エンタープライズ:ニュース 2003/07/31 08:02:00 更新


「管理したくてもできない」、げに悩ましきはストレージ

米Storage Technologyでマーケットリサーチ担当ディレクターとして業界の動向を調査している臼井洋一氏は、ストレージ容量の伸びと管理効率のギャップを埋めようとしてもなかなか埋まらないのが現状だと指摘する。

 「仮想化にしてもストレージのライフサイクル管理・階層管理にしても、遠隔から利用できるストレージ・ユーティリティサービスにしても、実はストレージテックがずっと前から提唱してきたこと。さまざまな規制のからみで注目されつつあるWORM(Write Once Read Many)タイプのストレージも、以前から提供してきた。言い方を変えれば、うちはいつも(こうしたコンセプトを)市場に出すのが早すぎたのかもしれない」――米Storage Technologyでマーケットリサーチ担当ディレクターを務める臼井洋一氏は、同社とストレージ業界のこれまでの歩みを振り返りながら、苦笑いしながらこのように述べた。

 同氏は草創期から日本ストレージ・テクノロジーにかかわり、販売、マーケティングなどさまざまな業務に携わってきた。今は米国で、ストレージ業界全体の動向に目を配る役割を担っている。25年以上におよぶこれまでの歩みを振り返ると、印象に残るのはストレージ記録密度が飛躍的に高まり、一昔前には考えられなかったような容量を利用できるようになったことという。

 「だが一方で、管理は昔と比べてあまり変わっていない。容量の伸びに比べて管理効率の伸びがぜんぜん違い、ストレージを管理したくでもできない状況になっている」(臼井氏)。この傾向は、ある程度ツールがそろっていた汎用機の世界でよりも、とにかく人海戦術で乗り切り、いまや“あっぷあっぷ”の状態も見られるオープンシステムの分野で、特に顕著という。

臼井氏

「米国ではあらゆるプロセスを標準化することで問題を解決しようとするのに対し、日本の技術者は職人芸的な器用さを持っており、作りこみによってディスク管理の簡素化などを実現している。しかし、これは局所的には最適でも、全体から見るとどうだろうか」と臼井氏


 また、ストレージの容量が増えたことから、ある意味、データの取り扱いが“乱暴”になる傾向も見られるという。つまり、「かつてはストレージが貴重なものだったし、管理対象が少なかったことから時間的なゆとりもあって、データを精査したうえで保存していた。しかし今は、なまじストレージが大量にあることから、何でもかんでも保存してしまい、どれが重要なデータでどれがそうでないのか、どのデータが頻繁に参照されるのかといった識別ができない状態になりつつある」と臼井氏は語った。

 こうした問題の解決を目指し、ストレージテックが提唱しているのが、「情報ライフサイクル管理」(ILM)というコンセプトである。情報が生まれてからアーカイブされるまでの各ステップに応じて、オンラインディスクやニアラインのディスク、テープなどさまざまなストレージデバイスを適材適所で組み合わせることにより、管理を容易にし、全体のコストを削減するという考え方だ。ITバブルが崩壊し、企業のITへの投資意欲が減退傾向にある昨今は、リソースの有効活用という意味からもILMというコンセプトが「ぴたっとハマル」と言う。

 ところで、ストレージ業界の動向を見ると、最近ではこの考え方を打ち出さないアナリストや有力ベンダーはないという感じだ。これに対し、臼井氏はストレージテックならではの強みを次のように説明する。「適材適所の管理を実現する“ILM”だが、メインフレームの世界における“階層管理”という形で、言葉こそ違えど10年以上前からずっと取り組んでいたこと。また、ILMを支える機器やサービスを、上から下までフルラインナップで持っているのはストレージテックだけだろう」(同氏)。

まだまだストレージ記録密度は高まる

 その臼井氏が、これからのストレージ業界の動向を占う上で、仮想化をはじめ、いくつか注目している技術や分野があるという。

 インタフェースにSerial ATAを採用し、耐障害性を高めてポータビリティを持たせるといった製品もその1つだ。「例えばこうしたディスクをブレードサーバやストレーテックのBladeStorのような製品に搭載し、一通り記録が終わったらそのまま引き抜いてオフサイトで保管するといった使い方が考えられる」と言う。パッケージングや長期保管の点で難は残るが、従来のテープを用いたやり方に代わる可能性もあるという。

 また、IBMの「ミリピード」のように、ポリマーレベルの超高密度でデータを記録する技術が登場する一方、磁気テープ側でも記録密度の向上を目指した取り組みが進んでいる。したがって、「一昔前には、もうこれ以上データの記録密度は高まらないといった論調もあった。しかし、まだまだストレージの記録密度は高まっていくだろう」と臼井氏は予測する。米国ではそのような将来を見据え、記録密度と速度の両方を高めた次世代製品の構想が進められているという。

 ただ、一方でハードウェアの世界のコモディティ化が進んでいることも事実。そこでストレージテックとしては、技術投資を進める一方で、グローバルサービスにも力を入れていくと臼井氏は述べている。

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[高橋睦美,ITmedia]