Google Earthで「Ctrl+Alt+A」を押すと?――イースターエッグ温故知新:今日から使えるITトリビア
「イースターエッグ」といえばキリスト教の復活祭で子どもたちが隠して遊ぶ、装飾した卵のこと。それが転じて、いろいろなメディアに隠されたメッセージを指すようになった。ITの世界にはどんなものがある?
イースターエッグって何?
そもそもイースターエッグとは、毎年3月から4月の復活祭(イースター)で使われる、殻に色とりどりの模様を飾り付けた卵のこと。復活祭は、キリストがよみがえったことを祝うという、キリスト教徒にとっては重要な行事だが、日本ではイースターそのものを知らない人も少なくない。だから、イースターエッグを家の中や庭などに隠して子どもたちに探させるという遊びが行われていることも知らないし、イースターエッグといわれてもピンとこないわけだ。
やがて欧米では、その遊びから転じて、いろいろなメディアに隠されたメッセージを指すものとしてイースターエッグという言葉が使われるようになった。そしてそれが、そのまま日本に伝わった。従って日本では、隠しメッセージという意味でイースターエッグという言葉が使われることが多い。
ITの世界における、隠しメッセージとしてのイースターエッグの歴史は定かではないが、どうやらUNIXに仕込まれたmakeコマンドが最初らしい。UNIXのコマンドラインで「make love」と入力すると「Not war.」というメッセージが表示されるというものだ。この言葉、1960年代にベトナム戦争の反対運動で使われたスローガンである。ちなみにLinuxには「make love」のイースターエッグは存在しない。
イースターエッグというと、開発スタッフの名前を表示する(スタッフロール)ものも多い。このスタッフロールは米国製ゲーム機「Atari」のゲームソフトが最初のようだ。1970年代の話である。
Windows 95/98時代はイースターエッグの花盛り
イースターエッグが全盛期を迎えたのは、今からちょうど10年前。Windows 95に続く新しいOSであるWindows 98が華々しく登場し、いよいよ家庭にもPCが普及し始めたちょうどそのころに、WindowsやInternet Explorer、Microsoft Officeなどマイクロソフトのソフトウェアに、イースターエッグがたくさん仕込まれた。
Windows 3.1には、蝶ネクタイを締めたクマが開発チームのスタッフを紹介するというイースターエッグがある。当時、Windows開発チームでは、テディベアをマスコットにしていたとのことだ。Windows 95では、フォルダの名前を特別なものに変更することで、スタッフロールが表示される。Windows 98ではさらに凝っていて、マイクロソフトの本社キャンパスの様子が写真付きで紹介されているイースターエッグがある。3Dテキストのスクリーンセーバーには、特定の単語を入力すると、関連する単語が次々に表示されるというものもあった。
Microsoft Officeには、さらに凝ったイースターエッグが仕込まれていた。有名なのが、Excel 97にあったフライトシミュレータ。Word 97ではピンボールゲームをプレイできた。それ以前も、Excel 95には、3D迷路風の「Hall of Tortured Souls」というイースターエッグがあり、開発スタッフが写真で紹介されていた。
Internet Explorerにも各バージョンに開発スタッフを紹介するイースターエッグが用意されている。また、IE 4.0ではアドレスバーに「about:mozilla」と入力すると、Windowsがクラッシュしたときのブルースクリーンがブラウザに表示されるというジョークが仕込まれている。
今はネット? Windows Vistaにも?
1990年代は全盛期だったイースターエッグも、2000年を過ぎるとめっきり数が減っていった。どうやらプログラムに無駄な機能を入れるということが、セキュリティ上好ましくないと判断されたためのようだ。だがイースターエッグは、形を変えながらも、Windows Vistaでも健在だった。
Windows Vistaのイースターエッグは、OSの中に含まれているわけではない。インストールDVDの表面に印刷されているホログラムの中にあった。ここに3人の写真が小さく表示されているのに気付いた人はいるだろうか(ただし、本当に小さい!)。この写真は、マイクロソフトの海賊版対策チームのスタッフらしい。裏技コマンドを探すような従来のイースターエッグとは異なるが、これも立派なイースターエッグである。
マイクロソフト製品のイースターエッグが廃れていく一方で、他社に目を向けるとまだまだイースターエッグは健在である。例えばGoogle。Googleの検索窓に「google easter eggs」と入力し、「I'm Feeling Lucky」をクリックすると、落ちてくる文字をカゴで拾い、「Google」という文字を作るというミニゲームができる。ちなみに、操作するウサギは、復活祭を象徴する動物だ。
さらに、Google Earthでは、Ctrl+Alt+Aキーを同時に押すことで、フライトシミュレータを呼び出せる。このイースターエッグは、きちんと日本語化されているばかりか、ヘルプが用意され、ジョイスティックもサポートするなどの本格派。一度は試してみるべきクオリティだ。
いずれの機会には、古いMac OSのイースターエッグも取り上げたい。
関連記事
- パソコンのテレビCMとタレントの関係――ジャニーズのあの人も
テレビで目にするパソコンのコマーシャル。各メーカーとも、毎年3回程度のモデルチェンジに合わせ、CMを模様替えしている。今回はそのテレビCMについて調べてみた。 - ドットインパクトからレーザーまで――最初に使ったプリンタはどれ?
