PHP on IISの“ホントのところ”:Trend Insight(2/2 ページ)
PHP on IIS。意外に思われるこの組み合わせに対するニーズが増えてきているという。この組み合わせが提供する価値とは何か。マイクロソフトの加治佐CTOとゼンド・ジャパン代表取締役社長の福安氏に“ホントのところ”を聞いてみた。
―― IISを利用するユーザーが増えているのは確かなようですが、その上の言語レイヤーでPHPを選択するかはまた別の話です。Microsoftは数ある軽量プログラミング言語のサポートラインを持ちたいのであり、PHPはその中の1つという見方もできますが、PHP on IISのメリットを教えてください。
福安 例えば携帯電話向けのサイト構築などでは顕著ですが、できるたけ短時間で立ち上げることが求められるわけで、しかもビジネスですからそこで冒険するのは難しいわけです。時間軸や予算軸といった観点からPHPを選択されるユーザーは増えています。
加治佐 マイクロソフトはインターオペラビリティを向上させるという観点から軽量プログラミング言語(Lightweight Language)に対する全方位サポートを行っています。OSレベルでのインターオペラビリティ向上にも引き続き取り組んでいきますが、現実の利用シーンではLinuxシステムとの混在システムです。このため、その上の言語レイヤーでのインターオペラビリティ向上も図る必要があります。先日リリースされたSilverlight 2でDLRとしてRubyやPythonなどをサポートしているのもこうした考えに類するものといえるでしょう。
管理ツール=「2種類の管理者」+「2種類の管理ツール」?
現在はCTOとして腕を振るう加治佐氏だが、もともとは技術者としてデータベースや統合ソフトウェア、マルチプロセッサのUNIXマシンなどの開発に従事し、1989年にマイクロソフトに入社してからも、ウィンドウズ開発統括部部長など常に開発の最前線に立っていた。「エンジニアが強く外に向けて語る機会はあまりないと思いますし、昔とった杵柄で」と笑いながらPowerShellに対する思いを語る。
―― 今日のシステムでは、ほとんどのシステムはDBと連携します。LAMPやWISPなどの違いについて言うなら、DBがSQL ServerであるかそのほかのDB――ここではMySQLとしますが――であるかまで含めた価値訴求が必要なのではないでしょうか。
福安 われわれはMySQLのリセラーでもありますが、Windows上でMySQLを稼働させているユーザーも少なくありません。MySQLは割とチューニングの余地が少ないと考えていますが、その余地もOSと切り離れたものが多いので、その点ではWindowsでもLinuxでもさほど違いはないと考えます。
加治佐 管理者は大きく2種類に分けられます。UNIX/Linuxの文化をよく知り、スクリプトをゴリゴリと書く管理者もいれば、WindowsのGUIツールから入った管理者もいるわけです。お互いによい文化があり、そのよい面を生かしながら混在システムの統合的な管理に向けて歩を進める必要があります。そのためのツールがWindows PowerShellなのです。特にオープンソースとの連携という意味でPowerShellは重要な意味を持ちます。
管理コンソール自体がPowerShell上に構築される構造になることで、主要な管理機能はPowerShellからスクリプトで処理可能となりました。従来はメールボックスやユーザーの操作などをGUIの管理ツールから行う必要があったExchange ServerはExchange Server 2007で管理ツールをPowerShellの上に構築することで、どちらの管理者でも慣れ親しんだインタフェースから統合管理が可能になりました。IISについても、従来は複数台のWebサーバに対して設定を適用するときもスクリプトベースで処理ができなかったのです。こうしたことがPowerShellで透過的に行えるようになったことで、混在システムであっても統合管理できる基盤が整いつつあります。
積んだだけのスタックでは提供できない価値
―― LAMP環境と同じことができる、ということはできるかもしれませんが、ユーザーの移行を図りたいのであれば、LAMP環境と比べて優れている点を示す必要があります。
加治佐 いままでのLAMPスタックなどをWISPスタックに移行してほしいと伝えたいのではありません。それでは意味がないかもしれませんので。わたしたちがビジネスシーンに伝えていくべきは、単に積み上がったスタックと、Microsoftの製品群やサービスと連携が容易に図れるスタックとはその価値に違いがあるということです。
企業システムには、さまざまなシステムが稼働しています。マイクロソフトの製品で言えばExchangeやOutlook、Windows Media Servicesをはじめ、数多くのシステム/サービスが存在し、そのそれぞれが価値を持っています。そうした製品群やサービスと容易に連携させ、プラットフォームとしてさらに高い価値を提供したいという思いがあります。
そうした意味では、Unicode対応のPHP拡張ライブラリ「Microsoft SQL Server 2005 Driver for PHP」をCodeplexでリリースできたことは地味ですが重要です。WISP環境をお使いのユーザーからは、SQL Serverに接続するPHP用のドライバが求められていました。SQL Serverへの接続を容易にしたことで、データ分析やリポーティングのようなBI、Windows Media Serveiseで高品質なライブストリーミングなど、社内外を問わずサービスの可能性を広げたことになります。
―― Yankee Groupが2005年に行った調査で、初期コストや運用コストを含めた3年間のTCO(総所有コスト)で考えると、Linuxやオープンソースソフトウェアは決して安価ではないと報告しており、Linuxの採用が“高価な無料”となる可能性を示唆してます。
加治佐 導入から展開して運用保守にいたるトータルの流れでとらえてはじめて分かる価値がある証左でしょう。TCOに占めるイニシャルコストは1割にも満たず、多くは運用コストです。企業規模に応じて運用管理のスペシャリストがどれだけおられるかにも左右されますが、パッチ適用作業などの運用管理はやはり時間もコストも掛かるものです。企業の中で運用管理するのであれば、(管理面で)統一された環境で、できるだけ簡単に管理したいというのが本音ではないでしょうか。
―― 最初に戻りますが言語レイヤーが必ずしもPHPでなければならないというわけでもありませんよね。PerlやRuby、Pythonを初めとするほかの軽量プログラミング言語を推してもいいわけですから。今、PHP on IISという選択をするユーザーにどういったコミットができますか?
加治佐 ユーザーの方に安心して使っていただけるよう今後も継続して取り組んでいく、ということです。FastCGIがIIS上で継続して稼働することの保証といった基盤整備の部分と情報発信は継続して取り組んでいきます。情報発信としては、Windowsサーバの上でPHPを利用いただけるよう、コンテンツやセミナーを開催して技術的な情報を技術者の方に提供していきたい。こちらは現時点で1年先まで予定を決めています。
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