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SMB市場向けSaaSに死角はあるか連載:SaaSで一歩抜け出す中小企業(5/5 ページ)

SaaSの台頭は市場にどんな与える影響を与えるのか。パッケージベンダーのビジネスモデルにどんな変化が起きるのか。参入が相次ぐSMB市場向けSaaSに着目する。

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SaaSと中堅・中小企業

 中堅・中小企業(SMB)ではパッケージソフト全盛期を迎えている。SMBの多くはベンダーに対しライセンス費用、SI費用、バージョンアップ費用などを支払い、自社のシステムエンジニアが運用・保守業務を行う。非常に負荷の多い状況を受け入れている。

 その状況を既成事実として受け止める一方で、あくまでも求めるものは「ソフトウェアの機能」にあり、「どのような提供方法でソフトウェアを利用するか」ではない。つまり「SaaSだからそのソフトウェアを使う」という論理は働かない。

 言い換えれば、既にSMBの多くはパッケージソフトを利用した業務プロセスを確立しており、情報システム部門の人員も確保し、完璧ではないにしてもその機能を享受しているため、提供方法の変化自体に反応を示すとは思えない。

 するとパッケージソフトを所有することで生じる負の要素――価格や体制の不備など――を補完することができる分野からSaaS型ソフトが浸透していく可能性は十分ある。または、新興企業が自社の業務システムをゼロから構築する際には、自然とSaaS型ソフトが採用されるようなこともあるだろう。さらにデジタルデバイドと言われるように、国内には非IT経営を行う中小・零細企業が大勢を占めている。

 そこで経済産業省、総務省を中心とする国および関連する団体のIT支援施策を通じて進められているSaaS普及活動によって、「SaaSの安心感や認知度」が向上することは間違いない。ただし、「安くて信頼がおけるから」という理由のみでSaaSの利用を促しても効果は上がらないはずであり、ITそのものへの需要を喚起しなければ意味はない。

 やはりSMBにおいては、業務をIT化する必要性を啓蒙することにプライオリティが高い。SaaSのような利用するITであっても、ユーザー企業がITで業務を遂行する認識がなければ意味がない。簡単な例を挙げれば次のようなものだ。グループウェアを利用せずに社員のスケジュール管理を行う習慣のある企業に「現代の企業はグループウェアを使うものだ」と広く認識させることが先決で、それには時間もかかる。

 一方で、ITで処理すべき最低限の情報量が企業活動で生み出されなければ意味がない。よって電卓で解決するような情報処理量しか存在しない小規模企業にはSaaSによって、安く、簡単に使えるソフトウェアがあるといっても全く響かないことは言うまでもない。

 SaaSは膨大な情報処理量を前提にして初めてビジネスモデルとして成功するのであるから、SaaS提供ベンダーはある程度の顧客の企業規模を要求せざるを得なくなる(SaaSにおいてはロングテールビジネスであることなどあり得ない)。

 その意味では、1社ごとの規模は小さくとも圧倒的に数の多いSMBに対してSaaSのような必要なITサービスが提供されることは合理的でもある。1社ごとの情報処理量は少なくても、SMB全体としては利用者が多いことで、売る側も買う側も損得が一致するはずだからだ。

 するとSMBにとってSaaS普及のネガティブ要因はほとんどない。むしろ普及の可能性は高いと見るほうが賢明である。SMBへのSaaS普及はひとえに「誰が、何を(必要なもの)、どのようにして(儲かるビジネスモデル)」提供するかにかかっている。


情報処理量とITサービスの関係

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