今やオフィスでも家庭にも一般化しているプリンタ。周辺機器の中で最も変化が激しかったのがこの分野だ。最近20年の間にも、主役がどんどん入れ替わっている。 - <オルタナティブ・ブログ>パソコンのTV CMといって思いついたのは(むささびの視線)
- さよならフロッピー――記録メディアの移り変わり
データを入れて持ち運ぶ。そんな役目を担うリムーバブルメディアの中でも、常にPCの進化とともにあったフロッピーディスク(昔は“ディスケット”とも呼んでいた)が、静かにその役目を終えようとしている。 - Vistaの壁紙、写真を撮影したのはだれ?
見た目と操作性にこだわって作られたWindows Vista。壁紙用に見本として用意されているサンプルピクチャーも、質の高い写真ばかり。そこで気になるのが、写真を撮影したカメラマンだ――。 - Office 2007をコマンドラインスイッチで起動してみる
各アプリケーションで統一されたUIを備えるOffice 2007。でもその実態は、やっぱり別モノのアプリケーションの集合体に見えてしまう。例えば起動時のコマンドラインスイッチの統一性はどうだろうか? - 松茸、WX、VJE――懐かしのFEPを思い出す
Vistaを使い始めて何に困ったか? それは、日本語入力システムがあまりにもおバカなこと。「直前の誤変換データの送信」を何度クリックしたことか……。乗り換えようとほかの日本語入力システムを調べたら、ほとんどの製品が駆逐され、お寒い状況になっていた。 - Windowsのログオンとシャットダウンにかかわる豆知識
出退勤時に毎日のように行うWindowsのログオンとシャットダウン。ここにも役に立ったり、役に立たなかったりするさまざまな話題がある。例えばどうしてログオン時のCtrl+Alt+Delにどのような意味があるかご存知だろうか。 - MosaicからChromeまで――Webブラウザ戦争の来し方行く末
Googleは、新しいWebブラウザ「Google Chrome」を発表した。長い間、マイクロソフトのInternet Explorerが独占してきた市場に風穴を開けることができるか注目される。Webブラウザ市場の歴史と展望をおさらいしよう。 - カリスマ経営者の変人ぶりと日本のヘンジン会
「変人」といえば、田中眞紀子代議士が小泉純一郎元首相を称した言葉だが、ビッグネームには多かれ少なかれ、変人ぶりや奇行のウワサがあるもの。今日のIT時代を築き上げたスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツにも数々の逸話が。もちろん日本にだって!? - 「.」の正式名称はFull Stop?――意外と知らない記号の読み方
びっくりマークといえば「!」、はてなマークといえば「?」。文章を書くときに使う記号には、「読み方」がある。結果的に通じればよいとしても、記号には決められた名称があるのだ - Web2.0時代を築く――スタンフォード大学出身の華麗なる面々
米国カリフォルニア州にあるシリコンバレーはスタンフォード大学の出身者たちがIT企業を大学近隣に設立したのが始まりだ。「Die Luft der Freiheit weht(自由の風が吹く)」を校是とする同大が輩出したITリーダーはどのような面々なのだろう? - キロキロとヘクトデカけたSI接頭語――最大単位はヨタ
メガ、ギガなど、すでに一般化した「大きさ」の桁を示す単位。特にストレージのメディア容量を示すものとして多く用いられるが、本来はコンピュータに限る用語ではない。 - アバターの由来――古代インドの神様は10のアバターを使い分けた
オンラインコミュニケーションに欠かせないアバター。インターネットサービスのユーザーの多くがアバターを持ったことがあるはず。意外なことに由来はインドの神話までさかのぼれるのだ。 - Vistaのバグ? 仕様?――無名フォルダの怪
Windows Vistaのような巨大OSにバグは付きもの。マイクロソフトのサイトでも、OSのバグ情報が頻繁に公表されている。だが、中にはバグなのか、仕様なのか、判別しがたいものもある。使いようによっては便利(?)なウラ技を紹介しよう。 - 真夏のオフィスで同僚の背筋を冷やす方法?
一日中デスクトップに向かい、忙しい仕事の毎日を送っていると、つい息抜きしたくなるもの。そんな時、たまには同僚にちょっとしたジョークを仕掛けてみませんか? でも就業時間中のイタズラは控えて。 - WiiやPS3そしてXboxに搭載されているプロセッサは?
Macな友人と世間話をして至ら、彼が一言。「そういえばPowerPCってなくなっちゃったね……」。いえいえPowerPCは健在です。組み込み用途に加え、WiiやPS3、Xboxといった家庭用ゲーム機市場では大活躍なのだ。 - Googleはスペルミスから生まれた――IT企業の社名あれこれ
見慣れてしまったYahoo!やGoogle、IBMなどの社名だが、その由来をご存知だろうか? - 読めない、書けない――漢字をどうする?
ビジネスだけでなく、個人的な手紙のやり取りでもPCを使うことが多くなったためか、「漢字の読み書き」に関する日本人の頭脳はどんどん退化しているかも。「ふいんき(なぜか変換できない)」なんて経験、ありませんか? - 顔文字の起源はいつ?――The First Smiley :-)
PCにだけでなくケータイでも当たり前に使われる顔文字。ブラウザ上で動画を見られる時代になっても、その地位は揺るぎない。そんな身近な存在の顔文字だが、日本での起源はいつだろう。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.