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2004/03/29 17:40 更新


NECと製造業向けERPのIFS、中国・アジア市場を睨み協業を強化

NECとERPベンダー5位のIFSは、中国・アジアにおけるソリューション事業の拡大と展開を加速すべく協業強化を発表した。NECは約15億円の出資を行うほか、IFSのR&D拠点や保守拠点に要員も派遣する。

 NECは3月29日、スウェーデンに本社を置くERPベンダー、Industrial and Financial Systems(IFS)との協業関係を強化すると発表した。4月1日付けでIFSに対して1億スウェーデンクローネ(約15億円)の出資を行い、10.7%の議決権を有する予定。両社は1997年から協業関係にあるが、中国・アジアにおけるソリューション事業の拡大と展開を加速するのが狙いだ。

 都内のスウェーデン大使館で行われた共同記者会見に臨んだNECの金杉明信社長は、「IFSとはトップからスタッフに至るまで相互理解が進んでいる」とし、協業強化の背景に信頼関係があることを強調した。

 1983年創業のIFSは、売上高が2億9000万ドルで、業界5位にランクされる。1997年にはフルオブジェクト化を完了した「IFS Applications」をリリースしたのを機にIFSジャパンを設立し、NECとの業務提携にも踏み切った。自動車、ハイテク、産業用機械、プロセス産業、サービス、エネルギー/テレコム、航空/鉄道/防衛などの製造業に強く、また、コンポーネントアーキテクチャを採用しているため、柔軟な導入が可能なのが特徴。

 これまでNECとIFSは、日本市場に固有の製番機能(製品を受注したときに番号を付け、部品の発注、生産などを管理する機能)を共同開発したり、MRP(資材所要計画)のための高速エンジンをNECが提供するなど協業を重ねている。昨年からはアジア地域での製造業向けソリューションも共同で開発し、提供を開始していた。

 NECでは、自社製品をはじめ、OracleやSAPのビジネスアプリケーションも扱っている。金杉氏は、「システムインテグレーターとしては、顧客の選択しだい」としながらも、IFSは顧客、特に海外の顧客からの評価が高い点を特に指摘した。NECが導入したIFSは、国内31社58サイト、海外17社18サイトに上る。

中国・アジアの日系企業がターゲット

 NECは、中国・アジアにおけるソリューション事業を共同展開するうえで、開発から販売、保守サポートまで一貫した協業関係を確立するという。

 先ず開発面では、日本企業や海外進出した日系企業のニーズを迅速に製品化すべく、IFSのR&D本社やスリランカR&Dセンターに要員を派遣する。R&D本社では製品計画段階から開発に参画し、日本の製造業向け、特にグローバルに事業展開する自動車部品製造業向けの機能強化を盛り込んでいくという。

 中国・アジア地域において事業機会をさらに拡大すべく、両社は2004年度上半期を目処に「IFS事業推進チーム」も編成する。コンサルティングや導入支援を共同で展開するのが狙いだ。

 また、導入後の保守サポート事業に関する協業も強化する。NECはIFSのグローバル保守サポートセンターを活用し、IFS Applications導入顧客に対して24時間保守サポートを開始する。特に中国・アジアに進出した日系企業向けのサポートを強化すべく、NECではIFSの上海サポートセンターに要員を派遣する予定。

 企業がITへの支出を見直す中、ERP市場の成長は鈍化しているが、共同記者会見に出席したIFSの共同創業者で、現在も副会長を務めるベント・ニルソン氏は、「日米欧企業の新興市場進出が加速しており、グローバルなサプライチェーンの管理を迫られている。そのためのソフトウェアの役割は重要であり、まだ緒についたばかりだ」と話した。

 SAPやOracle、あるいは国産勢(例えば、富士通のGLOVIA)がひしめくERP市場だが、ニルソン氏は、「コンポーネントアーキテクチャを採用しており、競合とはストラクチャが違う。世界は激しく変化しており、ビジネスアプリケーションには常に修正が求められる。それを低コストでしかも簡単に行える」とIFSのバリューを強調した。

 なお、IFSでは今週、米フロリダ州オーランドで「IFS World Conference 2004」を開催する。

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関連リンク
▼IFSジャパン

[浅井英二,ITmedia]

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