好調 中古パソコン活用のススメ:Weekly Memo(2/2 ページ)
景気低迷の中、中古パソコンの売れ行きが2年連続の2ケタ成長と好調だ。これまでは個人向けが中心だったが、企業向けに利用される動きも出てきている。
求められるサプライチェーンの構築
好調な中古パソコンの普及を後押しする動きも活発化している。マイクロソフトが4月に発表した、中古パソコンに対して正規のWindows OSライセンスを提供する施策もその1つだ。
具体的には、中古パソコンを販売する小売業者などを対象に、「Windows XP Professional Edition / Home Edition」の正規ライセンスを提供する「Microsoft Authorized Refurbisher(MAR)プログラム」という施策である。
中古パソコンが普及する中で、OSを搭載していない中古パソコンを購入したユーザーが、不正コピー版のOSを導入するケースが後を絶たないため、正規版のOSを安価で提供することで、市場の健全な発展につなげようというのが狙いだ。
これによって、良質かつ安価で環境にも優しい中古パソコンがさらに安心して導入できるようになったとなれば、個人のみならず、企業にとっても利用価値がありそうだ。
そうした企業向け需要に向け、ここにきて中古パソコンのレンタルサービスも登場している。一部の事業者が始めたのは、大手企業から使用済みパソコンを買い取り、データ処理したうえで必要なソフトをセットで貸し出す仕組みだ。
現状では企業向けに中古パソコンをレンタルする事業はほとんどなく、初期費用を抑えたい企業はリースで利用するケースが多い。ただ08年春の会計基準の変更で、企業はリース設備を資産計上するなどの事務的な負担が増えていた。
これに対し、レンタルは利用料をそのまま損金算入できるほか、途中解約がしやすいなどリースよりも使い勝手がよい面がある。さらに、リースに比べて導入費用が半額程度に抑えられる可能性があることも、企業にとっては大きな魅力だ。ソフトをセットにした割安な企業向けレンタル事業が、中古パソコン市場の拡大を加速させる可能性は大いにありそうだ。
こうしたレンタル事業をはじめ、これから企業が中古パソコンを活用できるようにするためには、使用済み機器の調達から再生した機器の供給に至るサプライチェーンの仕組みをうまく構築していく必要がある。ビジネスとしては当然ながら収益モデルをいかに構築するかが鍵となるが、中古パソコンが一定の割合で市場を形成しつつある中、環境対策という大きなテーマも踏まえた産業界を挙げての取り組み強化に期待したい。
プロフィール
まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。
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