内線電話を社外に持ち出す――通話料を下げるPHSの新たな利用:わが社のコスト削減(3/3 ページ)
PHSで内線通話ができるサービスをウィルコムが始めたのに続き、携帯電話各社も同様のサービスを今年から始める。通話料金の削減と業務効率の改善がメリットというが実際の効果はどうか。ウィルコムとユーザー企業に聞いた。
もっと使いこなしたいが……
W-VPNの導入によって、東京ガスリックリビングでは顧客対応フローの改善も図った。新宿お客様センターでの受付状況を分析したところ、顧客が担当者を指名するケースが多いことが分かり、顧客へ担当者のPHS番号を周知するなどの仕組みも取り入れた。
「可視化するのが難しいものの、特にセンターからの連絡を受ける社内担当者の負担が大幅に軽減されて良いという意見が多数あった」(是永氏)。顧客対応以外でも、従業員同士の連絡がスムーズになったほか、特殊な操作を必要としないので、新入社員にPHSを持たせてもすぐに使いこなせるなどの効果も得られたという。
一方、W-VPNに対する課題は、グループウェアや電子メールなどの情報システムとの連携が難しい点や、内線番号の管理が簡単にできない点だ。
「情報システムとの連携は携帯電話の方が得意なようだが、検討段階ではPHSの操作性を優先にした。今後はメールチェックやスケジュール共有がPHSで簡単にできるといいだろう」(同氏)。内線番号の管理はPBXで行うが、大抵の場合は外部のシステムサービス会社が担当しているため、急な人事異動などに伴う番号変更などの管理を毎回依頼しなければならない。
ウィルコムの小泉氏はこの点について、「内線番号の管理やほかのシステムとの連携はPBXの仕様に任せているので、ニーズによっては対応できない場合がある。なるべく顧客とシステムサービス会社が自由に環境を構築できることを考慮したため」と説明している。同氏によれば、W-VPNでのシステム連携ついて検討を進めており、今後PBX機器によっては連携機能が実現する可能性もあるという。
身近な携帯端末を内線化するメリット
携帯端末で内線通話を利用するためのシステムは、PHSでは「構内PHS」として、携帯電話では無線LANを併用する「モバイルセントレックス」といった仕組みで以前から提供されてきた。しかし、構内PHSは通話エリアが事業所内に限定されること、モバイルセントレックスでは無線LANのエリア設計や異なる電波環境をスムーズに連携させる際のシステム構築が難しいといった課題があった。
W-VPNや携帯電話各社が導入を予定しているサービスは、こうした課題を考慮してなるべく平易なシステム構成で、モバイル機器を活用した業務改善と通信コストの削減の実現を図るものと期待される。各社のサービスの基本内容に大きな差異は無いものの、内線番号管理をPBX側で行うか、通信事業者側で行うかといった細かな差異が存在するため、自社の業務環境を適切に把握した上でサービスを検討することが重要になりそうだ。
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