、情報、プロセスをすばやく統合するというニーズが強まっているのです。NetWeaverは、統合コストの削減と、ビジネスの柔軟性を提供することを大きな目的にしています。

ZDNet XMLやSOAPをベースとするWebサービスを統合技術として採用する上で、J2EEを推進するIBMと、.NETのマイクロソフトとのパートナーシップを強化していると聞いてます。両社との関係はどのようなものでしょうか?

ヘンドリー NetWeaverでは、人、情報、プロセスを統合していきます。具体的には、人についてはポータル、情報については、ビジネスインテリジェンスやデータウェアハウス(DWH)、プロセスはEAIツールやBPMが該当します。

また、マスターデータマネジメント(MDM)によって、異種システム間で異なるIDを振られた製品をデータ統合することも容易になります。

SAPは、J2EEおよびABAPベースのアプリケーションサーバを介することで、OSやデータベース環境を隠蔽することができます。そのため、OS環境は、Windows、UNIX、Linuxなど、どういったものとでも互換性を持ちます。データベースについても、Oracle、SQL Server、DB2など、プラットフォームを選びません。SAPとしては、プラットフォームには中立でありたいと考えています。

同じように、統合技術でも、J2EEベースであるIBMのWebSphere、.NETと相互互換性があり、両者の環境で開発するためのツールもあらゆるレベルで提供しています。.NETの統合製品であるBizTalk Serverとも連携します。

ZDNet Webサービスでは、SOAPなどの標準技術がまだまだ成熟していないため、ミッションクリティカルな基幹システムで利用するには、パフォーマンスやトランザクションなどにまだ改善するべき点があると言われます。

ヘンドリー NetWeaverというよりは、XML全体の話として、技術の改善余地はまだまだあります。こうした標準技術は今後必ずいい方向に向かって進むと考えています。IBMもマイクロソフトもこれからOBPELという規格をサポートしていきます。SAPもeXchange Interface(XI)の次のバージョンからサポートする予定です。

ZDNet NetWeaverにおいて、世界の各地域べつに展開する戦略に違いなどはあるでしょうか?

ヘンドリー 基本的な展開には違いはありません。しかし、日本では、日本語がダブルバイト文字であるために、ユニコードを採用していくことが特殊要件になります。また、日本企業の多くにレガシーシステムが導入されていることに対応して、XIによるアダプタを提供する予定です。

ZDNet SAPの製品を提供する場合に、注力する業種などはあるでしょうか?

ヘンドリー SAPは汎用的なパッケージソフトウェアですが。23の業種別ソリューションも提供しています。各企業が他社との差別化を図るためのビジネスコンテンツも用意しています。ハイテク業界ではロゼッタネット、自動車業界におけるEDIなど、各業種の特色に対応しています。

ZDNet TechEdで紹介された製品の幾つかはJavaベースになっていたり、今後はJavaが基本になるとされていますが、これは、SAPが脱ABAP、Javaフォーカスの方向性にあると考えていいのでしょうか?

ヘンドリー JavaとABAPは同等に扱います。ABAPがJavaに取って代わられるということではありません。導入する顧客が選択する問題なのです。ABAPは100万人以上、Javaには400〜500万人のエンジニアがいます。ABAPで開発したプログラムは100億ドルにもおよびますので、その投資は保護したいと考えています。



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