レビュー
2004/04/01 09:15 更新


レビュー:UMLの付加価値で開発効率を高めた「JBuilder X Developer/Together Edition for JBuilder X」 (2/3)


データモデラーによるデータベースとの連携実現

 Webアプリケーションでデータベースを使うことは、今や一般的だといえる。そこで、JBuilder X Developerには、データモデラーという機能が装備されている(Fig.4)。

 データモデラーは、データベースにアクセスするためのBorlandのクラスライブラリ(com.borland.dx.datasetパッケージ)のDataModuleクラスから継承したクラスを作成するデザイナだ。データモデラーを使うと、GUI上で実行したいSQLクエリを設定し、指定したデータベースの値を読み書きするためのクラスを自動生成できる。

 JBuilder X Developerには、同社のJDataSotreサーバーと呼ぶデータベース製品が付属し、これが標準となっているものの、データモデラーではJDBCドライバ経由の任意のデータベースに接続できる。よって、PostgreSQLやMySQLなどオープンソースのデータベースを利用するWebアプリケーションでも、データモデラー機能を利用できるのだ。

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Fig.4■データモデラー。データモデラーでは、DataModuleクラスから継承したクラスを自動生成できる


 データモデラーは、ボーランドのクラスライブラリを利用するため、汎用性という面では劣るのも事実だ。しかし、このクラスライブラリをうまく活用すれば、JDBCを直接操作するよりもずっと簡単な手順でデータベースアプリケーションを構築できるはずだ。

Antとの協調も実現するビルドとデバッグ機能

 さて、Webアプリケーションにおいて、面倒な作業といえるのがビルドとデバッグだが、JBuilder X Developerでは、この作業の手間が軽減できる。

 まずビルドに関してだが、統合環境なので、当然、メニューから一発でビルドできる。この時、warアーカイブの自動生成も可能だ。またJBuilder X Developerにおけるビルドの設定をAntの設定ファイルをエクスポートすることも可能なため、開発後にAntを利用してビルドをしたいという場面でも問題ない。そして逆に、Antの設定ファイルからのインポートもできるため、既存のプロジェクトや、Antを前提としたオープンソースのコードなどをJBuilder X Developerでビルドすることも可能だ。

 またJBuilder X Developerでは、デバッグも容易だ。JBuilder X Developerをインストールすると、Tomcatも同時にインストールされ、ビルド後、開発環境のコンピュータ上で、即座に実行可能だ。もちろん、デバッグ機能も充実し、ソースコードの任意の位置でブレークポイントを指定したソースレベルでのデバッグもできる(Fig.5)。

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Fig.5■Webアプリケーションのデバッグ。ブレークポイントを指定して、ソースコードレベルでのデバッグができる。もちろん、変数の内容を調べる監視式も利用でき、Webアプリケーションのデバッグ作業が容易だ


 つまりJBuilder X Developerを使えば、あるアプリケーションが開発するまで、実際のWebアプリケーションサーバーに配備することなく、開発環境上でデバッグ作業が可能なことを意味する。そして実際に配備するには、warアーカイブを作成して、Webアプリケーションサーバに配置すればよいという手順になるのだ。従来のWebアプリケーション開発工程のように、ビルドした後にWebアプリケーションサーバでその都度動作テストをする、という手間が省ける。この効果は大きい。

TogetherによるUMLを使った設計やコーディングの支援

 ここまでは、JBuilder X Developerの単体の機能だが、さらにTogether Edition for JBuilder Xプラグインを組み合わせれば、UMLモデリングを併用した開発が可能となる。

 大規模なWebアプリケーションならば、設計してからコーディングという流れを採るが、実際の開発現場では開発者が頭の中で設計を考えながらすぐにコーディング作業へ移るというケースも多い。つまり、目先の効率重視であり明確に設計とコーディングが分かれていないということだ。

 Javaでは、すべてをクラスとして構築するので、コーディングに当たっては、クラスの全体の関係を図示できると頭の中で整理しやすい。そのような際に便利なのが、Together Edition for JBuilder XのUMLモデリング機能だ。

 UMLモデリング機能を使えば、クラスをクラス図として表示できる。継承やインタフェースについても正しくモデリングされる。Together Edition for JBuilder XのUMLモデリング機能は、ソースファイルと完全に同期しているので、「開発者が明示的にUMLモデリングによってクラス図を描かなくてもクラス図ができてしまう」という点が大きなポイントだ。

 従来、UMLを使った開発というと、「設計段階でクラス図を描いて整理し、それを元にコーディングする」という順序で明示的な設計段階でクラスの関連を整理しておく必要があった。

 しかしTogether Edition for JBuilder Xでは、コードからクラス図が自動生成されるので、設計とコーディングが明白に分かれていない開発においてもUMLを利用できるという点でメリットが高い。特にWebアプリケーションの場合には、開発工程で設計変更を余儀なくされる場面もあり、「設計してからコーディング」という開発手順が馴染まない場面も多い。そのような開発現場においても、Together Edition for JBuilder XのUMLモデリング機能が使える。

 また、LiveSourceテクノロジーと呼ぶ機能によりクラス図とソースコードは完全に同期するため、クラス図を変更することでコードも即変更される。

 Javaの場合には、プロパティはgetter/setterのメソッドで作り込むわけだが、クラス図で新たなプロパティを追加すると、必要なgetter/setterも自動生成される。そしてプロパティの型を変更すれば、getter/setterの型も更新される。そのため、値を多数保持するクラスを作成する場合には、クラス図から設定することでコーディングの手間を省けるし、また、後にプロパティの型を変更したいという場面でも、コードエディタによる検索や置換を繰り返さず、クラス図上で変更できるというメリットがある(Fig.6)。

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Fig.6■クラス図とコードの同期。クラス図でプロパティを設定すれば、コードも書き換わる(逆も同様)。画面左下の「インスペクタ」部では、型の設定ができるほか、getter/setterを用意するか否かなども設定できる。インスペクタの設定を変更しても、もちろんコードが書き換わる


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[大澤文孝,ITmedia]

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