“心の風邪”では片付けられないうつ病をどう乗り越えるか:自殺者を1人でも減らしたい(3/3 ページ)
仕事や家庭の悩みから心身のバランスを崩してうつ病になる人が後を絶たない。企業や個人がうつ病問題にどう向き合うべきかについて、メンタルヘルスケアを手掛けるセーフティネットの山崎敦社長に聞いた。
うつ病を防ぐには
企業で社員がうつ病に至らないようにするには、社員本人やその周囲が少しでも違和感を覚えたら、直ちに休養することが大事だと山崎氏。
「熟睡できない、食欲がないという日が続いたら注意すべき。すぐに仕事から離れて体や脳を休め、うつ病を予防してほしい」(山崎氏)
しかし、本人がそうした対処をできない場合もある。周囲では、例えば労働時間などを基準にして残業時間が1カ月に80時間を越えているような場合に、本人が訴えなくとも直に休ませるなどの対応が不可欠だという。
「自殺にまで至ってしまうと、必ず周囲の人間に“異変や兆候がなかったのか”“事前に気付けなかったのか”と問い詰める声がある。周囲の人も“言われれば心当たりがあったが、その時は気付けなかった”という気持ちがほとんど。自殺を防げなかったことに強く責任を感じて悩み込む人もいる」と山崎氏は話す。
うつ病は目に見える兆候が分かりづらいことから、早い段階で気持ちを切り替えられるきっかけを作ったり、相談の場を設けたりすることで、予防していくことが重要なようだ。
また、うつ病から復帰できた後にも配慮が欠かせないと山崎氏は指摘する。本人にはうつ病を再発するのではないかという不安を抱えている場合が多い。「周囲ではうつ病に対する理解が欠かせない。“前みたいに仕事ができるだろう”という上司の声などは特に危険」(山崎氏)
うつ病に至った原因を本人と周囲が共有できるようであれば、可能な範囲で改善に取り組むことや、そこまでの対応が難しい場合には本人が自分ペースを取り戻せるまで、周囲が無理のないペースで見守っていくことで、再発を防げる可能性が高まる。
「過剰な対応は、むしろ周囲にうつ病のリスクを広げる恐れがある。われわれも悩み事を根本から解決できる支援を心掛けている。1人でも多く自殺者を減らしたい」(山崎氏)
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