情報からビジネスの価値を引き出すInformation on Demand、BIで新たな局面へ:IBM Information on Demand 2008 Report
米IBMの情報活用戦略「Information on Demand」が加速を続けている。ラスベガスで開催した「IBM Information on Demand 2008」では情報からビジネスの価値を引き出し、有効に活用することの重要性が強調された。
米IBMは10月26日から、ネバダ州のラスベガスで「IBM Information on Demand 2008」を開催している。会場のマンダレイベイリゾートには、昨年を上回る7200人以上の参加者が集まり、溢れんばかりの熱気がホテルを包み込む。基調講演には、米IBMのソフトウェア事業を統括しているスティーブ・ミルズ上級副社長が登壇。主軸の情報活用戦略「Information on Demand(IOD)」の有効性をアピールした。
米IBMのスティーブ・ミルズ上級副社長によると、IBMはこれまでIODに10億ドルもの投資を行い、3万人以上のプログラマーを投入してきた。今後は数十億円をさらに投資し、IOD戦略を盤石にしていくという
「ビジネスを最適化するためには、あらゆるデータを企業内の組織やインフラストラクチャに組み入れ、価値を引き出して収益につなげることが必要だ」。ミルズ氏は基調講演で何度も強調した。
M&A(企業の合併・買収)や異業種への参入など企業を取り巻く状況はめまぐるしく変わっている。この変化に対応して情報を管理し、きめ細やかなサービスを提供できるかが、企業が生き残るための生命線になるという。管理している情報を簡単に使いたいという企業内ユーザーの声も大きい。
IBMは、アプリケーションや各業務システムなどと密接に結びついている情報を切り離し、状況に応じて必要な情報にアクセスできる環境を実現するIODを2006年に提唱した。2006年の同コンファレンスはIODの概念を、2007年にはIODを構成する情報の管理や統合の各分野の新製品を披露してきた。
ミルズ氏の言葉にあるように、今回の発表でIBMは「1つ1つの情報からビジネスを最適化する価値を引き出す」ことの重要性を説いている。「コンセプトの提唱から数年が経ったが、ビジネスの現場でこれを実際に体現できている企業は多くない」(日本IBM)ことがその要因に挙がる。
同コンセプトを浸透させるポイントは大別すると2つある。1つ目は、IBMが2007年の11月に買収をしたカナダのビジネスインテリジェンス(BI)ソフトウェアベンダーCognosの存在だ。BI製品をIODに組み込むことで、情報の深い分析が可能になった。
2つ目は、IBMが9月に発表した「インフォメーション・アジェンダ」が関連する。これは企業が業界や産業ごとに最適化した情報管理のひな形を提供するもの。製品およびサービス群を提供し、IODを推進するための「道しるべ」(日本IBMソフトウェア事業インフォメーション・マネジメント事業部の下垣典弘理事事業部長)という位置付けに相当するという。
同日にはインフォメーション・アジェンダを策定するための新製品を発表した。顧客、製品などのデータを管理し、全社的に利用できるようにする「InfoSphere MDM Server Rapid Deployment」、企業内のコンテンツを管理する「FileNet P8 CM & Business Process Manager 4.5」、データベースの情報を自動で管理する「Optim Integrated Data Management」などだ。
これらの製品群を使うことで、さまざまな業界での情報活用が進む。例えば薬物アルコール中毒の患者を治療する場合、患者の薬物使用の履歴を集めるシステムを構築できる。医者は患者の症状を分刻みで知り、迅速な意志決定が可能となる。RFIDタグやバーコードなどからデータを集めることで、偽造を防止した医療品や食品を提供できるようにもなる。
ミルズ氏の下でInformation Management部門を率いるアンブッシュ・ゴヤールジェネラルマネジャーは「情報は企業競争の兵器になる。競争力を持たせるためには、企業固有のアジェンダを作成し、既存の経営環境を崩すことなくビジネスを最適化することが必要だ」と話す。
部門間の資産を統合し、情報を迅速に取り出したり、間違った情報を排除したりするといったシステムを構築できるIODは、BIツールやアジェンダといった新たなピースを備えており、IBMの新たなビジネスチャンスの開拓を強力に推し進めるものだ。
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