「IT野麦峠」「うさぎ症候群」を改善した在宅勤務の魅力:職場再考のススメ(4/4 ページ)
劣悪な労働環境が問題となっているIT業界において、大手企業を中心に在宅勤務制度の導入が進んでいる。各企業の制度導入までの道のりはさまざまだったが、共通の効果も見えた。制度化に当たり外せないポイントは何だろうか。
在宅勤務導入のコツ
日本IBMでは、2001年から在宅勤務制度を全社員対象に導入している。上司に制度の取得を申請して承認が得られれば、在宅勤務ができる。基本的に、就業および終了時に電子メールや電話などで上司に報告をするだけでよい。制度取得は社員の自主性に任せており、人事への申請書の提出も2004年に取りやめた。
在宅勤務の導入には何が必要となるのか――日本IBMの労務・WBS・人事IT 労務の西僚子氏は「上司の前に座って仕事をすることを評価するのではなく、家で仕事をするための評価制度が必要」と述べる。
労務・人事IT・S&D人事 労務の坂上正樹労務担当は「業態や社風を考慮して、経営方針の中で在宅勤務にどのようなものを求めるかを考える必要がある」と語る。ブロードバンドの普及により在宅勤務が簡単にできるようになったことについては、「制度を支援するツールがあるからといって全社導入するのは危険」と警鐘を鳴らす。
日本HPの松村氏はスモールスタートをポイントに挙げる。「在宅勤務制度は大きな変化と考える担当者も多いが、最初は週1〜2日といった小規模な導入から始めるのがよい。管理担当者からは、週に1日の在宅勤務なら障害はないという声も挙がっている」(同氏)
ブロードバンドやコミュニケーションツールの普及など、在宅勤務を実現できる環境が整った。業務の効率化や精神的な安定に在宅勤務は有効であり、会社にいることと仕事をしていることは同義ではなくなっている。
NTTデータと日本HPの導入事例を見ると、制度化への道のりはまったく違う。だが、「社員が仕事でパフォーマンスを出すための職場環境を提供するのが企業の責任」(松村氏)というように、企業がさまざまな働き方を柔軟に認めようとしている姿勢が見て取れる。このような動きをきっかけに、IT業界の労働環境の改善が進んでいくのではないか。
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