IDG インタビュー
2004/04/23 18:11 更新


満一歳を迎えたOpteron、AMD幹部がその成長を振り返る

Opteronの宣伝行脚に忙しいAMD幹部のダーク・メイヤー氏は、Opteron誕生からの1年を振り返り、「われわれが描いていた目標と比べても、かなり上出来」と語る。(IDG)

 AMDのダーク・メイヤー氏は、DECの「Alpha」プロセッサやAMDの7世代目のプロセッサ「Athlon XP」など、いくつものプロセッサ開発チームを統括してきた。だがAMDのコンピュテーション製品部門上級副社長として、同氏は最近、8世代目の「Opteron」「Athlon 64」プロセッサの宣伝に飛び回り、プロセッサ設計者よりも空港の保安検査係の前で過ごす時間の方が多くなっている。

 ニューヨークでOpteronが発表されてから1年後、メイヤー氏は顧客の金融サービス各社に同プロセッサについて説明するため再びこの都市を訪れた。だが同氏はそこで時間を割いて、Opteronの進展に関するIDG News Serviceの電話インタビューに応えてくれた。発表前の息もつかせぬ派手な宣伝から、この1年にサーバメーカーやエンタープライズ市場の顧客に関してOpteronが成し遂げた進歩までを聞いた。

――この1年にエンタープライズで獲得した足がかりを基盤に、Opteronがさらに前進するには何が必要でしょうか?

ダーク・メイヤー氏 初期段階では、採用先の大半が高性能コンピューティングクラスタでした。今後に向けては、この分野で強い勢力を保ちつつ、エンタープライズ全般へと拡大することを目指しています。面白いことに、この市場で求められているものは、現在われわれが提供している技術とそう大きく違わないのです。むしろ必要なのは、Opteronをエンタープライズ級マシンに搭載するOEMメーカーと適切な関係を築くことです。

 そうした関係を築いているという点では、われわれは幸運です。これらの提携による製品のいくつかは、これから市場に登場する予定です。実際、Hewlett-Packard(HP)は現在、エンタープライズ級の(4プロセッサ)システムを提供しています。短期的には、大手OEM顧客との関係を拡大して、企業の一般的なニーズにもっと適したOpteronプラットフォームを提供することを目指しています。

 もちろん次のステップは、AMD64を取り巻くソフトのエコシステム(生態系)の形成ですが、ありがたいことに、それはすぐに必要というわけではありません。Opteronは優れた32ビット製品ですから。

――Intelがこの市場への参入を決定したことは、そのエコシステムの構築においてどれほど重要なことなのですか?

メイヤー氏 それによって、AMD64のエコシステムの発展ペースは加速するでしょう。Intelが同じ命令セットでこの市場に入ってくるわけですから、基本的に、ISV(独立系ソフトベンダー)にとってビジネスケースはずっと明確になっています。Intelの決定は、AMD64の採用を加速するだけだと思います。

――現在Opteronマシンで64ビットアプリケーションを走らせている顧客はどのくらいですか?

メイヤー氏 実際のところ、HPC(高性能コンピューティング)分野のLinuxマシンはたいていそうです。エンタープライズでは、こうしたケースはもう少し緩やかに増えています。動作認証にかなり時間がかかることがその大きな理由です。この市場では64ビットLinuxが利用されています。データベース分野では一部ユーザーがこれを検討しています。

 それ以外は32ビットの世界です。この世界では皆が64ビットへの移行を計画し始めています。

――(64ビット)Windowsのリリース延期で、そうした展開が若干遅れると思いますか?

メイヤー氏 確かにプラスにはならないでしょう。ですが実際のところ、エンタープライズ全体の64ビットへの移行は、あと数四半期は起こらないというのがわれわれの予想です。こうした大企業は非常に保守的で、時間をかけて検証や保証を行います。こうした企業の多くが、既にかなりの時間をかけて、β版からWindowsを試しています。ですから、リリース延期によって移行は少し遅れましたが、致命的、根本的な遅れとは言えません。

――64ビットWindowsの提供は、潜在的なエンタープライズ顧客の一部にとって重要な購入決定要因なのでしょうか? このOSが登場するまで、人々は購入を遅らせているのでしょうか?

