「好き」の共通点を探そう:ビジネスマンの不死身力(2/2 ページ)
自分のキャリアに不安を感じている場合、仕事や趣味を一段上の視点から見つめ直してみよう。そこを貫く軸を見つけることで、あなたの才能はより生かされるようになる。
抽象化で仕事の選択肢が広がった
わたしには、好きなことを抽象化したことで仕事の選択肢が広がった経験がある。
1年ほど前、人材育成セミナーのコンテンツを考えていた時のことだ。PowerPointに埋め込む人物の画像の配置を考えていた時、「あれ? 今やっている仕事は、プログラマー時代と何も変わりがない」と気付いた。
一見すると、セミナーのコンテンツ作りとプログラムの作成は何の関係もない。だがプログラムは人間の動作や必要な業務プロセスを定義して「組み立てる」ものであり、セミナーのコンテンツ作りは顧客が理解できるように内容を考え、ストーリーを「組み立てる」ものだ。抽象度を上げることで、好きなことの本質は何も変わらないということが理解できた。
そこで現在の仕事であるコーチングについて、どの部分が好きかを洗い出してみた。一番楽しいと感じるのは、顧客と会話をしながら次にどのような流れを「組み立てていく」かを考えている時だということに気付いた。
さらに、以前勤めていた自動車メーカー勤務時代を思い出してみた。そこでの仕事は、開発中の車をばらして組み立てることだった。ここにもやはり「組み立てる」という要素があった。わたしが自動車メーカーに入ったのは、自動車整備士である父親の影響が大きい。機械を直す父親の姿は、幼少期のわたしにとってとても格好よかった。父親が目の前で見せてくれたものは、機械を分解して「組み立てる」ことだった。
これらの経験を振り返ると、「好きなこと」の根底は幼いころから今までずっと変わらなかったようだ。
わたしがプログラマーだった時、プログラム作成に夢中になり、それ以外の仕事はやりたくないと決め込んでいた。プログラマーからコーチに転身した当時は、マネジメントの経験を生かしたやりがいのある仕事ではあったものの、プログラマーをあきらめてしまったような心苦しさを感じたことがあった。
だが「組み立てることを軸に置けば、コーチング、プログラム、自動車メーカーでの仕事はすべて同じだ」と気付いたことで、仕事の選択肢は格段に増えた。今、記事を通じてあなたにメッセージを伝えているが、文章の構成を「組み立てる」のも好きな仕事の1つだ。「プログラマー以外の仕事はやりたくない」と、自らに制限をかけたままだったら、この仕事には出会えていなかっただろう。
抽象度を上げて、長い視点で考えてみよう
IT業界の仕事は大変なものが多い。業務に追われてしんどくなった時には、辞職が頭をよぎることもあるだろう。だが、一度上の視点から今の仕事を考えてみてほしい。長い目でみたとき、下そうとしている判断を冷静に見直した方が得策となる場合もある。自分が好きなことに対する「軸」が分かっていれば、次のステップを検討してみよう。
好きなことについて抽象度を上げて考え、共通点を見つけ出す。そして共通点がぶれないような仕事や職業を選べば、あなたの才能をより生かせるようになるだろう。
企業向け情報を集約した「ITmedia エンタープライズ」も併せてチェック
著者プロフィール:竹内義晴(たけうちよしはる)
テイクウェーブ代表。自動車メーカー、コンピュータ会社を経て、現在は、経営者・起業家・リーダー層を中心としたビジネスコーチング、人材教育に従事。システムエンジニア時代には、プロジェクトマネジメントにコーチングや神経言語学を生かし、組織活性化を実現。この経験を生かして、クライアントの夢が現実になるよう、コーチングの現場で日々奮闘している。アイティメディア「オルタナティブ・ブログ」の「竹内義晴の、しごとのみらい」で、組織作りやコミュニケーション、個人のライフワークについて執筆中。
関連記事
- お盆休みは知人に仕事のことを話そう
お盆休みは仕事のことをさっぱり忘れたいと考えている方も、自分の仕事を親戚や知人に積極的に話してみよう。自分の仕事を人に理解してもらうという経験は、あなたのキャリアに必ず生きてくる。 - 「正しい肩書き」が作る未来のあなた
自分のキャリアにつながるセルフイメージをどう設定するかによって、あなたの可能性は大きく変わる。「肩書きを付けること」は、世間一般のキャリアプランにまどわされない働き方を実現する1つの方法だ。 - 知らぬ間に築いていた「セルフイメージ」を疑おう
エンジニアとしてのキャリアアップを不安に感じる人が少なくない。これは誤った「セルフイメージ」の理解から生じるものだ。思い込みに左右されない働き方を目指そう。 - 「褒める」効用――ほめられサロン、JR脱線事故対応に学ぶ
ミスを指摘してメンバーの心身を疲弊させるのではなく、いいところを見つけて積極的に褒めることが、チームを1つにまとめるための近道になる。 - 仕事の遅延をなくす「ゴールからの問い掛け」
第1四半期が終わる6月、当初決めた計画はスムーズに進んでいるだろうか。遅延が生じている時は、スケジュールの立て方や進ちょくの確認にひと工夫加えてみよう。 - 五感の強み、生かせていますか?
ビジネス上の課題を解決するためには、漫然とではなく、自分の五感の強みを意識して考えてみると、思いもよらない解決策に結びつくことがある。これはなぜだろうか。 - 「ダメ営業・コンサル」の域を抜け出せ
自分の経験を得意気に話し出す営業やコンサルタントを顧客は信用しない。ではこれらの職種に必要な能力は何か。コーチングの視点から考える。 - 五月病を乗り越える6つのステップ
ゴールデンウィーク明けは「五月病」に陥りやすい。特にIT業界では、上司や顧客とのコミュニケーションなどから、自覚している以上のストレスを抱えることが多い。「五月病かな」と思った時に実践しておきたい6つのステップを紹介しよう。 - 連載:ドジっ娘リーダー奮闘記
- 連載:タスクチームノススメ
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.