エンタープライズ:ニュース 2003/07/16 13:02:00 更新


日本AMDと米Crayが、Opteronを1万個搭載したスーパーコンピュータについて説明

日本AMDは、米Crayが米国エネルギー省サンディア国立研究所に納入予定の、1万個以上のOpteronを搭載して40TFLOPSの処理能力を発揮するというスーパーコンピュータ「Red Storm」に関する記者説明会を開催した。

 日本AMDは7月15日、米Crayが開発中の、1万個以上のOpteronを搭載した超並列スーパーコンピュータ「Red Storm」に関する記者説明会を開催した。米Crayでこの特別プロジェクト担当副社長のブライアン・コブレンツ氏がRed Stormの詳細について説明した。

米Cray特別プロジェクト担当副社長のブライアン・コブレンツ氏

米Cray特別プロジェクト担当副社長のブライアン・コブレンツ氏


 米国エネルギー省は、仮想核実験や核兵器の性能/安全性維持などのシミュレーションを目的として、「Advanced Simulation and Computing Program」(以前はAccelerated Strategic Computing Initiativeという名称だったので“ASCI Program”と呼ばれる)を進めている。ASCI Programでは、カリフォルニア州のローレンスリバモア国立研究所、ニューメキシコ州のロスアラモス国立研究所とサンディア国立研究所の3カ所に、1996年からASCI Systemsと呼ばれる超並列スーパーコンピュータを設置している。

 Opteronが搭載されるRed Stormは、サンディア国立研究所が9000万ドルの予算をかけてCrayに発注したもので、1996年、1997年に同研究所に設置された「ASCI Red」を置き換えるもの。ASCI Redは9632個のIntel Xeonを使用し、3.2TFLOPS(テラFLOPS)の処理能力を持っている。これに対してRed Stormは1万368個のOpteronを使用して40TFLOPS(1秒間に40兆回の浮動小数点演算)の処理能力を備える予定。現在世界最高速のスーパーコンピュータは、宇宙開発事業団、日本原子力研究所、海洋科学技術センターによって神奈川県に設置されている「地球シミュレータ」(35.86TFLOPS)。

 コブレンツ氏によると、Red Stormの目標・要件として以下のようなものが設定されている。

  • CPUとメモリ、インターコネクト、I/Oの各性能のバランスが取れていること
  • ハードウェア/ソフトウェアが高度に拡張可能(96個から3万個のCPUまで拡張可能。最大で180TFLOPSまで拡張可能)
  • インターコネクト接続された高速・広帯域の3次元メッシュ構造(合計で120Tバイト毎秒の広帯域)
  • 従来のASCI Redのアプリケーションを7倍高速に実行
  • ASCI Redのアプリケーションを50時間連続で稼働できること
  • 機密事項/非機密事項の演算処理が柔軟にパーティショニング可能
  • 高性能のI/Oサブシステム(ファイルシステム帯域で50Gバイト毎秒、外部ネットワーク帯域で25Gバイト毎秒)
  • 合計240Tバイトのディスクストレージ(機密用120Tバイト、非機密用120Tバイト)

 Crayが設計したRed Stormは、108の演算処理キャビネット(1キャビネットあたりOpteronを96個搭載している)、16のサービス/I/Oノードキャビネット、16のスイッチキャビネットの合計140キャビネットで構成され、合計で10TバイトのDDRメモリを搭載する。OSはサービス/I/OノードではLinux、演算処理ノードではLWKを採用している。設置面積は3000平方フィート、冷却用を含めた消費電力は2メガワット以下としている。

Red Stormのシステム構造

Red Stormのシステム構造。中央の赤い部分が演算処理ノードで、必要に応じて機密/非機密向けパーティションの割合変更できる


 Red Stormの演算処理ノード部分の特徴である3次元メッシュでは、1つのOpteronにCrayがRed Storm向けに開発した高速のインターコネクトチップ「SeaStar」を1つずつ取り付け、それが27×16×24の格子状に接続している。Sea Starは7つのポートを備えたチップで、1つのポートはOpteronのHyperTransportと接続(3.5Gバイト毎秒)し、それ以外の6つのポートがほかのSea Starとの接続(2Gバイト毎秒)に使われる。隣あうノード(Sea Star間)とは2マイクロ秒でデータのやりとりが可能、最も離れたノードでも5マイクロ秒で済む。これは世界最高性能のものという。

Red Stormの3次元メッシュ構造

Red Stormの3次元メッシュ構造


 コブレンツ氏はCPUにOpteronを選んだ理由として、広帯域のHyperTransportを採用していること、メモリコントローラをCPUに統合しているためメモリアクセス遅延が少なく、CPUノードの構成にチップ数が少なくて済むこと、32ビット/64ビットのアプリケーションをサポートしているため既存(ASCI Red)のアプリケーションのポーティングが容易であることなどを挙げた。

 Red Stormは現在開発・製造中で、サンディア国立研究所へのシステム構築予定は2004年夏、動作テストの終了予定は2004年末となっている。

 なお、Red Stormに使われているOpteronはモデル148で、現在AMDが発表している100シリーズ製品(140、142、144)よりも高速動作すると思われる。Opteron 140の動作クロックは1.4GHzで、1桁目の数字が2上がると動作クロックも200MHz高速になっているので、Opteron 148の動作クロックは2.2GHzと推定される。

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[佐々木千之,ITmedia]