レビュー
2004/04/01 09:15 更新


レビュー:UMLの付加価値で開発効率を高めた「JBuilder X Developer/Together Edition for JBuilder X」 (3/3)


設計に用いるUMLの真価が変わった

 もちろん、設計しながら開発するというスタイルがすべてではない。大規模な案件では、整然たる設計を元にコーディングをするという開発スタイルが主流だろう。また近年では、設計段階でクライアント(開発依頼者)に、UMLのユースケース図を使って流れを解説するという場面もあるだろう。

 Together Edition for JBuilder Xによって実現されるスタイルは、スタイルを強いることのない多面性を持った開発形態でもあるのだ。

 Together Edition for JBuilder Xは、UML 1.4に完全準拠しており、クラス図以外のすべての図にも対応している。Together Edition for JBuilder Xをコーディングとの同期とは関係なく、単なるUMLエディタとして活用することも可能だ(Fig.7)。

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Fig.7■ユースケース図。ユースケース図やシーケンス図など、多彩なUMLモデルを描画でき、UMLエディタとしても利用できる


 Webアプリケーションは、どのWebアプリケーションでも基本的なロジックが同じになるということも多い。そのため幾つかWebアプリケーションを構築すると、その後の利用のために既存のコードをパターン化したい場面も出てくる。そこでTogether Edition for JBuilder Xには、コードの再利用を支援する機能も搭載されている。

デザインパターンの再利用

 コードの再利用といえば、クラスライブラリ化も考えられるが、近年では、デザインパターンを利用する例も増えている。デザインパターンは、いわば「うまくコーディングできるノウハウのテンプレート」であり、デザインパターンを使うことによって、より安全確実に目的のプログラムを作り上げることができるからだ。

 Together Edition for JBuilder Xでは、もはや業界標準ともなっているGoF(Gang of Four)による「オブジェクト指向における再利用のためのデザインパターン」をはじめとする各種デザインパターンをテンプレートとして搭載しており、デザインパターンを選ぶだけで、クラスを自動生成できる(Fig.8)。

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Fig.8■デザインパターンによるクラスの生成。デザインパターンを使うことで、効率よく、関連性のあるクラスの自動生成ができる。既存のものを使うだけでなく、新たに登録することも可能だ


 デザインパターンはUMLと連携しており、UMLの図として作成される。つまりクラス図(場合によってはパッケージ図)がモデリングされ、それに則ったクラスが作成されることになる。

 デザインパターンにおけるTogether Edition for JBuilder Xの優れた点は、既存のデザインパターンを使うだけでなく、自ら構築したコードをパターン化できるという点にある。すでに作成したクラスのデザインパターン化も可能なので、時間がある時に、作成済みのWebアプリケーションを基にパターン作成をしていけば、以降の開発の手間を軽減できる。デザインパターンを開発資産として残すことが可能なのだ。

品質向上には保守のしやすさも重要だ

 ところで、クラスライブラリにしたりデザインパターンを作ったりすれば、長い間、そのコードが使われることになるので、保守のしやすさも問題となる。

 そこでTogether Edition for JBuilder Xには、「Audits & Metrics」と呼ばれるコードの検査および測定機能が備わっている。検査機能は、コーディング上、不適切なコードが記述されていないかを調べる機能だ。検査では、「for文中でのループ変数への代入」「空のtry〜catchブロック」など、正しく動くけれども見通しが悪かったり、場合によっては開発者が意図しない動作になってしまったりするミスを発見するための機能だ(Fig.9)。

 そして測定機能は、プログラムの複雑さを検出して、コードがどの程度複雑なのかを示す機能だ。コードの複雑度は、グラフ化して表示することもできる(Fig.10)。これらの機能は、クラスライブラリ化やデザインパターンに特化したものではなく、コーディング中にいつでも利用可能だ。そのため、ある程度作り込んだら、適時検査や測定を実行し、コーディングを見直し、必要があれば修正することで、コードの品質を高め、保守しやすいものに改良できる。

 検査や測定の機能は、とくに技量に差がある複数の開発者でチーム開発する場面で役立つだろう。

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Fig.9■検査機能。検査機能によって、見通しの悪いプログラムや、ミスを起こしがちなコーディングをチェックできる


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Fig.10■測定機能。測定機能によって、継承があまりにも複雑化したクラスの存在や、ただ1回だけ登場する変数の利用比率などを視覚化できる


開発者に恵まれた環境を提供するJBuilder X Developer

 ここまでJBuilder X DeveloperとTogether Edition for JBuilder Xの主要機能を解説してきたわけだが、JBuilder X DeveloperとTogether Edition for JBuilder Xが備える機能は、Webアプリケーション開発の現場を大きく変化させるに違いない。

 はっきり言って、JavaはWebアプリケーションサーバなどの実行環境は整っているものの、開発環境は貧弱であり、Webアプリケーションの構築にあたっては、Webアプリケーションの実装方法以外に、Webアプリケーションサーバの設定方法や設定ファイルの記述方法など、純粋なコーディング以外に習得すべきことが多く、敷居が高かったといえる。

 しかしJBuilder X Developerを使えばコーディング以外の設定が簡素化されるため、Webアプリケーションサーバーに詳しくない開発者でも、Webアプリケーションの構築ができるようになる。

 もちろん、すでにWebアプリケーションの構築を手がけている開発者であれば、JBuilder X Developerを使うことで開発効率が高まり、時間の節約が可能というのは言うまでもない。すでにWebアプリケーションの構築経験がある開発者にとっての悩みとなるのが、慣れた開発環境からの移行だが、JBuilder X Developerの場合には、その心配もない。たとえば、現在Antを使って開発しているのであれば、Antのビルド設定ファイルからインポートすることで、従来のプロジェクトをJBuilder X Developerで引き続き開発できる。ウィザードやデザイナの利用についても強要されるものではなく、使いたくなければ、従来の環境と同じく、コードエディタでソースファイルを直接編集しても何ら問題ない。

 JBuilder X Developerは、高度な機能を備えながらも、その機能を開発者に強要しないスタンスを持ち、従来の開発スタイルをいきなり変更する必要がない。そのような意味でも、万人に受け入れられやすい統合開発環境だと言えるだろう。

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関連リンク
▼JBuilder X Foundation plus UML Trial CD 無償送付サービス
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[大澤文孝,ITmedia]

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