POS端末への投資は一巡、セルフレジは本格普及の兆し:小売業のPOS市場予測
Y2K問題に対応できるPOS端末への更新が一巡しつつある中、人件費や管理費を削減できるセルフレジの導入が大手スーパーマーケットを皮切りに進み始めそうだ。矢野経済研究所が小売業のPOS市場の動向を発表した。
矢野経済研究所は12月8日、物品販売の売り上げ実績を単品で集計し、管理するPOS(販売時点売上管理システム)端末の市場動向を発表した。小売業のPOSへの投資が一巡する中、顧客がレジを操作して会計を済ませるセルフレジ(セルフチェックアウトシステム)が本格的に普及する見通しという。
POSへの投資は一巡
2007年度の国内におけるPOSの出荷台数は、情報システムの障害が世界的に起こると言われていた「2000年問題(Y2K)」に対応したPOSシステムへの入れ替えが2006年度から堅調だったこと、その流れが中堅・中小企業にも波及したことでが影響し、2006年度とほぼ同水準の17万3536台だった。
2008年度は、Y2K対応のPOSの入れ替えの一巡や、世界恐慌の国内への影響、原材料高が引き起こす粗利率の低下などから、POSを導入するスーパーなどの投資が鈍り、POSの出荷台数は前年度比18.8%減の14万757台になる見込みという。
セルフレジは本格的な普及へ
少子化の影響で、パートタイマーやアルバイトの人材確保が難しくなっている小売業では、レジ業務を減らすため、セルフレジの導入を検討する企業が増えている。実験的にセルフレジを導入している企業では、予想を上回るコスト削減が見込めるとして、導入店舗を増やし始めている。
こうした背景の中、総合スーパー、食品スーパーに加え、ドラッグストアやコンビニエンスストアでの導入も増加する兆しを見せており、2008年度のセルフレジ市場は出荷台数で前年比約4倍増の2450台、出荷金額で39億6500万円に上る見通しという。
矢野経済研究所によると、消費者の買い控えなどから小売業のIT投資が縮小傾向にあるほか、ショッピングセンターの出店が減速するなど、POSの新規導入による出荷台数は難しい。一方でセルフレジは、2008年度から本格導入を検討している企業が増加傾向にある。POS端末市場全体としては、2、3年は13〜14万台の出荷台数で推移すると予測している。
同調査は、国内のPOSメーカー、レジスターメーカー、カード決済端末メーカーなどを対象に、面接や電話による聞き取りを行ったもの。調査期間は4〜11月。
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