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コラム

自閉的なチーム組織を活性化するベンチマークという手法職場活性化術講座(2/2 ページ)

不時着したゼロ戦を徹底的に研究してグラマンをつくった米国。他国の製品を研究しつくして世界市場に躍り出たホンダやソニー。こうした勝つための戦略を小さな組織で今から始めてみてはどうか。

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ベンチマークの現代的意味

 では、なぜこうした基本中の基本ともいうべきことが、ことさらにベンチマークとして重視されるのであろうか。ベンチマークには現代的にどのような意味があるのだろうか。

 そこには3つの意味がありそうだ。1つには、複雑かつ高度になった業務のありよう、年々課される目標の高さ、仕事に求められるスピードの早さ。これらにより、われわれの目線がどんどん内向きになっていることがある。外を向いている暇がなく、社内の調整業務に追われる日々であり、せいぜいテレビや新聞のニュースを聞くのが精一杯であるが、自分の業務の関心事を突いて飛び込んでくるニュースは少ない。つまり知らず知らずのうちに、チームや組織全体が「自閉的」になっているのだ。そんなわれわれの行動パターンを見直すきっかけとして、ベンチマークは大切だ。このPlanITでも多くの興味深い最新の動向が出ているが、こうした情報をうまく活用することも大切なベンチマーキングだ。ただなんとなく読み流すのではなく、ベンチマーキングの意識で情報整理をしてみよう。

 2つ目の現代的意義は、ベンチマークが広く世間を見渡すことと関係する。すなわち、他社のベストプラクティスを見るといっても、日々競い合っている同業他社だけ見るのでは、十分広く世間を見ているとはいえないということだ。前回の記事でも紹介したように、今ベンチマーキングは、同業他社を越えて、異業種へと広がっている。レクサスが世界最高のサービスを求めて、リッツカールトンをベンチマークとしているように。しかし、私たちは同業他社まではかろうじて知っていても、意外に異業種ともなると、結構知らない。しかし、ベンチマークを創造的な成果に生かすのであれば、既存の市場、つまりレッドオーシャンの中でのベンチマークではなく、未開拓の市場、ブルーオーシャンを求めてのベンチマークにしたいものだ。そのためには、やはり自分の関心事項について、世界をあまねく観察することが欠かせない。

 3つ目の意義は、ベンチマークがウィキノミクスのツールになるということだろう。すなわち、単にまねるだけではなく、一緒に何かするパートナーになりうるということだ。いまや自社だけのR&D(研究開発)ではなく、他社と連携して世界の知でモノづくり、コトづくりを行う時代である。その相手探しとしても、ベストな相手と組むためのベンチマークが重要になるのではないだろうか。

謙虚な姿勢でアウトプット量を増やす

 このように単にまねるだけではなく、能や茶道でいうところの守破離の実践のために、ベストを知るという謙虚な気持ちが必要なのだ。そしてITマネジャーであるあなたは、これを実践するだけではなく、文化として自職場に持ち込んではどうだろうか。部員のみんなで今週のベンチマーク企業を決め、みなで情報を探しあう。「顧客サービス」などのテーマを設定して、それに関するベンチマーク候補を探しあう。毎月の勉強会を開き、各自が順番にベンチマーク企業の情報を調べ、その結果をプレゼンし、ディスカッションしあう。そしてたまにはそういう企業を訪問してみる(競争相手では難しくとも、異業種だと結構受け入れてくれるはず)。このように、いろいろなパターンが可能だ。ぜひ、職場活性化とアウトプットの革新を目指して、ベンチマークを活用してみてはいかがだろうか。

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プロフィール

とくおか・こういちろう 日産自動車にて人事部門各部署を歴任。欧州日産出向。オックスフォード大学留学。1999年より、コミュニケーションコンサルティングで世界最大手の米フライシュマン・ヒラードの日本法人であるフライシュマン・ヒラード・ジャパンに勤務。コミュニケーション、人事コンサルティング、職場活性化などに従事。多摩大学知識リーダーシップ綜合研究所教授。著書に「人事異動」(新潮社)、「チームコーチングの技術」(ダイヤモンド社)、「シャドーワーク」(一條和生との共著、東洋経済新報社)など。


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