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第2回:分析でキャンペーンポイントを導き出す顧客データ活用のABC

消費低迷環境下において顧客からの支持を得るためには、自社の顧客を深く理解する能力が求められる。連載の第2回では、キャンペーン・アイデアを導き出すための分析例について解説する。

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 企業がコンピュータシステムに投資をして、データを集める理由――その理由はデータを分析し、業務に活用するためである。従って、例えば昨日の営業実績を見て、喜んだり、ほっとしたり、がっかりすることがデータ活用の本質ではない。もちろん営業実績を把握できることは重要だが、それが「行動」に結びつかなければ、業績の改善、つまり明日の営業実績にはつながらない。

 CRMやマーケティング分野における「行動」とは、顧客に対する行動にほかならない。新規顧客の獲得行動、既存顧客を維持するための行動、そして顧客満足を通じてより多くの支出を得るための行動である。

 そして、この行動の単位となるのが、「キャンペーン」である。キャンペーン活動では、対象顧客を近似のニーズを有する顧客群に限定し、そのニーズに対して最も訴求力の高いメッセージや案内商品を選択する。そしてその案内を、最適なチャネルを通じて、最適なタイミングで案内することによって、より多くの成果を得ようと目論む。

 では、実施するキャンペーンは「誰に」限定すべきか? また「何を」、「いつ」、「どのチャネルを通じて」案内すべきだろうか? 分析によって理解したい知識は、これらの点に集約される。高尚な知識は必ずしも必要ない。具体的で、採るべき行動が明確になったなら、必要な知識は充分に得ていると考えて良い。

キャンペーンポイントを特定する

 ここでは日本テラデータのキャンペーン管理ツール「Teradata Relationship Manager」が提供する各分析モジュールを例に、その手順を見ていく。最初に顧客数と、顧客の支出額で自社の顧客構造を管理することを考える。この2つの理解によって、幾つかの顧客管理上の課題について把握することが可能となるためである。

 図1の分析では、「行動トレンド分析」というモジュールを利用し、各月ごとの顧客状況の変化を分析している。属性ごとの顧客数増減は、顧客数ベースでの管理をしていく上で重要な指標となる。単純な話、新規の顧客数が急増すれば、自社の対象マーケットに何らかの変化があったことを示し、新たなビジネス機会が存在している兆候を示している。また、解約兆候を示す顧客数の増加は、顧客基盤を脅かす変化を示している。

図1:顧客状況変化(行動トレンド分析)
図1:顧客状況変化(行動トレンド分析)

 次に、「パーセンタイルプロファイリング」というモジュールを利用して、解約兆候顧客の支出状況を把握する。図2はその結果であるが、顧客を年間支出額順に6等分し、6つのグループごとに平均支出額を分析している。パーセンタイルプロファイリングは、任意のグループ数と定量指標を用いた分割が可能であり、例えば10等分(デシル分析と呼ばれる)、利益金額順で分割することも可能だ。

図2:平均支出額順に6分割(パーセンタイルプロファイリング)
図2:平均支出額順に6分割(パーセンタイルプロファイリング)

 この結果から、解約兆候顧客の経済価値について構造的に理解できる。経済価値の高い顧客に対しては、優先的にフォローアップが必要となり、またそのためのキャンペーン立案が求められる。

 このように、自社の顧客構造に対して、管理すべき指標を定義し、その指標値を定期的に監視していくことによって変化に気付くようになる。そしてその変化のポイントこそが、キャンペーンを実施するポイントだ。このようなポイントを迅速に見つけ出すために、幾つかの指標値を顧客構造に対して張り巡らせる。これが顧客管理の本質である。

 そもそも顧客管理とは、顧客自体を管理、制御し、支配下に置くことではない。「自社の商売が、本来想定している顧客構造に対して焦点が当てられているか」を管理することである。

 従って理想的な顧客構造に対してギャップが生じているかどうかを把握し、理想に対してマイナスギャップがあれば、それを「改善点」として、プラスギャップがあれば、それを「商売を伸ばすチャンス」として発見することがポイントとなる。この注力点を迅速に特定し、それをキャンペーンにつなげられるなら、顧客構造を理想に近づけることが可能となるはずだ。

対象セグメントの特性を理解する

 では、発見されたキャンペーンポイントに対して、どのようなキャンペーンを実施していくべきだろうか? 前述した分析の結果として発見されたキャンペーンポイントは、いずれも顧客セグメントとして特定できる。例えば、「経済価値の高い、解約兆候」セグメント、「3月に新規申し込みをした」セグメントである。

 よって、この段階で「誰を」対象としたキャンペーンをすべきかは、既に明らかになっている。「経済価値の高い、解約兆候」セグメントに対して実施するキャンペーン、「新規申し込みをする」セグメントに対して実施するキャンペーンである。次の問題は、これらの顧客群に対してどんなキャンペーンを案内すれば良いか? である。

