環境意識により変化した社会で、存在感を示すのはIT――富士通 高橋常務理事(後編):日本のCGO(2/2 ページ)
環境意識の高まりによる社会の変革を予測する富士通CGO 高橋氏。そこで存在感を高めるであろうIT産業の視点から、行政に対する要望も指摘する――。
環境意識による社会変化、ITが示す存在感
高橋 ここまで紹介した取り組みのきっかけとなったのは、京都議定書もさることながら、富士通自身がコミットした「CO2排出量を2010年までに1990年レベルに戻す」という目標を設定したことです。
実現のため、副会長を委員長とした「ローカーボン委員会」を社内に設けました。そして各BGの長をその場に参集させ、グループごとに設定した削減目標に達しているか否かをレビューし、約束したCO2排出削減目標を実現するための投資優先度や方法を議論しています。
BGの長は、そのほとんどが役員クラスです。であればこそ、所管する事業だけでなく企業全体、社会全体を見渡す視野も必要なのです。
ITmedia 企業としての取り組みを続ける中で、行政に対する要望はありますか。
高橋 IT産業に属する企業として、行政にお願いしたいし、また既に要望していることとして、「全体のCO2削減に対するIT産業自体の貢献度を認めて欲しい」ということがあります。
例えば自動車産業においては、課せられた排出規制をクリアするのにIT産業による技術をかなりの割合で活用します。しかしそのことが税制面などで評価されることはありません。
IT産業自体のCO2排出割合は、全世界で見て約2%にすぎません。しかし残りの98%のほとんどに対して、IT産業から生じた技術がCO2排出削減に貢献しているという実態があります。“産業連環”のもとで省エネが実現しているのだから、連環内での貢献度もある程度評価して欲しいと感じています。
ITmedia 他産業の排出目標クリアには、IT産業が相応の割合で貢献している。そこに一定の配慮をすべきということですね。
高橋 「2050年までにCO2排出量半減」という非常に高い目標をクリアするイノベーションについては、太陽光発電など様々な技術が検討されています。どれをとっても、IT産業は相当の割合で貢献することになるはずです。そういったところを、上手に鼓舞する税制なり、規制緩和なりが検討されればよいと感じています。
高橋 10年後、そして20年、30年後と、環境状況の変化に応じ、われわれの意識も常に変わっていかなければなりません。個人の生活意識、ライフスタイルなどもそう。例えば最近では、喫煙に対する人々の意識が変わりました。それにより、社会システムまでも変化しています。同様のことが、省エネ意識やローカーボン化といった中から生まれるでしょう。
その際起こるのはどのような社会変化か。それを、行政も企業も見極めなければなりません。そしてITという産業は、変革した世界で大きな存在感を示すことになるでしょう。
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