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2004/04/23 16:27 更新


Opteronで“サーバプロセッサメーカー”の地位を得たAMD

Opteron発売から1年、AMDに対する大企業の認識は「ノーブランドのIntelプロセッサメーカー」から「Intelに代わる選択肢」へと大きく変わりつつある。(IDG)

 サーバ顧客にとってはオマケの選択肢でしかなかったAMDが、わずか1年でエンタープライズ業界でもてはやされるようになった。Opteronプロセッサが登場したことで、企業のサーバルームはAMDに門戸を開き、多くの大企業がこの新顔企業に浮気している。

 Intelは長年にわたってこの分野を支配し、IA-32サーバ市場で90%以上のシェアを占めている。しかし、IT管理者は購入時にIntelの代替選択肢としてOpteronを検討するようになっている。

 市場調査会社のIDCによると、Opteronの出荷数は発売から四半期ごとに倍増している。しかし、2003年に出荷されたOpteron搭載サーバはわずか3万5000台で、まだIA-32サーバ市場の総出荷台数326万台のごく一部にすぎない。

 Opteronは多数の既存IA-32アプリケーションとバイナリ互換性を保っており、IntelのItanium 2プロセッサよりも痛みを伴わずに64ビットコンピューティングに移行できるルートを顧客に示している。また、AMDのハードは独自の位置に付けて、クラスタアプリケーションへの流れに乗っている。

 Oracle、IBM、SAPなどのソフトベンダーは先ごろから、自社アプリケーションを低価格システムでつくるクラスタに対応させようと取り組んでいる。

 AMDとIntelのクラスタシステム販売に当たるVerari Systemsのデイブ・ドリッガーCEO(最高経営責任者)によると、大企業ユーザーはこの種のアプリケーションの利用に向けて、コストの低さとI/O性能や64ビット処理能力の優位性からOpteronに関心を示し始めている。

 ドリッガー氏によると、Opteron搭載システムは2003年に同社の事業の約20%を占めた。2004年1〜3月期には、この割合が40%にまで跳ね上がったという。「Opteronは当社の中で、かなりの市場シェアを獲得した。データベース、ファイルサーバ、伝統的なエンタープライズ製品に、かなりの関心が寄せられている」と同氏。

 スパムフィルタリング企業Postiniは、データベースキャッシュサーバ用にOpteronシステムを32台購入した。同社の業務担当副社長ジョン・プラル氏は、ホワイトボックス(ノーブランド)のデュアルプロセッサOpteronシステムが、それよりもっと高額なSun Microsystemsの4プロセッサ搭載V480システムをしのぐ性能を発揮したことからOpteron信者になったと話している。

 「Opteronは本当に素晴らしいプロセッサだ。AMDに対する認識が完全に変わった」と同氏。

 OpteronをIntel Xeonプロセッサの本格的な競争相手とするためには、AMDはプラル氏のように顧客の認識を変えなくてはならない。

 「Opteronにとって最大の課題は、AMDがエンタープライズ分野の有力企業だと大企業に認識させることだと思う。AMDはずっとノーブランドのIntel製品と見なされてきた」とVerariのドリッガー氏。

 AMDは年内に、4ウェイサーバを加えてエンタープライズ市場での足掛かりを広げる考えだ。現在、Opteron搭載サーバの大半は1ウェイか2ウェイのシステムで、性能強化のためにクラスタ化されている。

 Opteronが1周年を迎えたことを受け、Hewlett-Packard(HP)は同社初の4ウェイOpteronシステム「Opteron DL585」を発売した。価格は8299ドルから(4月20日の記事参照)。

 Opteron 800シリーズのプロセッサは複数のHyperTransport Linkを備え、同プロセッサを直接つなぎ合わせて、ほかの内部接続が原因で発生するレイテンシを減らせるとAMDのサーバ・ワークステーション事業部のディレクター、ベン・ウィリアムズ氏は説明する。

 ほかのRISCベンダーから4ウェイか8ウェイのサーバを導入している顧客は、2ウェイか4ウェイのOpteronサーバに乗り換えることで、ハードにかける費用を抑えられるだけでなく、プロセッサ当たりで課金する料金体系の場合はソフトの費用も削減できると同氏。

 「(8プロセッサマシンでの)プロセッサ当たりの価格は、4ウェイの価格と比べて4〜5倍になる。そこに小型のシステムを利用する大きな理由がある」とPostiniのプラル氏は話す。

 それを実行に移したのがWeather.comの技術担当副社長ダン・アグロノウ氏だ。同氏は2003年10〜12月期、IBMから2ウェイサーバ8台を購入して、Xeon MP/900MHzプロセッサを搭載したIBMの4ウェイサーバ5台と入れ替えた。

 4ウェイサーバの置き換えに必要だったのは購入したOpteronサーバのうち6台だけで、アグロノウ氏は残りの2台をバックアップ用にしている。データベースに同時に寄せられるクエリー数は25%増えているが、パフォーマンスに影響することなく処理できているという。Weather.comは、Weather Channelのオンラインサイト。

 「Opteronの価格と性能は大きな差を生んだ。2ウェイシステムの価格帯は実に魅力的だ。それに信頼できる」(アグロノウ氏)

 Opteronの最も分かりやすい成功事例はAMD自身だ。同社は9四半期連続で赤字を計上していたが、今では2期連続で黒字になっている。

 Mercury Researchの主席アナリスト、ディーン・マッキャロン氏は次のように話している。「AMDはサーバ向けプロセッサーの主要サプライヤーとして信頼を勝ち取っている。確かに1年前とは違う」

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