 このための分析例として、さらに2つの分析例を紹介したい。1つ目は、「関連性分析」というモジュールを利用した分析である。この分析では対象セグメントに「経済価値の高い、解約兆候」セグメントを指定し、当該顧客が利用している商品やサービスを比較している(図3)。

図3:解約兆候顧客の利用サービス(関連性分析)
図3:解約兆候顧客の利用サービス(関連性分析)

 この結果を母集団と比較すれば、「経済価値の高い、解約兆候」セグメントは音楽ダウンロードをよく利用している顧客群であると理解できるかもしれない。また前月と数ヶ月前の同じ分析結果を比較すれば、傾向がどのように変化したかも理解できる。

 もし、この数カ月間で変化が現れているなら、この顧客が支持してきたサービスが陳腐化してきているか、競合他社との関係で競争力が低下していることの表れだ。従って、当該サービスを改善した上で、再度利用促進案内することが、ここから得られた知識である。関連性分析は、このように「何を」案内すべきかを明確にする。

 続いて、もう1つの分析モジュール、「クロスセグメント分析」を利用した分析例を紹介する。この分析例では、対象セグメントとして「今年3月に新規申込をした」セグメントを指定し、縦軸と横軸に配置した各セグメントで顧客数の分布を分析している(図4)。濃い水色は配置したセグメントに属する顧客数を、両軸がぶつかる部分の顧客数は両セグメントに重複する顧客数を示している。

図4:流入チャネルvs. 顧客属性(クロスセグメント分析)
図4:流入チャネルvs. 顧客属性(クロスセグメント分析)

 縦軸の各セグメントは、これらの新規顧客が流入してきたチャネルを意味する。これに対して横軸のセグメントは、顧客属性に基づくセグメントだ。ここから、3月に新規申込があった顧客は、どのチャネルからの流入が多いのか、そしてチャネルごとにどのような顧客属性の顧客が流入してきているのかを理解している。

 この結果から、30歳以下の顧客群が多いことがうかがえる。また、流入チャネルとしては自社のWebサイトからの申し込みが多いこともうかがえる。さらに、どのポータルサイトからの流入が多いかも理解できる。流入が3月で、年齢が30歳以下ということを考えると、高校や大学への入学、入社を期に自社商品/サービスを申し込んでいるのでは、という推測が成り立つ。

 従って「来年3月に、ポータルサイトAを利用して、キャンペーンを打つこと」がもっとも効果の高いオプションであると想定できる。これを一般化すれば、分析結果は「いつ」、「どこで」キャンペーンを実施するべきか? という問いに対する明快な答えであり、採るべき行動を決定付ける「知識」である。

 加えて、このポータルサイトAに掲出すべきバナー広告の内容やメッセージも明確になる。「新生活のさまざまなシーンを彩ってくれる商品/サービスのご案内」としてこのキャンペーンを位置付け、対象となる顧客層にもっとも「効く」メッセージ、そして特典を選定することが可能となる。

分析結果からキャンペーンへ

 以上、ここまででキャンペーンを実施するべきポイントを導き出し、キャンペーン内容をデザインするための分析例を概観してきた。最後に、ここまでの流れを整理して、本稿のまとめとしたい。

 まず、管理すべき指標を特定し、その指標値に対して目標値を設定する。もっとも基礎的な指標として、ここでは新規顧客の獲得数、顧客維持率、そして顧客あたり支出額の3つを挙げたい。なぜなら、企業の収入は、顧客数と顧客単価の掛け合わせで成り立っているからである。また、可能であればセグメントごとに各指標を分解し、管理すべきだ。これにより、キャンペーンを実施するべきポイントの特定も容易となる。

 目標値に対して、大きく上方に、もしくは下方にぶれたポイントがキャンペーンを実施していくべきポイントとなる。前者は自社が未だ認識できていないビジネス機会であり、後者は自社が改善するべきポイントである。そして、これらの指標値変化をもたらしたのは常に顧客であるため、この顧客セグメントを特定するのが次のステップだ。

 最後に、特定できた顧客セグメントが、「どんな商品を」、「いつ」、「どのチャネルを通じて」支持しているのか(もしくは支持していないのか)を理解していく。これが分かれば、その知識はそのままキャンペーンデザインに活用できる。あとはそれをキャンペーン管理ツールに設定すれば、キャンペーンの実行準備は整う。

 しかしながら、このような分析を実施していくためには、各データが統合され、一元的に管理されている必要がある。例えば図4で示したような分析は、各チャネルからのデータが統合されていなければ実施できない。このため、次回は「マルチチャネル環境下でのデータ統合」について解説する。

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提供:日本テラデータ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2009年9月15日

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