Nehalem搭載ブレードの登場ラッシュから見えるもの:「仮想化シフト」が鮮明に
インテルのXeon 5500番台、開発コード名「Nehalem-EP」のリリースに合わせ、サーバベンダーの新製品ラッシュが続いている。そこに加えられる各社の独自色から、ユーザーが注目すべきトレンドも見えてくる。
先月10日の日立によるインテルXeon5500番台プロセッサ(開発コード名:Nehalem-EP)搭載サーバの発表を皮切りに、ブレードサーバの新製品ラッシュが始まった。3月31にはIBMが、そして多くの企業が新年度を迎える4月1日にはデル、そしてNECもこの動きに追随し、Nehalem搭載ブレードサーバの市場投入を明らかにした。
現在ユーザー企業の間では、仮想化がキーワードとなっている。だが、どれだけサーバのプロセッサが早くなろうとも、メモリアクセスに十分なパフォーマンスが得られなかったり、そもそものメモリ搭載量に余裕がなければ、十分な仮想インスタンスを設定できない可能性がある。しかしメインとなるプロセッサにNehalem-EPを採用すれば、従来FSBの呪縛にとらわれていたボトルネックが大幅に解消され、CPUとメモリ間の高速アクセスが可能になるだろう。この特徴を生かすため、各社とも新ブレードサーバにおけるメモリスロットを増加させてきた(メモリ自体も高速に動作するDDR3 DIMMが採用された)。その結果いずれの製品も、現時点では仮想化に最適だといえるプラットフォームに仕上がっている。
ベンダー | 製品名 | メモリスロット/最大搭載量 |
---|---|---|
日立 | BS2000 | 18スロット/144ギガバイト |
IBM | HS22 | 12スロット/96ギガバイト |
デル | M610 | 12スロット/96ギガバイト |
デル | M710 | 18スロット/144ギガバイト |
NEC | B140a-T | 8スロット/64ギガバイト |
また省電力化が求められる昨今、各社共通して打ち出しているのが、AC-DC変換効率の改善である。2008年上半期の段階で変換効率90%越えをうたっている統合サーバベンダーはIBMのみであったが、ここにきて日立、デル、NEC、そして(Nehalem搭載サーバはまだ発表していないが)HPなども「変換効率90%」に到達してきた。米国EPRIによる「80 PLUS」も指標として注目を集めるだろう。
コモディティのなかで図られる差別化
「IA」である以上、ブレードサーバという製品に似通った部分が出るのは止むを得ない。だが同時に、各社とも差別化に努めている。
例えばHDDだけでなく、ホットスワッパブルなSSDを搭載可能という点で独自色を出すのはIBM Bladecenter HS22だ。パフォーマンスと省電力を追求したSSDの実装により、ITインフラ用とだけでなくHPCクラスタ用途も視野に入れた市場展開を行う。サーバブレードの内部レイアウトにも変更が見られ、ホットスワップを可能にするためHDDベイが前面に移動し、寝かされた状態で実装されていたメモリスロットが、冷却効率が考慮されてか立った状態に変更されている。
またデルのPowerEdge M610/M710には、仮想化用途で利用されることをにらみ、VMwareおよびXen Serverを組み込むためのメモリスロットが用意されている。USBメモリを利用するものは他社製品にも存在したが、今回USBスロットに加えSDカードスロットが実装された。また管理ソフトウェアも組み込み済みで出荷されるため、CD-ROMなどのメディアからドライバやツールをインストールする手間がかからない。デルは「初期導入時間を約50%短縮できる」とアナウンスしている。
NECのSIGMABLADE B140a-Tの場合、当初から仮想化、そしてSAN環境での運用を想定しディスクレスの製品となっている。またエンクロージャに組み込まれた管理モジュール「EMカード」により、ラック単位のパワーキャッピング(最大消費電力のしきい値を設定し、その範囲内でパフォーマンスを調整しつつ、サーバを運用する)が可能となっている。サーバブレード単位のパワーキャッピングが可能な他社製品は多いが、ラックをまたがった設定ができるという点で、データセンターなどでの運用に際し現実的であり、この分野ではNECに一日の長があるといえる。
日立BladeSymphonyで最も特徴的なのは、そのサポート期間の長さであろう。BS2000(および小型集積モデルBS320)から、7年間にわたる保守サービスがオプションで提供される(他社製品の場合は3年から5年が標準的)。BladeSymphonyは特にミッションクリティカル分野で利用されることが多いといい、ユーザー環境における検証にも数年を要するケースがある。そうなると、本番において保守サービスを受けられる期間が実質的に短くなってしまうため、期間の延長に踏み切ったという。この背景には、メインフレーマーとして堅実なモノづくりを続けてきた日立の自信も見て取れる。
日を経ずして今後、2010年にIAサーバ市場で国内トップシェアを取ると宣言した富士通、それを実現するならば富士通が追い抜かねばならない存在であるHPなどもNehalemを搭載したブレード製品を投入してくるだろう。またIBMによる買収報道の影に隠れてはいるが、サンもHPC分野を主力にブレードを投入しているプレイヤーである。デルのDNAにも見られるような独自色を、彼らがどのように打ち出すにせよ、今年度はユーザーもベンダーも「仮想化」の流れに大きく舵をきることになりそうだ。
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