電子政府のあり方を西新橋から発信――CyberGovernment Square:ITで行政のコスト削減(2/2 ページ)
この6月、日立の電子行政ショールーム「CyberGovernment Square」がリニューアルし、コンテンツも大きく入れ替わった。公共サービスの質やセキュリティの向上、さらにはITを活用した業務効率化やコスト削減につながるソリューションが展示され、デモ環境に触れられる。
情報の双方向性を果たすデジタルサイネージ
CGSの入口付近の広いスペースには、デジタルサイネージ関連のデモ環境が2つ用意されている。
1つは、情報配信サービス「MediaSpace」。単に大型ディスプレイで情報を表示するシステムのみならず、顧客のコンテンツを受け取り、加工・編集して配信するまでの一連のサービスとして、日立が提供しているものだ。すでにイオングループが店舗に導入しているなど、各地に拠点を持つ企業で採用が広がっているほか、自治体でも施設内の案内表示などへの採用が期待されている。
もう1つのデモは、「インタラクティブ・デジタルサイネージ」。こちらはディスプレイの下にカメラ(兼センサー)を取り付けてあり、見ている人の動きを取り込み、それに対してインタラクティブに反応するシステムだ。「記念写真」と称して、画面内のサイコロを振って出た内容の装飾を施した写真が印刷されるようになっている。現時点では商品化されておらず、参考出品という位置付けだが、「来場者の反応は良い」と泉氏は話す。
「現状では、デジタルサイネージといえばコンテンツを配信して順次表示させるものが主流ですが、今後はインタラクティブなものも徐々に増えてくるのではないかと考えています。例えば地下鉄(東京メトロ)では、この6月30まで、タッチパネルを使ってインタラクティブに経路案内をするといった実証実験を行いました。自治体に関していえば、公共施設に出ている案内板などは、見てもらえているのかどうかが分からないのが実状です。しかし、こういったコンテンツがあれば、履歴から施設全体の利用実態も推測できるはず。ハコモノを作るだけでなく、きちんと検証できるようにした方が良いというのが、日立の提案です」
行政にも求められる「業務負荷削減」「人的コスト削減」の観点
日立にとってのCGSの位置付けとして、営業拠点であることは間違いない。しかし、それだけでなく、自治体や中央官庁などに対してITの使い方の将来像を示そうという狙いもあるようだ。また、自社だけでなく、ほかのベンダーとの協業なども視野に入れている。
「国レベルの大きなプロジェクトとなれば、内容や規模からいって1社では対応が難しいものですし、地方自治体への展開となれば地場のベンダーとも協業して地元の環境に適した提案をしていくことが重要だと考えています」(泉氏)
国レベルのプロジェクトといえば、国のIT戦略の動向にも注目が集まる。次期IT戦略は、基本的に2006年の内容を継承する形で策定が進められているようだが、IT戦略本部が4月9日に発表した「3カ年緊急プラン」の内容も盛り込まれる見通しだ。
日立としては、この3カ年緊急プランの中で、特に3つのポイントに注目していると泉氏は言う。
「1つは、『行政におけるプッシュ型サービスの実現』。現状、さまざまな行政機関に個人情報が分散しているわけですが、その個人情報の所在がどこなのかという情報を管理し、同時にアクセス記録を保持しておく中継DBとして「行政情報共同利用支援センター」を作ろうとする、『国民電子私書箱』構想があります。この構想では、行政におけるワンストップサービスだけでなく、『プッシュ型サービス』をも実現しようとしています。2つ目は、『行政業務プロセスの抜本的見直し』。行政の業務においても、いよいよITを活用した効率化が求められるようになってきたといえるでしょう。そして3つ目は『政府CIOの設置』です」
ワンストップ型、プッシュ型サービスを実現することも、行政や民間の事務コスト削減に大きく寄与するものだ。そして、国や地方自治体のIT投資を効率化すべく、いよいよ政府CIOの登場が期待される。日立は、CGSでの提案を通じて、このような政府のIT戦略を先取りしようとしているようだ。
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