「目標未達」を挽回できるちょっとした工夫:ビジネスマンの不死身力(2/2 ページ)
もしあなたが目標未達のメンバーを指揮するリーダーなら、「なぜ計画通りに進まなかったのか」と問いただすよりも、メンバー自身が考えて次の行動に移せるような問い掛けを意識してみよう。
あいまいな答えに具体性を持たせるには、「5W1H」を基にした問い掛けも効果的だ。5W1Hとは、「いつ(When)」「どこで(Where)」「誰が(Who)」「何を(What)」「なぜ(Why)」「どのように(How)」を示す。さきほどのやり取りでは「どのように訪問するか」「誰が訪問するか」といった問い掛けをすることで、メンバーの行動までを具体的につかむことができる。行動するイメージが頭の中にできれば、実際のアクションにもつなげやすい。
注意しておきたいのは、質問攻めを避けることだ。「誰が」「何を」「どのように」と矢継ぎ早に詳細を聞くと、相手も答えにくい。ここでの目的はメンバーの頭の中を整理し、答えを具体的にすることで、行動につなげることであると意識しておこう。
答えが出ない場合は、答えの呼び水となる情報の提供を
リーダーの頭を最も悩ませるのが「分かりません」という回答だ。ここで「頭を使ってもう少し自分で考えなさい」などと口にしてしまうと、思わぬ反感を招いてしまう恐れがある。
ここでは、メンバーが考えるきっかけになる情報を提供してみてはどうだろうか。そのためには、あなたが知っていることやこれまでの経験を伝えてみるといい。
A(リーダー):「B君、最近、新規の受注が目標の7割しか達成できていないようだけど、もっと受注できるようにするにはどうすればいいと思う?」
B(メンバー):「全力を尽くしましたが、いいアイデアが浮かびません」
A:「なるほど、いいアイデアが浮かばないんだね。例えば……C社はホームページの商品説明を充実させて、問い合わせが入るようにしているらしい。D社はセミナーを開催して、顧客と出会う場を作っているそうだ。わたしの経験では、既存のお客様に出向いて、困っていることを丁寧にヒアリングすることで、新たな受注につながることが何度もあったよ。いろんな方法はあると思うけれど、A君はどうすればいい思う?」
B:「そういえば、この間テレビでやっていたんですけど、最近TwitterというWebサービスが流行っているようです。ビジネスでの成功事例も出ているそうですよ」
A:「なるほど、そういう事例があるんだね。それについて調べてみたらどう?」
B:「分かりました。お客さんと出会うきっかけにできるかどうかを調べてみます」
忘れないでもらいたいのは、「答えを決めるのは相手」だということ。相手が考えるきっかけを作るために、こちらが持っている情報を伝えると考えておこう。自分で考え、決めたことこそが納得感を生み出し、次の行動をもたらす。「C社のやり方はいいが、D社のやり方はイマイチだ」といったあなたの主観による評価よりも、相手の答えを尊重しよう。
目標を振り返ることの多い今の時期は、問題を解決する力を身に付ける絶好のチャンスだ。メンバーが前向きに課題を解決できるように、会話にちょっとした工夫を加えてみてはいかがだろうか。
著者プロフィール:竹内義晴(たけうちよしはる)
テイクウェーブ代表。自動車メーカー、コンピュータ会社を経て、現在は、経営者・起業家・リーダー層を中心としたビジネスコーチング、人材教育に従事。システムエンジニア時代には、プロジェクトマネジメントにコーチングや神経言語学を生かし、組織活性化を実現。この経験を生かして、クライアントの夢が現実になるよう、コーチングの現場で日々奮闘している。アイティメディア「オルタナティブ・ブログ」の「竹内義晴の、しごとのみらい」で、組織作りやコミュニケーション、個人のライフワークについて執筆中。
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