エンタープライズ:ニュース 2003/09/10 10:22:00 更新


基調講演:「x86サーバは単なる部品。Sunの価値はシステムにある」とマクニーリーCEO

OracleWorld 2003の基調講演にSunのマクニーリーCEOが登場した。冒頭、OracleのエリソンCEOが同席した5月のローエンドサーバ発表会のビデオを流し、両社の固い絆を印象付けた。

 米国時間9月9日、カリフォルニア州サンフランシスコで開催されているOracleWorld 2003カンファレンスは2日目を迎え、午前の基調講演にSun Microsystemsのスコット・マクニーリーCEOが登場した。

 冒頭には、5月にサンフランシスコで行われたSunのローエンドサーバ、Sun Fire V60xおよび同V65xの発表会のビデオが流された。インテルのXeonプロセッサを搭載した2機種のローエンドサーバは、Solaris x86とRed Hat Linuxがサポートされ、Oracleは長年の提携関係の証として、ラリー・エリソンCEO自らが発表会に同席し、同社製品をSolaris x86に移植することを明らかにしている。シリコンバレーの両雄としてマイクロソフトと戦う二人を映すビデオは、改めて両社の緊密な提携関係を印象付けた。

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恒例のトップテンリストで基調講演を始めたマクニーリーCEO


 とはいえ、IAサーバとLinuxにOracle9i RAC(Real Application Clusters)を組み合わせたローコストで堅牢なインフラ構築を顧客に売り込むOracleと、垂直にスケールアップするSMPサーバを売りたいSunの関係がぎくしゃくしていたのも事実。5月のローエンドサーバ発表は、両社の関係修復に向けたセレモニーのようでもあった。

 この日も開口一番、「Oracleインストールベースの1/3はSunのマシンで稼動している」とマクニーリー氏は話した。また、Sun Fire V60xがたくさん詰め込まれたラックの傍らに立ち、短期間で顧客に納入できるデータベースサーバシステムをOracleと共同開発していることも強調した。

 この日はデモに留まったが、グリッドを一元的に管理するOracle Enterprise Manager 10gと同社のユーティリティーコンピューティング構想に基づく「N1」製品群が連携できるよう開発を進めていることも明かした。

 「われわれは共同でリファレンスアーキテクチャを開発している。顧客らにSunのiForce Centerにやってきてもらい、彼らの声を聞き、既に統合されていて、すぐに納入できるソリューションを見てもらう。顧客のニーズにこたえるリファレンスアーキテクチャがない場合は、Oracleとつくる。これがDellにできるだろうか?」とマクニーリー氏。

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「このラックがWebtoneスイッチになる」とシステムを強調するマクニーリー氏


 彼は、リファレンスアーキテクチャによって短期間でシステムを導入できたVerizonの例を紹介した。Sunの工場で4000のコンポーネントをラックに詰め、きちんとソフトウェアも動作することを確認し、40のコンテナで出荷したという。「期間はわずか2週間と3時間。これこそわれわれの価値」と胸を張った。

 「ラスベガスに行きたいのに、80社のメーカーから部品を買い、自分で飛行機を組み立てていたらどうなる? ソフトウェアもWebサービスのような“ギフトラップソフトウェア”が次の潮流になる」とマクニーリー氏。

 自分ですべてつくるか、IBMに頼むか、リファレンスアーキテクチャを活用するか、サービスプロバイダーを利用するか……。マクニーリー氏は、今のITの世界では、これら4つの選択肢があるとし、「IBM Global Servicesに頼むのではなく、ぜひわれわれに」と聴衆に売り込んだ。

 マクニーリー氏は、「われわれはMicro-"Soft"ではなく、Sun Micro-"Systems"だ」という言葉をしばしば口にする。「x86戦略は?」「Linux戦略は?」とメディアから聞かれることが多くなったせいかもしれないが、最近ではさらによく口にする。彼は、そうした質問には「それらはパーツに過ぎない」とし、Sunがシステムベンダーだということを説明する。

 低価格のIAサーバで攻勢を強めているDellと比較されることも面白くないらしいが、この日の基調講演では、敢えてDellのIAサーバとの比較表を大きくスクリーンに映し出した。

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性能と価格の両面でDellのサーバに勝るSun Fire V60x


 基調講演後のプレスQ&AセッションでDellとの競合やx86戦略に関する質問をたくさん受けたマクニーリー氏は、「自動車メーカーに“クランクシャフト戦略”を尋ねるのかい? Sunはシステムとして統合して販売している。安いピストンリングを売っているわけではない」とやり返す場面もあった。

 振り返れば20年前、Sunが世に問うた1号機「Sun-1」は、ハードウェア的に見れば、ありふれたパーツをかき集めたのに過ぎなかったが、バークレー版UNIXとTCP/IPをビルトインした最初のシステムだった。

 そのSunは来週、同じモスコーニセンターで「SunNetwork Conference」を開催し、統合化されたSunONE製品群を核としたソフトウェア戦略を披露する。

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[浅井英二,ITmedia]