エンタープライズ:ニュース 2003/06/11 19:54:00 更新


RAV Antivirusを取得したMS、セキュリティ担当副社長が答える今後の計画

Microsoftのセキュリティユニット副社長が、ウイルス対策企業のGeCAD買収にともなうRAV Antivirus自体の今後や、この技術を使った「ソリューション」の情報を明らかにする。(IDG)

 Microsoftが6月10日に発表した、ルーマニアのアンチウイルス企業、GeCAD Software Srlからウイルス対策ソフトの技術を取得したというニュースは、この分野に大反響を引き起こすものだった。

 Microsoftは発表文の中で、同社はGeCADの「知的財産と技術資産」を取得する予定だと述べている。買収の詳細は明らかにされていない。

 GeCADへの電話には応答がなかった。

 GeCADは「RAV Antivirus」という製品を開発している。この製品は、ウイルス対策、スパム対策、コンテンツフィルタリング技術を含むセキュリティ製品ファミリーで、サービスプロバイダー、企業、ホームユーザーを対象としている。

 契約条項の一部としてGeCADは、自社の名称とRAV Antivirusという製品名に関する権利を保持する。同社は自社の顧客に対し、RAV Antivirusシグネチャのアップデートを契約義務が続く限り提供し続けると、Microsoftのセキュリティ・ビジネス・ユニットの副社長であるマイク・ナッシュ氏は説明する。

 ただし、GeCADはRAV製品の開発を買収が完了し次第、停止することになっているとナッシュ氏。

 GeCADのアンチウイルス技術スタッフはレドモンドにあるMicrosoftのセキュリティ・ビジネス・ユニットに移るという。

 MicrosoftはGeCADの技術を使い、Microsoftの製品およびサービスに、ウイルス対策の「ソリューション」を提供する。

 GeCADのエンジニアは、Windowsプラットフォームが他のウイルス対策ソフトベンダーとより緊密に統合できるよう、オープンなものに変える手助けをすることになる、とナッシュ氏は説明する。

 Microsoftはこの「ソリューション」の提供時期や価格について明らかにしていないが、GeCADのテクノロジーを使ってWindowsユーザーがウイルスシグネチャを最新のものにし、「進化する脅威」に対抗するために新世代のウイルス対策ツールを開発するという。

 同社はGeCAD買収により、Microsoftとパートナーはウイルスや不正コードによるリスクを軽減できると同社は述べている。

 「われわれの目標は、できる限り(不正コードの)問題に近づき、深く理解し、問題が進化したとしても、われわれのソリューションを進化させ、対応できるようにすることだ」とナッシュ氏は説明する。

 Microsoftがどのようなソリューションを開発するのかについて、ナッシュ氏は詳細を明かさなかったが、MicrosoftはWindowsオペレーティングシステムとアンチウイルス技術は別個に販売していくという。

 他のウイルス対策ベンダーと同様、Microsoftもアンチウイルスシグネチャアップデートの提供はサブスクリプションサービスで行う、と同氏。

 同社は価格とパッケージングについても公表していない。ただし、MicrosoftはRAVテクノロジーが使われているすべての市場に対して製品を提供したいとしている。つまり、サービスプロバイダからデスクトップまでだ、とナッシュ氏。

 「われわれは、顧客がわれわれを必要としている分野すべてに関心がある。(アンチウイルス)エンジンはすべての製品を通じて類似しており、シグネチャもそうだ」と同氏。

 Microsoftの製品とOSはしばしばウイルス作者のターゲットになっており、この数カ月、同社はウイルス対策技術に着目してきた。

 たとえば5月、同社はNetwork AssociatesとTrend Microとの間でVirus Information Allianceを結成し、Microsoft製品に関するウイルス情報をユーザーに提供し始めた。Microsoftはさらに、次期電子メールサーバのExchange 2003向けにウイルススキャン用APIを開発し、組み込む予定だ。

 GeCADの技術がMicrosoftにとって魅力的なのは、ウイルス検出機能が強力なことと、GeCADアンチウイルス開発チームとMicrosoftとの間に強力な「文化的適合」が見られるからだとナッシュ氏は語る。

 必要最低限の機能を備えただけのGeCADのウイルス対策技術は、SymantecのNorton AntivirusやNetwork AssociatesのMcAfeeよりも魅力的だったのではないかと、市場調査会社Gartnerのジョン・ペスカトール氏は推測する。

 「(GeCADの)技術以外はシンプルなもので、Microsoftは販売部隊やチャネルまでは取得したくなかった。これは規模の大きい会社ならばついてまわるものだ」とペスカトール氏。

 既存のウイルス対策ソフトウェアベンダーにとってつらいのは、MicrosoftがWebブラウザのときと同じように市場を独占しようとしたら、それがコンシューマーにとって不利益になることだ、とペスカトール氏は指摘する。

 しかし、MicrosoftはGeCADのテクノロジーを使って自社の多くの製品やサービスをウイルスに耐性を持つものにし、一方でサードパーティベンダーに門戸を開放し、引き続きWindows向けのアンチウイルスシグネチャやルールを開発してもらうことで、評価を上げることもできる。

 Microsoftは6月10日の発表で、サードパーティのウイルス対策企業と引き続き協力していくつもりだと強調した。同社はGeCAD買収を決めた6月9日に、ウイルス対策会社に対してブリーフィングを実施している。

 MicrosoftはWindows OSとMicrosoft製アプリケーションの動作にウイルス対策企業が直接アクセスできるAPIを引き続き開発すると、ナッシュ氏は述べている。

 ナッシュ氏によれば、同社は複数のウイルス対策エンジンが並行して動作可能なアンチウイルスプラットフォームを開発することもコミットしている。

 「Microsoftのソリューションを選ぶか、それともサードパーティのものを選ぶかという選択肢が顧客に与えられなければならないとMicrosoftは考えている」とナッシュ氏は述べた。

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[Paul Roberts,IDG News Service]

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