News 2003年6月26日 00:11 AM 更新

SARS解析も可能な「リアルタイム裸眼立体視」や低価格な「モバイルPC用HMD」など――IVR2003

「産業用バーチャルリアリティ展(IVR2003)」が東京ビッグサイトで開催。裸眼で視聴できる立体視画像がマウス操作などでリアルタイムに動かせる新システムや、低価格化が見えてきたモバイルPC向けのHMDなど最新VR技術を紹介しよう。

 東京ビッグサイトで6月25日から「第11回産業用バーチャルリアリティ展(IVR2003)」が開催している。さまざまな産業分野での応用が期待されるバーチャルリアリティ(VR)の最新技術や製品が一堂に集まったVR業界最大の専門展示会を見てきた。


東京ビッグサイトで開催している「第11回産業用バーチャルリアリティ展(IVR2003)」

 日本SGIのブースでは、本日付けで発表された「リアルタイム裸眼立体視システム」が紹介されていた。

 専用メガネなしで飛び出す画像を見ることができる裸眼立体視の技術自体は、三洋電機が2002年9月に発表した多視点立体表示ディスプレイをベースにNTTデータ三洋システムがシステム化したもの。階段状に開口部を持つ「斜めバリア」方式を使って、専用メガネなしで複数人が同時に立体視を楽しめる。

 展示ブースの50インチPDPに映し出されていたデモンストレーションは、4台のカメラで撮影した画像を1枚に合成した立体視用画像を紹介。4枚分の合成画像から斜めバリアを介してユーザーには常に両眼に1枚ずつ計2枚分が見えるようになり、この両眼の視差(パララックス)を利用して立体視を可能にする。画像は4枚分あるため、複数人が並んで見ることができるほか、視聴者が頭を動かしても広い範囲で自然な立体視が行える。


4画像分が同時に表示されているため複数人で同時視聴ができるほか、少々頭を動かしても自然な立体視が楽しめる

 従来はあらかじめ用意した立体視用画像を視聴するだけだったが、今回は発表された新システムでは、この裸眼立体視システムに日本SGIのリアルタイム3D表示ドライバソフトを追加。複数枚画像のレンダリング・合成表示がリアルタイムで可能となり、裸眼で視聴できる立体視画像がマウス操作などでリアルタイムに動かせるようになった。

 ブースでは22インチQUXGA(3840×2400ピクセル)の超高精彩液晶モニタと日本SGIのグラフィックスワークステーション「Octane2」を使って、7視点分の画像をリアルタイムに合成して立体視できるデモが行われていた。リアルタイム立体視の画像サンプルはSARSウイルスの分子構造をモデリングしたもの。「複数の研究者でリアルタイムに分子構造を立体視しながら、新薬の共同研究を行うといった応用も期待できる」(日本SGI担当者)


SARSウイルスの分子モデリング。マウス操作でさまざまな方向から分子構造の立体画像を見ることができる

低価格なモバイルPC向けHMD登場も近い?――島津製作所

 VR技術に欠かせないのがHMD(ヘッドマウントディスプレイ)。その草分け的存在なのが、航空機メンテナンスの現場の要望からHMD開発がスタートした島津製作所だ(島津製作所のHMD取り組みは別記事を参照)。同社のブースでは単眼式HMD「Data Glass 2」シリーズを紹介していた。


島津製作所の単眼式HMD「Data Glass 2」

 Data Glass 2は、米XybernautのウェアラブルPC「MA-V」向けHMDや、日立製作所のWindows CEベースの業務用端末「WIA-100NB」用HMDなど、これまではOEM供給が中心だった。だが今年3月に、D-SUB15ピンのアナログRGBポートに接続可能な汎用タイプのHMD「Data Glass 2/A」を発売。日本IBMのECサイトでのみ販売が行われている。


XybernautのウェアラブルPC向けや日立製作所の業務用端末など、これまではOEM中心だった

 同社ブースで今回紹介されていたのは、汎用タイプData Glass 2/Aの次期モデル。現行モデルはHMD本体への電源供給のためにACアダプタが別途必要だったため、HMDシステム全体(HMD、インタフェースユニット、ケーブル)の重さは300グラム弱となんとか携帯可能ながらも、電源の確保がネックとなって「ノートPCと組み合わせて歩きながらウェアラブルPCをする」といったニーズには対応できなかった。


Data Glass 2/Aの現行モデル。電源供給のためにACアダプタが必要

 開発中の次期モデルでは、徹底した省電力設計を行ってPCのUSBポートからのバスパワーで電源を確保。アナログRGBポートとUSBポートを持つモバイルPCと組み合わせることで、電源フリーのHMD型ウェアラブルPCが可能になるという。「USB経由でHMDの輝度や表示位置を調整できるソフトも開発する予定」(同社)


ノートPCのUSBポートから電源を確保。いつでもどこでもHMDを使ったウェアラブルPCが利用できる

 価格は未定で、発売時期も「年内を目標にしている」(同社)とのことだが、紹介された試作機は最終製品に近いもので、製品化も遠くはなさそうだ。そこで気になるのはやはり価格。IBMショッピングで販売されているData Glass 2/Aの価格は、評価用のサンプルとして扱っていることもあり、29万7000円と割高になっている。個人ユースでは最低でも10万円以下、できれば5万円前後になってもらいたいものだ。

 「評価用サンプルは生産量が少ないため高価になっている。だが、次期モデルは汎用性を高めてより多くのユーザーに使ってもらうことを目指している。今回の展示会では、価格設定や機能面などのユーザー調査を行い、製品作りに反映していく予定。価格面でも、例えば日立製作所へのOEM版のケースでは、生産数が比較的多かったこともあって10万円以下で提供できている。生産量しだいでは、6万〜8万円で販売することも十分可能」(同社)


ブースでは、より小型・軽量化を図った次世代バージョン「Data Glass 3」のモックアップも展示。「最終的には、HMDではなくメガネタイプをめざしたい」(同社)

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[西坂真人, ITmedia]

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