NTTデータの中間期は増収増益 「SIerの枠を超える」と山下社長
NTTデータが発表した中間期の連結決算は増収増益だった。景況感の悪化で苦戦を強いられるITベンダーが多い中、法人分野をはじめとするシステム開発や海外企業との提携を着実に進めたことが奏功した。山下徹社長は「システムインテグレーターの枠を超える」と展望を語る。
NTTデータが11月4日に発表した2008年4〜9月期の連結決算は、連結子会社の拡大やアウトソーシングサービス、運用ビジネスが順調に拡大し、増収増益となった。本業のもうけを示す営業利益は前年同期比18.8%増の446億円、経常利益は同15.0%増の433億円、純利益は同7.2%増の227億円となった。2009年3月期の売上高は1兆1200億円と据え置いた。
売上高は5133億円で同10.1%増。増収分472億円のうち、162億円が単独、309億円が連結分の影響による。単独では「法人分野などで着実に利益が増えている」(NTTデータの塩塚直人執行役員財務部長)。連結分の増収のうち297億円は連結子会社の拡大によるもの。
1月に買収したシステムインテグレーションを手掛ける独itelligenceやNTTデータジェトロニクス、NTTデータCCSなどの連結子会社が増収をけん引。それぞれ「約156億円、50数億円ずつの増収に貢献した」(塩塚氏)。
NTTデータは、中央省庁や自治体向けサービスを手掛ける公共分野、銀行や証券街者向けの金融分野、一般事業法人向けの法人分野の3つを柱に事業を展開している。中間期では特に金融分野が好調で、売上高は同34.8%増の2185億円を記録。同24.1%減の1118億円となった公共分野の売上高減少を吸収した。
通期の目標売上高や営業利益は据え置いたものの、世界景気の鈍化に伴い、全体の動向予測を第1四半期時の予想から見直した。金融分野が「微増もしくは横ばいから、横ばいもしくは微減」、法人分野が「微増もしくは横ばいから、微減もしくは減少」に転じるという。
山下徹社長は「法人分野(の利益拡大)が最も厳しい」と指摘。世界経済の混乱や収益の不透明化などが顧客にも影響を及ぼしていると言及した。ただ、「合理化で体力をつけたいと考える企業も多い」(山下社長)とし、引き続き同分野での営業を強化していく見方を示した。
金融分野では、景気の変動を受けにくいコンプライアンスへの投資要望を逆手に取り、金融系インフラの開発を進める。「(地銀や第二地銀が利用する)地銀共同センターでも積極攻勢をかけたい」(山下社長)とするなど、景気に対する足元の不透明感を払しょくする構えだ。
山下社長は「円高で景況感は悪化しているが、受注高も増え、増収増益となった。中期経営計画などの取り組みが実を結んでいる。下期も気をゆるめず通期目標達成に向けて頑張る」と力を込めた。
海外企業との積極的な連携で売り上げ伸ばす
NTTデータは今年に入り、itelligenceやBMWの情報システム子会社であるCirquentを10月に買収するなど、海外展開を進めている。海外拠点では4800人体制を確立、2009年3月期の海外売上高は600億円(2008年3月期は183億円)を見込む。「2010年3月期の海外売上高1000億円達成も視野に入った」と山下社長は自信をのぞかせる。
榎本隆副社長は「今後もノウハウやマーケットの獲得に向け、専門性を持った良い会社があれば大小を問わず増やしていきたい」と述べ、M&A(企業の合併・買収)の展開に含みを持たせた。itelligenceおよびCirquentについては、「今後1、2年は(各社の)システムインテグレーション事業に注力する」。
ブランド戦略を一新、システムインテグレーターの枠超えへ
NTTデータは9月にブランド戦略を一新した。1988年にシステムインテグレーション事業を手掛けるNTTデータの発足から営業黒字を重ねてきた。
そんな同社について顧客企業は「半数強が業務改革やビジネスモデル変革のためのパートナーと認識している」(山下社長)。それに応えるためにサービスやソフトウェア事業のさらなる拡大を視野に入れ、「インテグレーションからITイノベーターへ」と脱皮を図る。
「NTTグループの総合力を活用し、システムインテグレーターの枠を超える」と山下社長は意気込んだ。
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