エンタープライズ:インタビュー 2003/06/04 22:29:00 更新


Interview:Microsoft幹部、Yukonの遅れとSA修正を語る

次世代SQL Serverの出荷予定変更によりSoftware Assurance(SA)契約を結んだ顧客の中に、期待していたアップグレードを受けられないところも出てきそうだ。しかし「SAを修正し価値を高めたため大丈夫」とポール・フレスナー氏は説明する。(IDG)

 Microsoftのサーバプラットフォーム部門上級副社長、ポール・フレスナー氏は6月2日、米ダラスで開催のTechEd 2003の基調講演で、コードネーム「Yukon」として知られるデータベースサーバソフト、SQL Server新版の出荷が2004年の後半にずれ込むことを明らかにした。これによってSQL Serverは、同社が2001年5月に発表し、物議を醸しているSoftware Assuranceアップグレード/メンテナンスプログラムが始動して以後、4年の間隔を置いてアップグレードされる初のメジャーなMicrosoft製品となる。

 Software Assurance(SA)に加入する企業は、2〜3年契約の下、Microsoft製品をアップグレードする権利を得るために、サーバ製品のボリュームライセンス料金の25%を、デスクトップ製品ならば29%を支払っている。これまでは、このアップグレードの権利こそがSA顧客の主な特典だった。しかしMicrosoftは先週、契約のレベルにも応じるが今年9月から顧客向けに、サポートやトレーニングを拡張し、自宅でOfficeを利用できるなどの特典を加えると発表した

 フレスナー氏は2日、Computerworldのインタビューに応じ、SQL Serverの遅れと、このことがSA顧客に与える影響について質問に答えた。

――SQL Serverの出荷が2004年後半にずれ込むとの発表がありましたが、遅延理由は何ですか。

フレスナー 理由の1つは、これがメジャーリリースだという認識です。メジャーリリースの場合、私の経験では1年間のβテストが必要です。βテストと歩調を合わせる必要があります。

――β版はいつ出るのですか。

フレスナー β1は今夏中、6月か7月の予定です。また11月あたりに、より規模の大きいβテストを開始する予定です。私はSQL Serverの開発部隊をプッシュし始めたばかりです。大掛かりなβテストの開始から6カ月で出荷にこぎ着けるというスケジュールには、現実味がありませんでした。プッシュした時、彼らは若干弱腰でした。そこで私は言いました。「では(6月締めのMicrosoftの会計年度ではなく)暦年で話をすることにしようか」。これはプライドの問題と言えるでしょうが、彼らはもっと早く出荷して、私に「あの判断は間違いだった」と思わせてやろうと頑張ることでしょう。ですが私としては(2004年後半出荷というスケジュールの方が)現実味があると考えています。

 もう1つの理由として、Common Language Runtimeの開発が、ツール部隊の手によって進められているという事情があります。ツール部隊はVisual Studio .NET 2003をリリースしたばかりで、われわれの側のコードに合わせてそれを若干変更するのに、ある程度の時間を必要としています。彼らは「Whidbey」のリリースが2004年の多少遅い時期になるかもしれないと考えています。そしてわれわれの作業は、これとかなり緊密に同期しているのです。

――Whidbeyとは、SQLとタイミングを合わせて登場するVisual Studio新版のコードネームですね?

フレスナー Whidbeyは開発中です。ツール部隊はVisual Studio .NET 2003のリリースを終え、Whidbeyの作業に移りました。

――Common Language Runtimeの何がそれほどSQL Serverにとって重要なのですか。

フレスナー プログラマビリティです。これは、われわれが「言語非依存のストアドプロシージャ」と呼ぶものを実現してくれます。今日のストアドプロシージャ言語はT-SQLです。それ一言語のみですが、これが最良の言語というわけではありません。SQL部隊は、必ずしも良い言語開発部隊ではありませんが、開発者向けツールの部隊はこれを得意としています。そしてC#ストアドプロシージャとIDE(統合開発環境)で記述できることは非常に強力な特徴です。

――リリース遅延が発表された製品は、さらにスケジュールが遅れることがあります。SQL Serverが2004年後半より遅れる可能性はありますか。

フレスナー それ以上に長くはかからないでしょう。

――絶対に?

