エンタープライズ:ニュース 2003/07/30 21:36:00 更新


J2EEサーバ勢力図に地殻変動? 日本オラクルがJava開発者を集めて気勢

IBMとBEAが覇権を争うJ2EEサーバ市場だが、ダークホースにも大きな市場機会がありそうだ。企業のデータを保護するデータベースで圧倒的な支持を得ているオラクルが、Oracle9iASをJava開発者に売り込む「Oracle Java Extreme」を開催した。

 日本オラクルは7月30日、千葉・舞浜のホテルでJavaデベロッパーズカンファレンス「Oracle Java Extreme」を開催した。午後から始まり、基調講演と6つのブレークアウトセッションというコンパクトなカンファレンスながら、Java技術者のための実践的な内容とあって、1000人を超えるデベロッパーが参加した。

 Oracleは、Javaを強力に推進するベンダーの1社だ。Javaが正式デビューした翌年(1996年)には早くも、すべての製品でJavaをサポートする戦略を打ち出している。ビジネスアプリケーションであるOracle E-Business SuiteもJavaで書き直すなど、自社の開発環境としてJavaを採用するだけでなく、インターネットコンピューティングの中核を担うJ2EEアプリケーションサーバ、「Oracle9i Application Server」(Oracle9iAS)を企業顧客らに売り込んできた。

 しかし、データベースの巨人といえども、この市場では思うようにその勢力を拡大できていない。IBMとBEA Systemsが激しい首位争いを続けているほか、特に日本市場においては富士通や日立製作所といった国産ベンダーが自前のJ2EEサーバに力を入れているからだ。

 そうした状況に風穴を開けるべく、日本オラクルは5月中旬、「Oracle9iAS Java Edition」を投入した。Oracle9iAS Standard Editionからポータル機能などは省かれているものの、価格を62万5000円に抑えたのが特徴。IBMやBEAシステムズの同等製品と比較して1/3だ。

 Java Editionによる価格破壊を軸とした新しい戦略が奏功したのか、キーマンズネットやアットマーク・アイティが最近実施した調査によれば、導入予定のJ2EEサーバとしてはOracle9iASが、IBMのWebSphereを抑え、トップにランクされているという。

 「地殻変動が起こっている」と話すのは、日本オラクルでマーケティング本部システム製品マーケティンググループでシニアマネジャーを務める西脇資哲氏。IDC Japanが今年6月に発表した2002年の国内アプリケーションサーバソフトウェア市場に関する調査結果では、市場全体が7.8%という伸びだったのに対して、日本オラクルは28%と急成長を遂げている。

 Oracle9iAS Java Editionの投入と同時に、日本オラクルは技術者に対する教育にも力を注いでいる。西脇氏によれば、今年2月からスタートした2日間の無償ハンズオントレーニング「TOPGun」プログラムでは、既に1000人以上のOracle9iAS技術者が育成されたという。今回のOracle Java Extremeもこうした教育施策の一環として開催され、TOPGunプログラムよりもさらに実践的で、文字どおり「Javaを極める」内容を狙っている。

 西脇氏は、基調講演の中で、JDeveloperの次期メジャーリリースについて紹介した。新しいJDeveloperは、6月のJavaOneカンファレンスでその概要が明らかにされ、この秋に登場する予定だ。Webアプリケーションのインタフェースを構築するためのフレームワークであるJSF(JavaServer Faces)を新たにサポートするほか、O-RマッピングツールであるTopLinkが統合され、さらに「Oracle ADF(Application Devlopment Foundation)」が提供される。

 目玉ともいえるOracle ADFは、J2EEアプリケーションやWebサービスを設計・構築するためのフレームワーク。MVC(Model-View-Controller)モデルに則しており、自由度が高いのが特徴だ。デベロッパーに特定の技術や開発スタイルを強制するのではなく、開発スキルやプロジェクトに応じて、最適なテクノロジーと開発スタイルを選ぶことができるという。

 また、西脇氏はDDIポケット、山形県、東芝のほか、この日発表されたジャパンエナジーの導入事例を紹介し、Oracle9i Databaseの顧客企業を中心に浸透しつつあるOracle9iASの実績をアピールした。基調講演後にはパフォーマンスチューニングをテーマにした「実践! J2EEアプリケーションはここまで速くできる」と題されたブレークアウトセッションも行われたが、Oracle9iASが誇るクラスタリングやキャッシュは、Oracle9i Databaseとの組み合わせで最大限にその機能を発揮する。データベース分野で圧倒的な強みを持つ同社だけに、Oracle9iASの食い込む余地はまだまだありそうだ。

 ちなみに、日本オラクルは5月、国内市場シェアを25%まで引き上げる目標を掲げている。

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[浅井英二,ITmedia]