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2004/05/27 17:52 更新


「ネットワークは企業戦略の成功要因」とCiscoのチェンバースCEO

ハイエンドルータ「CRS-1」の発表を踏まえて開催したプレス向けミーティングにおいて、Ciscoのジョン・チェンバース氏が、今後の同社の方向性について語った。

 「IT投資と生産性の間には密接な関連性がある。しかし、ビジネスプロセスを変えることなくITに投資しても、それは無駄に終わる。ビジネスの進め方、人とのやり取りのあり方を変えなければならない」――。

 Cisco Systemsは5月26日、ハイエンドルータ「Cisco Carrier Routing System-1」(CRS-1)の発表を踏まえてプレス向けミーティングを開催した。その中で同社CEOのジョン・チェンバース氏はこのように述べ、改めてIT、特にネットワークへの投資が生産性の向上を推進するという持論を展開した。

 このビジョンに関してどうしても誤解してほしくない点があるとチェンバース氏は言う。「単にテクノロジを導入するだけではうまくいかない。生産性の向上には、テクノロジとビジネスプロセスの両面で取り組みが必要だ」(同氏)。Ciscoはひとりネットワーク技術のみならず、プロセスやアーキテクチャの変化も含めた形でそうした取り組みを支援していくという。ただ、「ネットワークとITが企業戦略の成功要因である」ことに揺らぎはないという。

チェンバースCEO

プレス向けにも熱弁を振るったチェンバース氏

あらゆる分野でのリーダーに

 チェンバース氏はまた、今後5年をかけて同社が実現を目指すという「Intelligent Information Network」についても語った。これは、ユーザーがどこにいようと、どのような環境にあろうとも、仮想化されたアプリケーションやリソースに透過的にアクセスできるようにするという構想だ。IT業界全体のトレンドである「オンデマンド」「ユーティリティ」といったコンセプトにも通ずる部分がある。

 このIntelligent Information Networkを現実のものにするために、「ネットワークはより高速で、よりスマートで、より長持ちするものにならなくてはならない」(チェンバース氏)。今回リリースしたCRS-1と中核コンポーネントであるSilicon Packet Processor(SPP)も、この構想を実現するための重要なパーツであるという位置づけだ。

 同氏はまた、Ciscoにとっての主戦場だったルーティング/スイッチングやサービスプロバイダーといった領域に加え、新たな分野にも力を注いでいく方針を明らかにした。この面に関しては、自社内での開発だけに頼らず、買収やパートナー企業との提携を通じて必要な要素を提供していくという。

 具体的には、IPテレフォニーやセキュリティ、ワイヤレスやストレージといった、より高度なネットワークサービスが挙げられる。特にセキュリティについては、複数のウイルス対策企業と提携して、不適切なクライアントPCの社内ネットワークへのアクセスをブロックする自己防衛型ネットワーク構想を推進している。

 このNetworks Admission Control(NAC)プログラムはもちろん、「ファイアウォールやIDS、DoS攻撃に対する防御も含めたさまざまな機能を、設計の基礎からセキュリティを考慮したアーキテクチャの下で提供していきたい」とチェンバース氏は述べている。IOSのソースコード流出事件についての言及はなかった。

 同氏は、今年がCisco創立20周年という節目の年に当たることを踏まえ、「今後の20年間も、イノベーションのリーダーであり続けたい。企業やサービスプロバイダーだけでなく、あらゆるセグメントにおいてリードする立場でありたい」と語り、リンクシス買収によって進出を果たしたコンシューマー/家庭市場にも意欲を示した。

 チェンバース氏の言葉の端々からは、ADSLやFTTHが広く普及している日本市場に対する関心も伺えた。同氏は質疑応答の中で「日本では、非常な勢いでブロードバンドサービスが普及し、付加価値の高いサービスが展開されている。重要な市場であり、日本国内での研究開発に力を入れていくし、NTTやYahoo!といった企業とも協力していきたい」とも述べている。

[高橋睦美,ITmedia]

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