会津若松市のOpenOffice.org導入、職員の本音:Trend Insight
会津若松市がOpenOffice.orgの全庁導入を発表して数カ月が過ぎた。福島県内の自治体では初となるOOoの本格導入だが、コスト削減や職員の対応などに不安も残る。
会津若松市がオープンソースのオフィススイート「OpenOffice.org」(OOo)の全庁導入を発表して数カ月が過ぎた。福島県内の自治体では初となるOOoの本格導入だけに注目が集まる中、職員たちには不安もあるようだ。
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同市は、840台を5年間で入れ替えていく計画で、この10月に240台を、次いで2010年中に460台、それ以降で残りのPCを入れ替える予定となっている。ただし、これは840台すべてのPCからMicrosoft Officeをなくしてしまうという意味ではなく、全体の15%程度のPC、つまり120〜130台程度はMicrosoft Office(Personal版)とOOoの両方をインストールすることで、国、県、他市町村、外部業者などとのやり取りで問題が発生しないようにしている。
こうした構成で、5年間で1500万円の削減効果を見込む会津若松市。1500万円という額は、十数万人規模の自治体の財政からするとかなり大きな額だが、これはあくまで導入コストでの試算であることは注意したい。職員のサポートも含めたコストも考えると、本当にこの額通りの削減効果が見込めるのかについては疑問の余地もある。
現在、会津若松市の職員の数は1075人(平成20年1月1日現在)。職員1人当たりで考えれば、約3000円/年の削減効果となる。OOoに不慣れな職員のサポートや教育に掛かるコストがこの額を上回ってしまえば、コスト削減とはならない。現在は職員研修の一環としてOOoの研修を行うなどしてこれらのコストが膨らむことを抑えているようだが、職員から寄せられた声にはMicrosoft Officeと異なる操作に対する不安や日常業務への影響を心配する声が並んでおり、この部分のコスト増が予想される。
職員の声の一部
- 他市町村などからよく照会文がくるので、既存のワープロソフトがなくなったらすぐ対応ができるのか心配
- 今までの文書をOOo(ODF)へ移していくのが難しい
- OASYSから既存のワープロソフトなどへの切り替えも徐々にだった気がする。OOoへの切り替えも徐々にであってほしい
「政府や自治体では、一般の方からさまざまなファイルが送られてくるが、それらは印刷して紙で見ることを前提として、レイアウト自体にセマンティクスを持たせていることが非常に多い」と2004年のLinuxWorldで語ったのは、当時、総務省情報通信政策局情報通信政策課情報セキュリティ対策室課長補佐だった高村信氏。この傾向は現在もそれほど変化していない。庁内では問題がなくとも、国、県、他市町村とのやり取りで問題が発生しないかは今後試行錯誤を重ねていくことになるだろう。こうした部分に対するコストがどの程度掛かるかといった情報の公開が期待される。
コスト削減という点では必ずしも成功しないかもしれないが、自治体がOOoやODFを使うことで、外部の業者などもそれに合わせていく必要があることを考えると、その波及効果は大きい。特に、地場企業などにとってはOOoやODFへの対応を検討することで新たなビジネスチャンスにつながる可能性もある。理想的なのは、中央官庁がOOoやODFを採用し、トップダウンで進めていくことだろうが、一向に進まないその取り組みを横目に率先して取り組み、また情報を公開していく会津若松市の姿勢は高く評価されるべきだろう。
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