フレスナー 多分。でも私はないと思っています。スケジュールは確定しました。SQL Serverのチームはかなり訓練された部隊です。不測の事態は多くありません。絞り込んで出荷の準備を進めています。β版が遅れているなら私も心配するでしょう。それは危険な兆候です。しかしβ版は遅れていません。計画どおりに進んでいます。私はただ、スタッフに調整と洗練化のための時間がもう少し必要と考えているだけです。

――SQL Serverの現行版は2000年夏に出荷されました。つまり次のリリースまで4年かかることになります。3年間のSA契約を結んだ企業顧客の中には、契約期間中、アップグレードを受けられないところもあるかもしれませんね。

フレスナー ええ。ですが、ちょうど先日、SAに変更を加えてもっと価値を高めると発表しました。当社は調査に調査を重ねました。へまをしたくありませんでしたから。調査の際、「SAに加入するにあたって、アップグレードの保証を望みますか」と質問したのですが、正直な話、このことは全く評価の対象外でした。顧客はほかのことを望んでいたのです。評価されるのは実は――非常に明確な結果が出て、われわれとしてもラッキーだったのですが――サポートだったのです。顧客は、サポートが得られることに当座の価値を見出しています。

 私は「顧客は4年ごとのリリースを望んでいる」とは思いません。(しかし)そのせいで顧客がかんかんになるとも思っていません。私は間隔が4年もあくのはいやです。スタッフが飽き飽きしてしまいます。1つのリリースにそんなに長くかかる状況は、スタッフも望んでいません。私の目標は、4年もかけないことです。常々、間隔は36カ月以上あけないと言ってきましたが、今は、その状況に置かれています。それがつまり、われわれの現状です。

――でも顧客がどう反応するか分かっているので、気分が楽なのですね。

フレスナー SAの価値を変えていなかったら、痛みはもっと大きかったでしょう。

――SAの価値を高める作業にあなたも参加したのですか?

フレスナー もちろんです。全プロセスを通して非常に緊密にね。われわれはこの件に9カ月かけて真剣に取り組みました。

――いずれ出荷予定を遅らせることになるだろうと予想していたからですか。

フレスナー 違います。価値の提案が十分納得できるものでないというコンセンサスがあっただけです。事前に適正評価を十分に行っていなかったのは、われわれにとって恥ずべきことです。これで十分だと思っていました。われわれは「サービスパックに料金を課したことは一度もない」という事実を考えていたのです――Oracleなど、多くの企業の場合はそうではありませんからね。当社はサービスパックを常に無償提供してきました。後になってお金を回収しようとは思いません。どうか公平に見てもらいたいものです。

――SAの価値の提案には、それでも要注意事項がありますね。Openライセンス加入者は、3月に導入されたOpen Valueライセンスの加入者とは異なり、新たな特典の多くを得られません。サーバ製品のサポートのレベルにも、スタンダード版を使っているかエンタープライズ版を使っているかで差があります。

フレスナー そうです。スタンダード版とエンタープライズ版の間には明確に差がありますし、Open Valueにも違いがあります。Open Valueでは2つのことが実施されています。まず、われわれは支払い条件をより好ましいものにしたかったのです。また、サーバの台数でこれを制限する必要がありました。われわれの料金設定はライバルの多くよりもかなり低くなっているため、インストールベースをより大きくして分散しない限りサポートのコストをまかなえません。つまり、SAの価値提案をより良くするために、5サーバの制限を設けなければならなかったのです。

 スタンダード版(のサーバ)ではオンラインサポートを、エンタープライズ版では電話サポートを提供する――私はこれでうまくいくと思っています。へまをしないように重々気を遣っています。当初は、サポートの問い合わせ件数で制限することも考えました――いろいろ試してみたのです。「スタンダード版では電話サポート2件までにします」と言ってみたところ、顧客からは「そんな。無制限にしてよ」といった反応がありました。

――エンタープライズサーバのSA電話サポートがビジネス時間に限定されていることについては? これも当初の計画とは違いますね。

フレスナー そうです。最もミッションクリティカルなアプリケーションを想定しているなら、エンタープライズ版が正しい選択です。そうでないなら、スタンダード版でも恐らく良いでしょう。もし週7日、1日24時間のサポートが必要なら、追加サポート契約を結ぶこともできます。以前ほど状況は悪くないのですよ。サポート商品に手を加えて、少しばかり寛容にしましたから。まあ、今後の状況を見ましょう。私はフェアな内容だと思っています。ご想像のとおり、当社はこれについてもテストをしたのです。

――まとめると、顧客が結んだ契約のタイプによって、サポートにはレベルの違いがある、ということですね。

フレスナー 階層があるのです。価格が安く設定されている場合、われわれにも余裕はありません――2件の電話に対応するだけでも、ローエンド市場では赤字が出てしまうし、ビジネスを続けられません。赤字を出すわけにはいかないのです。

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[Carol Sliwa,IDG News Service]

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