メイヤー氏 実際はそうではありません。その理由ですが、例えば、私は今日ニューヨークに来て、顧客の金融会社と話をしました。彼らは皆、Opteronが32ビット製品として持っている価値命題を理解しています。今のところ、エンタープライズでのOpteronの採用は、OEMメーカーからエンタープライズ級システムがどれだけ出るかによって限られています。こうしたシステムは、SunとHPから登場し始めているところです。次に、企業は自身の環境にOpteronマシンを合わせる必要があります。現在利用しているアプリケーションの検証も必要です。Opteronは現行の32ビット環境で非常に高い性能を発揮するため、Opteronマシンには、64ビット機能とは関係なく大きな需要があります。ですから、私の見たところでは、実際は64ビット機能は添え物です。

――設計の点から見ると、現行のOpteronでエンタープライズの作業負荷の大半を処理できるでしょうか?

メイヤー氏 まず興味深いことに、サーバの量という点で見ると、エンタープライズ内のサーバ量は非常に多く、その代表が(2プロセッサ、4プロセッサ)サーバです。特に(2プロセッサ)サーバは2U(3.5インチ)の筐体で、予備電源を備えているものが多いのですが、これは、われわれがまだ市場に投入していない構成なのです。

 近いうちにやらなくてはならないのは、メーカーとともに品揃えを拡大して、エンタープライズ級のマシンを提供することです。これは、当社のCPUやチップセットの機能に関わるエレクトロニクスの話というよりも、むしろシステム構成の話なのです。

――「近いうちに」というのは、向こう1年以内ということですか?

メイヤー氏 向こう12カ月間、OEMと協力してエンタープライズ級マシンを市場に投入し、ISVパートナーに64ビットソリューションを提供してもらい、それからOpteron技術をエンタープライズのエンドユーザーに伝道し続けることに力を入れるという意味です。

 この先12カ月、もちろんプロセッサを高速化し、供給量も拡大していきますが、焦点となるのはむしろ顧客との関係とエコシステムの構築です。

――この10年の終わりに目を向けた場合、AMDの焦点はOpteronを大規模なSMP(対象マルチプロセッシング)サーバに搭載することになるのでしょうか?

メイヤー氏 短期的には、その分野は焦点とはなりません。サーバ分野では、先に説明したような構成(のマシン)において、勢力を伸ばせる余地がたくさんあります。当社が時とともにエンタープライズにより深く食い込み、提携先のOEMメーカーにとってますます重要な存在になれば、もっと大規模なSMPシステムも関心の対象になるでしょう。ですが一般に、こうしたシステムは、大手メーカーと非常に密に提携して設計するしかありません。

 もちろん今は、実際に大規模なSMPシステムを持たないDellを除いて、独自のアーキテクチャを持つ世界の大手ベンダーは緊張状態にあります。AMD64はスケールアウト環境ばかりでなく大型SMPシステムにも良く合うし、単に時間の問題だというのが私の考えです。ですが無論、それはOEMパートナーと協力してやっていくことになります。

 エンジニアリングの側面から見れば、とにかくオポチュニティコストが問題です。当社は現在、サーバと省電力モバイルデバイスの両方にポートフォリオを広げようと考えており、明らかに、大規模スケールアップシステムの開発は今優先することではありません。ですが、当社が成長し、ポートフォリオが広がれば、こうしたシステムはもっと優先度が高くなるでしょう。

――DellがこれまでOpteronを採用しなかった理由は何だと思いますか?

メイヤー氏 ここで注意すべきなのは、Dellは実のところマーケットメーカー(市場を作る側)ではなく、マーケットテイカー(市場を消費する側)だということです。ですからわれわれは、Dellが先陣を切るとは思っていませんでした。同社はわれわれの期待を満たしていないのです。

――Dellが市場を消費する機会がいつやって来るのか、分かりますか?

メイヤー氏 Opteronがエンタープライズ全体に広まり、Dellから仕事を奪い始めたら、同社も対応してくるでしょう。

――Opteronに関して、この1年で計画と違っていたことは?

メイヤー氏 お答えできないとまでは言いませんが、この12カ月はわれわれが描いていた目標と比べても、かなり上出来だったのではないでしょうか。後になってからの判断ですが、Opteronの採用ペースを考えると、もう少し積極的にサーバラインに投資してもよかったでしょう。ですが私としては、この1年の成果には非常に満足しています。

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