エンタープライズ:インタビュー 2003/09/12 21:11:00 更新


Interview:マクブライド氏、公開書簡について語る

SCOのマクブライドCEOは、9日に公表した、オープンソース/Linuxコミュニティーに宛てた公開書簡について、Computerworldのインタビューの中でその狙いを説明した。(IDG)

 UNIXベンダーのSCO Groupのダール・マクブライドCEO兼社長は9月9日、同社とオープンソース/Linuxコミュニティーとの間で争点となっている問題に関する話し合いを呼びかけた公開書簡を公表した。マクブライド氏は9月10日、Computerworldとのインタビューの中で、書簡を送った理由および同氏の狙いについて説明した。

 SCOはこの数カ月にわたり、同社が所有するUNIX System Vコードの一部をIBMが違法にLinuxプロジェクトに引き渡したと主張するとともに、Linuxカーネルのバージョン2.4のリリース以降にLinuxを使っている企業各社に対して、ライセンス料をSCOに支払う義務があると警告した。SCOの動きについて、訴訟やIBMからの賠償金によって何とか生き残ろうとする最後の悪あがきに過ぎないと批判する向きもある。

 マクブライド氏とのインタビューの内容を以下に掲載する。


――この書簡は、オープンソースコミュニティーへの和解提案と考えていいのですか。

マクブライド そうです。これは和平の申し出です。どうすれば両者が歩み寄ることができるのか知りたいと思ったのです。両側ともそれぞれの立場に固執しています。これは何年にもわたる長期的な争いになりかねません。しかし対立を解消して両者が平和的に共存できる方法があるのなら、われわれはもろ手を上げて賛成するでしょう。

――この書簡がどのような展開につながると考えていますか。

マクブライド Linuxに不正流用された知的財産が尊重されるようになるでしょう。Linuxが影響力を増していること、そしてそれは世界的な現象であり、企業環境における新しいコンピューティング標準になる可能性があることをわれわれは認識しています。われわれが大きな貢献をしているという認識に立って歩み寄れば、Linuxは存続でき、われわれは知的財産を認めさせることができるでしょう。

――なぜ書簡を送ったのですか。

マクブライド 書簡を送ろうと思った最大の動機は、過去数週間にわたってわれわれ(SCOのWebサイト)が受けてきた分散型サービス妨害(DDoS)攻撃です。われわれは攻撃に十分対処できており、防御策も講じました。しかしこの攻撃を受けたことで、大局的な観点で見るといったい何が起きているのだろうか、とわたしは考え始めたのです。IBMとの裁判の日程は2005年4月11日に設定されましたが、これから2年間にわたってこういった状態、つまり攻撃と反撃の応酬が続くのだろうか、と思ったのです。戦場の中にあっても、ときどき立ち止まり、「われわれは今どこにいて、何が起きているのだろう?」と考えなくてはなりません。書簡を送ったのもそのためです。

 われわれが言いたいのは、第1に、Linuxプラットフォームを築く上で知的財産が非常に重要な役割を果たしており、知的財産に対して「何も言うな、何も聞くな」という姿勢で臨むようなやり方は通用しないということです。Linuxをベースとする新しいビジネス環境に進出するとき、まず最初に質問しなくてはなりません。「無償というビジネスモデルはうまくいくのか?」と。無償のインターネット、無償の通信、無償の音楽など、どれをとってみても、どういうわけか長期的にはうまくいかないようです。無償のビジネスモデルが当社を瀕死の状態に追い詰めたのは明らかです。GPL(General Public License)が業界にはびこることになれば、ほかの多くのソフトウェア企業を破滅させることになるでしょう。

――最近までSCOがオープンソースコミュニティーに対してとっていた姿勢と比べると、今回の書簡は態度の軟化を示すものなのでしょうか。

マクブライド ある意味ではその通りです。SCO Forum(8月にラスベガスで開催されたSCOのユーザー/ベンダー会議)のときは、IBMとRed Hatが当社を提訴した直後だったのです。誰でも攻撃されると、防御を固め、反撃しようとするものです。この数週間、戦いは明らかにエスカレートしました。これは本格的な戦いであり、両陣営から多くのミサイルが発射されています。公開書簡を送ったのは、この騒動から少し離れ、より大きな問題に目を向けようと考えたからです。つまり、和平を申し出たわけです。誰もがそれを望んでいるかどうかは分かりませんが。

――どのような反応を期待していますか。

マクブライド われわれが望んでいるのは単純なことです。Linuxをベースとするビジネスモデルにおいて、自社の知的財産がLinuxで使用されている当社のような企業が補償を得られるようにしてもらいたいということです。2番目に、Linuxの開発プロセスでは、Linuxに含まれるコードが尊重され、知的財産が保護されるようにしてもらいたいということです。

――書簡では、SCOのコードをLinuxに提供した企業としてSilicon Graphics(SGI)を名指ししていますね。今になってSGIの名前を持ち出したのはなぜですか。この件についてはどう対処するつもりですか。

マクブライド われわれは当初から、IBM以外の企業に訴訟を起こすつもりはないと言ってきました。この問題を調査する中で、訴訟を起こしてもおかしくないケースがたくさん出てきました。今回われわれが発見した問題、つまりLinuxに含まれている当社のコードの多くがSGIから出たものであるというのもその1つです。この問題については彼らと交渉を行っており、問題の解決に向けて努力しています。

 なぜ今ごろになって、この問題を持ち出したのかと言いますと、SCO Forumにおいて、われわれがこれまで示してきたコードの一部がSGIから出てきたものだという指摘があったからです。その後、本格的な調査を行いました。そして「これは問題であり、われわれは少なくともその幾つかを解決しようとしている」という声明を発表する必要があると思ったのです。この書簡は、「もっと多くの企業を訴えるつもりだ」という意志表示を狙ったものではありません。問題解決への方向に向けた努力を呼びかけるための書簡なのです。

――SCOが法的手段に訴えたことで、オープンソースコミュニティーから非難を受けていますが、これを煩わしく思いますか。

マクブライド 煩わしいとも煩わしくないとも言えません。われわれは今、嵐の中心にいるのです。このケースでは、明らかにSCO支持勢力も存在します。彼らはサイレントマジョリティ(無口なき多数派)だとわたしは考えています。その反対側には決して無口でない人々がいます。彼らはこの上なく騒々しい敵対者です。

 例えば、プロバスケットボールのスター選手が試合で3ポイントシュートを何本も外した後、帰宅途中の車の中でラジオのスポーツニュースを聞いて落ち込むようなものです。Slashdot(訳注:コンピュータ好きの人々が意見や情報を交換するサイト)を読めば、そんな気持ちになります。決して楽しいものではありません。

 彼らの非難は、この問題の大きさを反映しているとも言えます。このケースでは、われわれの方がモラル的に優位にあると確信しています。その確信がわれわれの行動を支えているのです。書簡が公表された後、賛否両論の反応が返ってきました。

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▼日本SCOのサイトに掲載された、オープンソース・コミュニティへの公開レター(日本語訳)

[Todd R. Weiss,IDG News Service]

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