検索
ニュース

トヨタの「自前主義」に微妙な変化――情シスを統括する大西常務ロングインタビュー(5/5 ページ)

情報システムを開発し、所有する「自前主義」を貫いてきた同社だが、深刻化する不況の中で、それも微妙に変化している。トヨタで情報システムを統括する大西弘致常務役員に話を聞いた。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

ハイブリッドや電気自動車時代のクルマ

ITmedia 今後ハイブリッド車や電気自動車が普及すると、見た目は同じでも、エンジンを搭載した従来の自動車とは実質中身は別のものになるという指摘もあります。

大西 フラグシップ製品「LEXUS LS」シリーズをみると、制御系のプログラムは700万行以上あり、自動車1台にコンピュータを100個前後搭載しています。世の中で盛んにいわれているのは、コンピュータ同士をつなげて新たな付加価値を出せないかという話です。例えば、高齢者などの運転者の体力を検知してブレーキアシストの力を変えるとか、車車間通信、テレマティクスなどの領域に、今後は自動車の付加価値が出てくるでしょう。エンターテインメント系の機能も重要かもしれません。

 これまでのような「走る、曲がる、止まる」という自動車をつくるために垂直統合していた産業構造が変わり、電機メーカーや通信キャリアを含めた水平結合型の産業になっていくことも考えられます。現状、水平結合という意味では、自動車産業が強いリーダーシップを持ち得ていないのが実情です。

 「クルマの最終アセンブラ」という意味での仕事は変わらなくても、実際の価値がクルマではないところに移ってしまう可能性もあります。その価値を自動車メーカーとしていかにして実装するか。例えば、車載器などによる付加価値の提供方法が考えられますが、まだよく分かっていません。

 これまで、ロボットやバイオなどさまざまな分野にトヨタは着手してきたのでよかった。そういった新しい技術を手にしていないと、それこそ自動車産業は過去の産業といわれかねない状況です。

 自動車は本当に良いものです。ドアツードアでこれくらい随意性の高い乗り物は他にありません。道とガソリンスタンドさえあれば、他に何もいらないわけです。電車にせよなんにせよ、ものすごく大規模なインフラが必要になります。その意味で、クルマの商品としての価値は簡単には棄損しないと考えていますが、カーシェアリングのような考え方もでてきています。「電化製品」のようにコモディティ化すると、ある意味では誰でもつくれるようになってしまいますので、電気自動車などが普及する時代に備えて、ITによる付加価値部分も高めていく必要があります。

 「基幹系システムはこの人、車載系のシステムはこの人が担当」なんて言っている場合ではありません。MicrosoftがFordとテレマティクスで協業しています。そんなようなことが、今後増えていくと思います。

ITmedia 個人的なものも含めた2009年度の目標を教えてください。

大西 冒頭申し上げた通り、私自身は、まだまだ経験が浅く、現在もシステムを正しく理解する上での途上にいます。部下は私がシステムを正しく理解しているかどうかをチェックしています(笑)。私の言動が徐々にメンバーの信頼を上げていっているという気はしていますが、3年目に入り、いよいよ「これは私が手掛けた」というものを形にしたいと思っています。

 現在は、次世代トヨタITグランドデザインを創ろうという話をしています。要するに、ここまで述べてきたことですが。内容は4つほどあります。投資構造、IT調達とベンダー政策、連結を含めたガバナンス、もう1つが技術動向の見極めです。オープン化、SOA、クラウドコンピューティング、サーバの在り方など、私にとって今後主流となる技術や製品の流れを含め、勉強しなければならないことは山ほどあります。

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る