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2004/04/05 15:17 更新


バルマー氏とマクニーリー氏、長年来の友情も復活

ともにミシガン州出身で「長年来の友人」であるMSとSunのCEO。2人はゴルフを手始めに和解交渉を重ね、両社の対立を解消するとともに、再び気の合う仲間に戻った。(IDG)

 Sun Microsystemsの会長兼CEO(最高経営責任者)のスコット・マクニーリー氏と、Microsoftのスティーブ・バルマーCEOが4月2日、壇上でNHL(全米ホッケーリーグ)のデトロイト・レッドウィングスのシャツを交換し合った瞬間、業界で最も注目を浴びる2つの敵対企業の間に歴史的な長期提携が結ばれた。

 サンフランシスコのホテルで開かれた記者会見で、バルマー氏と隣り合わせにディレクターズチェアに座ったマクニーリー氏は、「ここにいる多くの皆さんが、彼と私が同じ壇上にいるこの光景にある種の違和感を感じていることだろう」と語った。しかし同氏は、何年にもわたる争いの末、「いい加減に弁論合戦をやめて相互運用性を実現してほしい」との度重なる顧客の要求に応えようと、2003年初めにSunとMicrosoftの不和を解決するべくバルマー氏に電話をかけたと話した。

 両社が和解に達するまでには約1年かかった。これは「複雑な作業だ」とバルマー氏。「さらに私たちは――スコットと私だけでなく――両社間の信頼関係を再構築する必要があった。訴訟という環境下において、オープンな議論を持つことは難しい」

 バルマー氏は、SunとMicrosoftが最終的に合意に至った技術共有について、「それぞれが共有してもいいと差し出すものに双方が満足しなくてはならない」と説明した。

 両社は昨年12月、契約締結に近いところまでこぎつけたが、バルマー氏によれば、あとわずかな「創造性」が必要だったという。両社は12月後半に交渉を一時中断。そして3月は、欧州委員会がMicrosoftに対する独禁法違反の決定を下したため、同社はそちらに気を取られたという。

 和解合意に至る話し合いの大半は電話を介して行われたが、双方の幹部が直接会って話したこともあった。マクニーリー氏はまずバルマー氏をゴルフに招待した。2人は内密にプレイを楽しめるゴルフコースで会い、チームを組んで別のチームと対戦した――対戦相手が誰であったかは明らかにされなかった。結果はバルマー・マクニーリー組の負けだったという。交渉の後半に入ると、会合はMicrosoftの構内やマクニーリー氏の自宅で行われた。

 昨年7月、Sunが営業を休んでいた週のある日、バルマー氏とMicrosoftの会長兼CSA(チーフソフトウェアアーキテクト)のビル・ゲイツ氏は、カリフォルニア州サンタクララのSun本社にいた。途中ゲイツ氏はトイレ休憩のために席を外し、そのまま1人で廊下を歩き回り、Sun社内の“深部”へと入っていった。そこでゲイツ氏は、犬を連れたSunの従業員に出くわしたとマクニーリー氏。

 「おそらくそのスタッフは、『うわー、ビルそっくりの男だ』と思いながらすれ違ったことだろう」(マクニーリー氏)

 SunとMicrosoftの間では頻繁に会合が行われ、そして最後の数カ月は毎週電話での話し合いが行われた。その結果が、2日朝に発表された広範囲にわたる和解合意だ。この合意では独禁法と特許問題が解決され、互いの知的財産を侵害しない形で技術情報を共有する枠組が確立された。

 両社の説明によれば、契約の一環として、MicrosoftはSunに対し19億5000万ドルを支払う。内訳は、7億ドルが独禁法訴訟の和解金、9億ドルが特許問題の和解金、3億5000万ドルがSunの技術に対するライセンス料となる。ただしバルマー氏とマクニーリー氏は、この契約はMicrosoftによる和解金が目的ではなく、あくまでも新たなビジネスチャンスに向けたものだと強調した。両社はこの協力体制が多額の売上をもたらすと見込んでいると両氏は語った。

 バルマー氏とマクニーリー氏が交換したレッドウィングスのシャツは、両氏がミシガン州出身であることを象徴している。自分たちは長年来の友人だとマクニーリー氏。両氏はデトロイト近くの、互いに町の反対側で育ち、マクニーリー氏はハーバード大学、バルマー氏はスタンフォード大学に進んだ。しかしバルマー氏がMicrosoft入りし、マクニーリー氏がSunの責任者になると、友人関係にひびが入り始めた。

 何年もの間、両社は激しい対立関係にあった。Sunは法廷でMicrosoftと争い、マクニーリー氏は幾度となく敵対心をむき出しにした発言をした。同社は米国と欧州での対Microsoft独禁法訴訟でも中心的な役割を果たした。しかし和解合意の発表があったこの日、バルマー氏とマクニーリー氏は再び気の合う仲間に戻り、MicrosoftとSunは製品間における相互運用性確保に向けた10年契約を交わしたのだった。

 レッドウィングスのサイン入りシャツをバルマー氏と交換するにあたり、マクニーリー氏は、「(ホッケーの)プレイオフシーズンを目前に控え、長年のレッドウィングスファンとしてギフトを交換すること以外に、われわれがこのパートナーシップについてどれだけ真剣に臨んでいるかを皆さんにお伝えする方法が思いつかなかった」と語った。

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