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2004/02/09 13:41:00 更新


富士通、金融系基幹システムをオープン環境で提供する新体系を発表

富士通は、金融機関において、顧客データベースなど現状のシステム資産を継承した上で、次のシステムへ移行するための新しい取り組みを発表した。

 富士通は2月9日、都内で記者発表会を行い、金融機関において、顧客データベースなど現状のシステム資産を継承した上で、次のシステムへ移行するための新しい取り組みを発表した。銀行、証券、保険、クレジットなど、業態間の垣根がなくなりつつある金融業界全体を対象とするが、今回の発表は主に地方銀行を含め銀行をターゲットにしたもの。

 具体的には、社内外との効率的なシステム連携を実現する「次世代ハブソリューション」、業務システムを構築するための期間を短縮する「金融ビジネスアプリケーションソリューション」、現行資産を有効に活用した上で、安全かつ低コストなシステム移行を実現する「トランスマイグレーションソリューション」の3つが発表された。これとシステム構築フレームワークである「B2.Sframework」と併せ、総合アプリケーション開発体系「SDAS」が構成される。

 そして、メインフレーム、Linux、UNIX、WindowsといったOS、その上のミドルウェアであるInterstageで構成される同社のプラットフォーム戦略「TRIOLE」によって、SDASを支える形が体系の枠組みとなる。

 新サービスの1つである次世代ハブソリューションは、XML、SOAP、J2EEなど各標準技術に対応する。これにより、異なる金融機関が認証や企業振分、課金といった共通アプリケーションを利用できることになり、金融機関は顧客満足度の高い新サービスを短期間、低コストで提供できるという。

 経営執行役の稲垣博正氏は、「銀行の不良債権問題がほぼ解決しつつあり、今後はシステムへ投資の増加を見込んでいる」と話す。業態間の垣根の減少に加え、銀行には今後、債権の流動化やプライベートバンキングなど、新しいサービスの提供が求められる。

 そのため、金融ビジネスは今後、企業同士が垂直、水平統合することで、相互に連携し合うモデルにシフトする流れになるというのが同社の考えだ。したがって、競争力を維持するためには、ITを活用することによる異業種や他企業との容易なシステム連携、開発期間の短縮、TCOの削減などがテーマになるとしている。

メインフレームとオープンの融合

 オープン環境に移行するメリットは、将来にわたったシステムの拡張性の高さや、コスト効率性、外部環境との接続の容易さなどさまざまある。だが、実際には、LinuxやJ2EEなどのオープン環境やWindows系サーバの性能は、メインフレームと比較するとまだまだ見劣りするというのが一般的な見方だ。同社は、「メインフレーマー」として蓄積した技術力をオープンシステムでも生かしながら、適材適所の形で両者を共存させる。

 金融ソリューション本部長の小澤基之氏によると、発表されたトランスマイグレーションソリューションでは、COBOLで開発された現行業務のアプリケーション資産から、構造化されたコンポーネント部品を自動生成するリバースエンジニアリングサービスを提供するという。

 さらに、メインフレームのプログラムをLinux環境で動かすための「オープンCOBOL」も強化する。「もちろん、世の中全体の流れであるJ2EEへの対応にも取り組む」とも話した。

 金融市場において25%のシェアを持つという同社は、これを30%に引き上げたいとする。長年メインフレームでビジネスを行ったきた同社がオープンに注力することは、「自分の首を締めることにはならないのか」との質問が記者から上がった。確かに、メインフレーム自体の売り上げは落ちるかもしれないが、稲垣氏は「むしろ、アウトソースや金融業務周辺でサービスを提供することで、新たな需要を掘り起こすことを意図している」と話した。

 次世代ハブソリューションの予定提供開始時期は2004年第1四半期、金融ビジネスアプリケーションソリューションが2005年第1四半期、トランスマイグレーションソリューションは2004年4月となっている。目標受注額は、2006年末までに600億円。

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[怒賀新也,ITmedia]

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