エンタープライズ:ニュース 2003/06/25 23:59:00 更新


日本SGI、産業用バーチャルリアリティ展で裸眼立体視システムを展示

開催中の「産業用バーチャルリアリティ展」で、日本SGIはNTTデータ三洋システムと共同で製品化した裸眼立体視システムを展示している。

 6月25日から東京ビッグサイトにて開催中の「第11回IVR産業用バーチャルリアリティ展」にSGIは、裸眼立体視システムを出展した。

 同システムは、三洋電機が技術開発した多視点方式メガネなし3Dディスプレイを基に、NTTデータ三洋システムが開発した裸眼立体視システムを使うもの。日本SGIは、その表示用データを作成するInteractive Stereo Libraryを開発、3次元データを裸眼立体視ディスプレイに簡単に表示できるようにした。

 裸眼立体視システムにはいろいろな方式があるが、NTTデータ三洋システムのものは、目の視差を利用し、左右の目に違う画像を見せることで立体感を得るもの。画面上に細かなスリットがあり、これを使うことで、右目と左目に違う画像を見せる。この方式では、表示の1フレームに対して4視点、もしくは7視点のデータを用意する必要がある。実写の場合には、カメラの位置をわずかにずらして4点もしくは7点の画像を撮影、これをスリット状に合成することで立体視用画像を作る。

22型液晶ディスプレイを使った裸眼立体視システム

22型液晶ディスプレイを使った裸眼立体視システム。3840x2400ドットの解像度を持つが、論理的には2つのディスプレイを左右に並べた構成になっていて、Octan2からは2つのディスプレイとして接続する


 コンピュータグラフィックスの場合、3次元データをレンダリングする際に表示用データを作るが、簡単にいえば、従来の1画面に対して視点の違う画像を作成することになるため、通常のレンダリングの4倍、7倍の処理が必要になる。SGIのIntaractive Stereo Libraryは、この表示データを自動的に生成するもので、OpenGLなどの3次元グラフィックスライブラリと併用することができる。また、システムにはビューアーとしてVRMLなどの3次元シーン記述データを立体視するものも含まれるという。

 ただし、生成される画像が従来のコンピュータグラフィックスよりも多くなるため、膨大な計算量が必要。このため、画像をある程度は動かすことはできるものの、リアルタイムに高品位、精細なグラフィックスを表示することはまだ難しい。

 展示されていたシステムでは、SGIの「Octane2 Visual Workstation」(MIPS R14000/600MHzマルチプロセッサ、ハードウェアによる3Dアクセラレーション機能搭載)を使い、SARSウイルスの構造や自動車といった単純な3次元データの表示を行っていた。

 立体視システムは、メガネを使う方法が普及しているが、液晶シャッター方式ではケーブルがあり、扱いが面倒といった問題があった。これに対して裸眼視システムでは、専用ディスプレイとなるものの、めがねは必要なく、通常のディスプレイのように単に見るだけで立体感が得られる。今年1月のCESでも製品が出展されており、今年を裸眼立体視の元年と位置づける関係者もいる。

50型のプラズマディスプレイを使ったシステム

50型のプラズマディスプレイを使ったシステム。こちらはシングルプロセッサのFuelが表示を行う


 実際に試した感じでは、正面から見るとちゃんと立体感が出ていた。ただし、テーマパークにあるような偏光メガネを使った立体視システムと違い、目の前にものが現れるような感じではなく、ガラス窓の向こうに立体があるといった感じのもの。お菓子のおまけにあったような(フレネルレンズ方式の)立体に見えるシールのディスプレイ版といった感じ。もっとも、現時点では、分子構造や設計データの立体視などの科学技術分野での利用が中心であり、目の前に隕石が飛び出してくるような効果は必要ないため、これで十分と思われる。

 日本SGIのブースで展示されていたディスプレイは、50型のプラズマディスプレイと22型の液晶ディスプレイの2種。50型のプラズマディスプレイは、サイズは大きいものの、解像度は1280×768ドットで4視点表示、22型の液晶ディスプレイは、3840×2400ドットと高精細で、7視点表示となっている。50型のものは、公共施設やエンターテインメント、広告といった分野もねらうが、22型のシステムは、科学技術データの立体視などのサイエンスエンジニアリング分野向け。50型ディスプレイシステムでおよそ700万円、22型ディスプレイのものは1400万円程度だという。

 なお、日本SGIブースでは、国立科学博物館で先ごろ行われた「マヤ文明展」で使われた、マヤのコパン遺跡の紹介映像を、解説者ともども、そのままブースで上演。このときは、多くの人だかりとなった。これフルCGを使った遺跡のビデオで、通常はみることができない地下の遺跡やレリーフ、当時の様子などを紹介するもの。

 IVR産業用バーチャルリアリティ展は、6月27日まで開催されている。

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[塩田紳二,ITmedia]