ビジネス最適化を導くIOD、日本の中小企業に商機見いだす:IBM Information on Demand 2008 Report
BIツールや産業別サービスの提供などを通じて企業の情報活用を推し進めるのが、IBMの戦略「Information on Demand」だ。同戦略が生み出す「ビジネス最適化」について、アンブッシュ・ゴヤールGMに聞いた。
米IBMは米国時間の10月26日からネバダ州のラスベガスで「IBM Information on Demand 2008」を開催している。同コンファレンスでは、アプリケーションなどと結びついている情報を切り離し、ビジネスに適した情報を素早く引き出して活用するというIBMの情報管理戦略「Information on Demand(IOD)」を売り込んでいる。
IODは企業内に散在するさまざまなデータやコンテンツを管理し、それをクレンジングしてデータの精度を高め、ビジネスインテリジェンスなどの分析ツールを用いてビジネスに応用するまでの一連の流れを指す。同社のInformation Management部門を率いるアンブッシュ・ゴヤールジェネラルマネジャーはそれを「ビジネス最適化」と表現する。ゴヤール氏にIODについて聞いた。
ITmedia 基調講演ではIODが「ビジネスの最適化」を導くということを強調していらっしゃいました。
ゴヤール IBMはIODの提唱とその実現に向け、ビジネス環境の最適化とコストの削減を導くツールやサービスを産業別に提供しています。情報管理の自動化に率先して取り組もうとしている日本では、「ビジネス最適化」が今後大きな市場に成長すると考えております。
ITmedia 具体例を交えてビジネスの最適化について言及してください。
ゴヤール 大規模なコールセンターを運営している企業がIODの製品やサービスを取り入れました。コールセンター業務に必要な顧客の住所などの構造化データ、問い合わせの音声を記録した非構造化データを区別なく1つのデータウェアハウスに取り込みます。その後(使えないデータを使えるように)クレンジングして、ビジネスインテリジェンスで分析します。この結果、顧客の声をコールセンター業務に反映し、適切な回答を届けられるようになりました。
また大手の保険会社では、文書や用紙で管理していたデータを吸い上げて一元管理するECM(エンタープライズコンテンツ管理)の製品を導入しました。さまざまな顧客データを基にニーズを自動で分析し、複数の金融商品を顧客に売ることに成功しました。情報を管理するだけでなく、それを活用する仕組みを構築することで、新たな収益源を生み出したのです。
ITmedia IODは大手企業での採用が目立っています。現在IBMは中小企業へのサービス展開を加速していますが、IODはその戦略には当てはまらないのでしょうか。
ゴヤール IODが導くビジネスの最適化というコンセプトやサービスは、中小企業の成長に一番の影響を与えるものだと考えています。例えばピザのフランチャイズ店舗では、顧客一人一人のニーズを正確に把握して商品開発をしたり、配達の時間を一定にしたりする技術が必要になってきています。
IODはあくまでも戦略です。それらを構成する製品群は(「Cognos」「InfoSphere」「FileNet」「DB2」など)多岐にわたります。結局はこれらの製品を企業にどう使っていただくかが重要です。中小企業へのリーチには、販売チャネルとなるパートナー企業との協業が欠かせません。これらに焦点を当てていきます。
ITmedia IODの根幹を支えるデータベース管理システム製品群について、ビジネスの現状と課題をお聞かせください。
ゴヤール 何百ものデータベースを保有する企業は、データの管理とそれをどう生かすかについて常に頭を悩ませています。多くの企業は、データの管理や分析を手作業で行っています。この作業に掛かる人件費は、データベースのライセンスを購入するよりも高額になっています。
今回、データの管理作業を自動化できる「Optim integrated Data Management」という新製品を発表しました。DB2、DB2z、Informixに加え、(オラクル製品など)IBM以外の製品も完全に管理できます。この製品で、データ管理分野のさらなる利益拡大とIODの訴求を目指します。
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