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2004/03/30 22:20 更新

日本はプログラミング後進国? マイクロソフト、学生のための特別イベントを開催 (1/2)
「コンピュータを介在して、人と人がつながる世界を」とマイクロソフトの古川氏はこう語り、将来を担う学生に対して、最大限の協力を行っていく方向性を明確にした。
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3月30日、マイクロソフトは学生のための特別イベント「The Student Day」を開催した。米マイクロソフトのバイスプレジデントであり、マイクロソフトの最高技術責任者でもある古川 享氏が昨日の早稲田大学理工学部に引き続いて特別講演を行った。講演の題目は「コンピュータの近未来」だ。
キャンバスの白い部分に書き込んでいく気概を
同氏は講演の中で、自身のこれまでを振り返った。英語の成績はいつも最下位付近で、大学にも3浪したという経験を語り、そうした自分が存在価値を見出すには誰も手がけていないことをやるべきだという結論に達した。その後同氏は米国に留学し、ネットワークやコンピュータの可能性に気づいたという。日本に帰国した後の古川氏については語るまでもないだろう。
1975年にマイクロソフトが創業した当時のビジョンは、「全ての机に、家庭にコンピュータを」であった。それが時を重ね、スタンドアローンから、クライアント・サーバー型になり、全てがネットワークでつながる時代になってきている。「次の時代は、シームレス・コンピューティング」と古川氏が話すとおり、人と人、機械と機械、人と機械が相互に繋がり、その中ではデジタル化された情報が行き交う時代はそこまで来ている。ユビキタス時代というと、どこでもネットワークに繋がるという認識があるかもしれないが、そうではなくて、さまざまなものとさまざまな形で繋がるということがポイントなのだ。これは『共働共生』の世界であるといえる。
また、同氏は自らの経験から、学生に独自性を持ってほしいという。
「マイクロソフトが創業した当時は、OSというものすらあいまいな概念であり、いわば『真っ白いキャンバス』だった。だから自由な発想でそこに絵を書き連ねていった。皆さんが、マイクロソフトに魅力を感じているとすれば、それは既にキャンバスに塗られた色をみてそう思っているのだと思う。マイクロソフトに限らず、すでに塗られた色に憧れて入社するのでは面白くない。キャンバスの白いスペースを見つけ、そこに自分で色を塗る気概、を持ってほしい」
生身の人間に会うということ
講演にはスペシャルゲストとして、ヴィジュアリストの手塚 眞氏が登場した。同氏は故・手塚治虫氏の長男であり、ヴィジュアリストという肩書きで、映像製作をはじめ、小説・CDなどジャンルを超えた表現活動を続けている。
古川氏から未来の可能性についてコメントを求められると、次のような世界をイメージできるという。
「一つの部屋があります。そこにはあなたのほかに、あなたの友人、先生など多くの人がいます。そこであなたは周りの人間と話すこともできれば、共同作業を行うこともできる。しかし、実際のところ、そこにはあなた一人しかおらず、周りはみんな3D映像のようなものなのです。こんな世界がくるのは間違いない」
このことが何を意味するか。同氏はこう続ける
「そうした時代が来たときに、生身の人間に会うということの贅沢さが初めて分かるのではないだろうか。今日の講演のように、わざわざ人に会うために行動するという贅沢は、ネットやデジタルからは得難い貴重なものだと思う」
古川氏は、「小説や映画で泣いたことはあっても、ネット上で心の琴線に触れるような思いをしたという体験をしたことがある人は私も含めてほとんどいないのではないだろうか。コンピュータはあくまで機械、道具であることをよく理解し、人間がコンピュータの存在を意識せずに生活できるような時代がいい」と話す。続けて、「舞台は提供するが、何かを実現するのはマイクロソフトではない。みなさん自身だ。ナンバーワンでもオンリーワンでもいい。皆さんの今後に期待する」と話し、壇上を優秀な学生たちに譲った。
[西尾泰三,ITmedia]
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