エンタープライズ:ニュース 2003/09/01 22:08:00 更新

Oracle vs. DB2――仁義なき戦い データベース編
第4回 IHVへの取材「HP」──Oracleは自社製品のようなもの

日本HPが販売するDBサーバの95%以上はOracleが搭載されて出荷されるという。つまり、彼らにとってOracleは自社製品のようなものだ。SMB市場に向けたソリューション戦略はこれからだという。

 「プロセッサ、データベース、ストレージ、ネットワーク──Hewlett-Packardにとって、この4つはオセロゲームの四隅のようなもの」と話すのは、日本ヒューレット・パッカードの磯逸夫ソリューションパートナーマーケティング本部長。

 この4つの分野で最も力を誇るビジネスパートナーと組み、アプリケーション開発であれ、ITインフラ整備であれ、HP製品とともにそこに磐石かつ包括的なソリューションをエンドユーザー企業に提示することが、競争熾烈なIT市場で勝ち残っていくために重要な戦略の一つだと磯氏は続けた。そのデータベース分野でのパートナーが日本オラクルというわけだ。同社が販売するDBサーバの95%以上は、Oracleが搭載されて出荷される。

 両社の絆の深さを示す例として、同氏は以下の4つの事実を挙げる。

  1. エンジニアグループ相互の技術交流により、Oracle9i Real Application Clusters(RAC)には、HP(旧ディジタルイクイップメント)のクラスタ技術が利用されている
  2. HPの運用管理ソフトウェア「OpenView」のWebインタフェースからOracleの運用管理ツール Oracle Enterprise Managerを利用できる
  3. 今年7月30日、64ビットのItanium2プロセッサを搭載したHP Integrity SuperdomeサーバとOracleの組み合わせで、82万4164tpmcという最速のベンチマーク結果を記録した
  4. Oracleの一次保守サービスで、日本HPが回答率95%を達成し、日本オラクルのサポートアワードを受賞した

 こうしたことから「日本HPの営業担当者の大多数は、Oracleを自社製品と同じようなものだと考えている」と磯氏。

 では、なぜOracleなのか?

 日本HP オラクルビジネス推進部でアライアンス担当マネジャーを務める藤本康秀氏は次のように話す。

 「データベースの基本機能は、どのベンダーの製品も優劣がなくなりつつある。ではどこで差別化するか? やはりミッションクリティカルな市場だと思う。HPの主要な大手企業顧客らは、データベースを止められない基幹ビジネスにUNIXサーバを利用しており、拡張性、信頼性、高可用性への要求が高い。それにこたえるための解が日本オラクルとのパートナーシップだ」

 しかし、今やデータベースを利用するのは、そうした先進的なエンドユーザー企業ばかりではない。米国でSMB(Small Mediun Business)と呼ばれる中堅企業および小規模事業者でも、IT利用は着実に進んでいる。それでも依然としてビジネスのボリュームゾーンはハイエンドのままなのだろうか。

SMB市場向けのDBソリューションはこれから

 IT市場が動いているのは確かだ、と磯氏は話す。先ごろ、米国本社の経営幹部が来日したそうだが、彼がミーティングで盛んに強調していたのは、「これからはSMB市場」という言葉だった。そこでもやはりオセロゲームの一隅はOracleなのかだろうか。

 磯氏は、「日本のこの市場でのソリューション戦略は、正直いって白紙の状態」と率直に答える。

 「Oracleかも知れないし、SQL Serverかもしれないし、もっとほかのデータベースかもしれない。SMBのニーズを見極めながら、これから一つずつ詰めていくことになる」と磯氏。

 マーケットシェアという指標は、実績を高く評価する日本市場には重要で、OracleとIBMがその数値をめぐって舌戦を繰り広げるのも無理からぬことだと同社ではみている。なぜなら人が企業を判断するのは“心証”だからで、最前線を走っていることを印象づけるためにも、情報を発信し続けることが重要なのだという。HPにとってOracleとの強固なパートナーシップはその一環で、ソリューション戦略にも迷いはない。

 「しかし、そこに胡坐(あぐら)をかいていたら、とたんにフォロワーに転落する厳しい世界。市場も大きく流動している。IBMは学ぶべき点も多い尊敬すべきライバル。常に緊張感を保ちつつ、当社ならではのソリューションビジネスを展開していきたい」(磯氏)

 どうやら近い将来、中堅および小規模事業者の市場で激しい戦いが繰り広げられそうだ。選挙でいえば浮動票に当たるこの領域をだれがどう攻略するかによって、まさにオセロゲームのように劇的に形勢が変わる可能性がある。

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[吉田育代,ITmedia]