帝京大学医学部附属病院、医療情報の連携基盤を構築:医療システムをSOAで
帝京大学医学部附属病院は、オラクルのミドルウェア製品群を活用し、医療情報の連携基盤を構築した。
スタッフ1人1分節約すれば大きな効果
この連携基盤は「iEHR (Electronic Health Record)」と呼ばれるもの。iEHRの「i」は「Integration」「Interface」を意味し、各種システムの情報の一元化、人間と医療機器のインタフェースをITが担うことを表しているという。2009年、既存の電子カルテシステムなどを利用しながら、医療情報の集約と一元管理による患者情報や検査情報などの可視化を実現するために構築された。同基盤は「Oracle BPEL Process Manager」や「Oracle Service Bus」をはじめとするオラクルのSOA技術が活用され、既存システムにほとんど手を加えずに構築されたという。
帝京大学医学部附属病院は全国に82ある特定機能病院の1つ。高度な医療を提供し、救急救命センターや総合周産期母子医療センターなどの施設を備える病院だ。同病院は、最新の施設・設備による充実した医療体制でさらなる地域社会への貢献を目指すため、09年5月、病床数1154という国内最大規模の新棟での診療を開始した。
同病院は、05年に戦略的なIT活用の構想を実現するため、帝京大学ちば総合医療センターでパッケージ製品を利用せず電子カルテシステムを一から構築した。しかし、新しい電子カルテシステムでは、個々の既存システムごとに、電子カルテシステムと連携させるためのプログラム開発が必要となり、新たな検査機器の導入やリプレースが発生するたびに連携プログラムの書き直しをしなくてはならなかった。このため情報の一元化には莫大な時間とコストがかかるという課題が残り、IT化による業務改善に限界が生じる懸念があった。今回構築された情報基盤は、こうした課題を解決する目的で構築されたものだ。
帝京大学医学部附属病院では、この仕組みにより電子カルテシステムと既存の部門システムの情報を連携させ、各システムのデータを集約・一元管理してポータルサイトや携帯端末からいつでも閲覧できるようにした。可視化により、医師やスタッフは患者情報や検査情報などのリアルタイムかつ的確な入手が可能となり、無駄な業務の見直しとスタッフの能力をさらに生かし、病床が増えた状況での迅速な運用も可能になった。
例えば、医師が血液検査をオーダーし、結果に急を要する異常値が見つかった場合、従来の医療現場では検査技師がそれを医師に伝えるために病院内を探し回るケースが多かった。しかし、血液検査システムと電子カルテシステムがワークフローレベルで連携することで、異常値の情報を自動的に伝達することも可能になった。
iEHRは、30テラバイトの医療情報基盤データベース、100テラバイトの各種画像データ蓄積用のストレージに対し、「Oracle Automatic Storage Management」を導入し、高価な高速ディスクと安価な低速ディスクの組み合わせにより、大幅なコスト削減を実現したという。
同病院では今後、医師やスタッフが必要とする情報の密度をさらに高めるため、各システムの連携をさらに強化する予定だという。また、常時約600人の看護師が稼働する同病院では、ITを用いたタイムリーな情報提供をさらに推進し、看護師が情報を求めて院内を移動する時間の削減を目指している。1人につき1日当たり1分間の削減でも、合計では600分、1人分以上の労力が削減できる。こうして削減した時間を患者のケアなど本来の業務に活用する考えだ。
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