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2004/03/30 22:20 更新


日本はプログラミング後進国? マイクロソフト、学生のための特別イベントを開催 (2/2)


The Imagine Cupとは?

 The Student Dayの中心的なイベントとなったのが、「The Imagine Cup」である。The Imagine Cupは、マイクロソフトが世界規模で開催する、学生を対象とした技術コンテスト。2004年度の世界大会は7月にブラジルで開催予定で、世界35か国から学生たちが参加してしのぎを削る。

 The Imagine Cupでは、プログラミングを競うソフトウェア デザイン部門、およびプログラミング以外の情報テクノロジーを学習する学生が、個人やチームで参加可能なショートフィルム、レンダリング、アルゴリズムの4部門が用意されており、この日はソフトウェア デザイン部門の日本国内予選大会決勝が行われた。同部門は、「私たちの生活を豊かにするソフトウェア」をテーマに次の3要素全てを利用したアプリケーションを対象としている。

  • モバイルデバイス・モバイルクライアント
  • 学習機能を持つコンポーネント
  • .Net Frameworkを利用したWebサービス

 なお、ソフトウェア デザイン部門の評価ポイントについては、マイクロソフトのサイトが詳しい。

 The Imagine Cupの日本予選大会決勝にエントリーされたのは、東京大学チーム、関西大学大学院/大阪大学大学院共同チーム、早稲田大学大学院チームの3チーム。それぞれの発表したソフトは次のとおりだ。

  • 東京大学チーム:Food Advisor
  • 関西大学大学院/大阪大学大学院共同チーム:モバイル3Dフレームワーク「3D-Raven」
  • 早稲田大学大学院チーム:「Rtf Webサービス」と「ぐるめっこ」

 勝負の行方は、10分間のプレゼンテーションの内容を元に、審査員と会場にきたユーザーの投票によって決定された。余談だが、ユーザー投票は、「これぞ」と思うチームがMCによってコールされたとき、手元の黄色い紙を頭上にかざしてもらい、その数を数えるというもの。それを数えるのは、麻布大学、野鳥研究会の面々という、一風変わった集計方法であった。

The Imagine Cupは誰の手に?

 この結果、日本代表に選出されたのは、関西大学大学院/大阪大学大学院共同チーム。2位が早稲田大学大学院チーム、3位が東京大学チーム。それぞれのチームには古川氏から賞金などが贈られた。

優勝チーム

日本代表に選出された関西大学大学院/大阪大学大学院共同チーム

 終了後、会場に来ていた大学生に話を聞いたところ、「関西大学大学院/大阪大学大学院共同チームはプレゼンテーションがよくまとまっていたことと、比較的UIが視覚に訴えやすいものだったことがポイントだったと思う」と話す。

 筆者がみたところ、関西大学大学院/大阪大学大学院共同チームの資料はよくまとまっていたし、スピーカーの中山浩太郎氏は、同志社女子大学の非常勤講師も勤めるなど、人前で話すことに慣れている様子であった。同チームが発表したソフトの概要をまとめるなら、スペック的に非力なPDA上で3D描画を行うためのプログラムで、3D描画をサーバサイドで行い、その結果をクライアントサイドであるPDAに表示させるもの。高速通信を可能にするプロトコル「IDTP」を用い、無線でも毎秒4フレーム、有線であれば毎秒20フレームを実現しているという。

3D-Raven

「3D-Raven」のシステム概要(クリックで拡大します)

 すでに医療分野における3Dカルテとしての事例も持ち、今後は建築関係やゲーム分野への応用も考えているという。

 今回惜しくも優勝を逃した他の2チームも、現代人を「食」という観点から考えることで生活を豊かにしようとするソフトであった。Food Advisorは、ある食材に対して似たような評価を行うユーザーをクラスタ化し、それに栄養学的な観点を加え、そのユーザーに最適と思われる食べ物を表示するもの。「Rtf Webサービス」と「ぐるめっこ」は、店情報管理コンポーネントと店情報活用コンポーネントから成り、そこから形成されるDBを基に人々が満足できる飲食店にめぐり合うための情報(Rtfは『Road to Food』の略)を提供するWebサービス。両者とも、似たようなソフトであり、「食」に限らず、広範囲に応用可能なものであるように思えた。

3チーム

発表後の記念撮影(クリックで拡大します)

日本はプログラミング後進国?

 表彰式のあと、マイクロソフト、デベロッパーマーケティング本部 デベロッパー製品部マネージャの田中達彦氏がクロージングセッションとして「可能性を実現するために」と題した講演を行った。スペシャルゲストには、SoftEther開発者でおなじみの登大遊氏が登場し、SoftEther開発の経緯や、自身とパソコンの関わりなどについて語った。

登氏

「ソフトイーサ株式会社」の設立を発表した登氏

 この中で、すでに速報で流したとおり、4月1日付けで、「ソフトイーサ株式会社」を設立、SoftEtherに留まらないソフト開発を行うことを発表した。これにつながると思われた動きは以前から同氏のBlogサイトにて垣間見えていたので、ようやく正式発表になったといえる。

 田中氏に今後の抱負を聞かれると、「マイクロソフトも最初は数人の小さなベンチャー企業。今はマイクロソフトの歴史を扱った書籍を読み漁るなどして、大企業となった理由を考えながら、自分の会社もそれを目指したい」(登氏)と話し、精力的な今後を感じさせた。

 しかし、登氏のような人物は日本において稀有な存在なのかもしれない。というのは、先のアルゴリズム部門の応募状況を見ると、日本人が200位にすら入ることがない現状だ。単純な計算と独創性やコーディング能力はリンクしないかもしれないが、やや寂しいことではある。

現状

アルゴリズム部門の応募状況。日本人は200位にもランクインしていない

 田中氏はこうした現状に対して、水道の蛇口をひねるとき、それが爆発するかもと不安がる人がいないように、マイクロソフトは安心できるコンピューティング環境を今後も提供していきたいとし、学生は内包しているエネルギーを思い切りぶつけていってほしいと話す。そうした方針は行動に現われている。例えば今回の「The Student Day」の来場者には、無料で「Visual Studio .Net 2003」がプレゼントされた。

「私の夢は、数年後に、日本人がImagine Cupで優勝すること。もう一つは、5年後に、The Student Dayを東京ドームで開催することだ。そのために私は努力していきたい」(田中氏)

 田中氏が語った、偽らざる言葉に、マイクロソフトと学生の間に確かな絆ができつつあるのを感じたのは記者だけであろうか。


 ちなみに、アルゴリズム部門のサンプル問題は次のようなもの。同部門はオンラインで参加できるので、以下の問題を見て、「いける!」と感じられる学生は、ぜひ一度参加してみてはいかがだろう。ちなみに、アルゴリズム部門は4月1日まで、何度でも挑戦できる。

問題:

箱が2つあります。1つ目の箱には立方体が8つと球体が6つ入っていて、2つ目の箱には立方体が6つと球体が12個入っています。1つ目の箱からランダムに物体を1つ選んで2つ目の箱に移します。2つ目の箱から選ばれた物体が立方体である確率はいくらになりますか?

a)7/19 b)46/133 c)67/133 d)156/133 e)1/2

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