「スマートフォンを使ってほしい」――企業利用を狙うモバイル業界:飽和市場を打開したい(3/3 ページ)
モバイルコンピューティング推進コンソーシアムは、スマートフォン市場の中期予測調査を行っている。飽和する携帯電話市場を活性化させる上で、企業の利用拡大が重要な切り口になると指摘する。
スマートフォンを使うための課題
武藤氏はまた、企業でのスマートフォン利用を啓蒙する狙いについて「国内の携帯電話市場が飽和状態になり、通信事業者が個人の2台目所有や法人での利用拡大を図りたいという考えもある。この結果、サービスがさらに充実し、ユーザーにとってより良い環境が促進される」とも話す。
海外も含めてスマートフォンの企業導入については、まだまだ手探り状態の企業が多く、リポートにあるように導入メリットそのものが分からないとする意見も目立つ。先進性を特徴とする一部の企業を除いては、社員個人がスマートフォンを持ち込んでいるケースが多く、そうしたケースでは情報システム部門も「管理規定がない」などの理由で黙認している。
スマートフォンを企業で利用するためには、PCと同様に情報システム部門が適切に管理できる手段が必要だとする意見もあり、今後は運用面でも企業が導入しやすい条件を整備することが求められそうだ。
例えば、端末やモバイル用アプリケーションの配布、設定、変更管理、権限管理、セキュリティ対応などを一元的に行いたい場合、Windows MobileやSymbianなど特定のスマートフォンOSに対応していても、iPhoneも含めたマルチOS対応のソリューションが現時点で存在していない。また、企業としてどのOSを選ぶべきか、どの端末を選ぶべきかといった指標がなく、企業としてスマートフォンを十分に考慮したポリシーを用意している場合も少ない。
スマートフォンの市場拡大では、個人向けではオンライン型アプリケーションサービスなどを売りに普及拡大の本格化が見込まれるが、企業向けには開発環境のメリットばかりではなく、運用管理の環境を中心にITベンダーやシステムサービス企業を含めたさらなる環境整備が重要になりそうだ。
関連キーワード
スマートフォン | MCPC | 運用管理 | 携帯電話市場 | Windows Mobile | BlackBerry | Android | Symbian(シンビアン) | iPhone OS
関連記事
- 不況下でも伸びたスマートフォン、今後の成長は鈍化
矢野経済研究所が発表した2008年の国内スマートフォン普及台数は68%増となったが、今後の成長ペースは鈍化すると予測している。 - スマートフォンは企業で増殖するのか――MCPCの中期予測
MCPCが実施したスマートフォン市場の調査結果から、08年の法人利用は約31万台規模になることが分かった。2011年の推定契約台数は約600万台で、このうち法人は約158万台規模になるという。 - モバイルの導入効果は6億円規模――MCPCアワード、グランプリは九州電力
モバイルの業務活用で効果を上げた企業や団体を表彰するMCPCアワードのグランプリが決定。複数のモバイル技術やサービスを総合的に自社の業務に組み込んで活用した九州電力がグランプリを獲得した。 - スマートフォン運用でのセキュリティ対策のツボ
企業がスマートフォンを利用するには、電子メールや業務データの情報を保護するセキュリティ対策が欠かせない。最近ではPCと同様に管理していく環境が整いつつある。 - スマートフォンを“歓迎”するための心構え
多機能かつ通信機能を内蔵するスマートフォン。個人で利用するには魅力的だが、そもそも会社で使えるのか? 導入するために特別な対応が必要なのだろうか?
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.