クラウドに関する「モヤモヤ」を解消する〜後編:栗原潔の考察(4/4 ページ)
前編に引き続き、後編もクラウドに関する4つの「モヤモヤ」についてわたしなりの見解を示していこう。
モヤモヤ8 日本のIT産業はクラウドの世界で影響力を発揮できるのか
現在のクラウドの世界は、Google、Amazon、Salesforce.com、Microsoftとほぼ米国ベンダー主導で進んでいる。この状況は将来変わっていくのだろうか。日本のIT産業がグローバルなクラウドの世界で影響力を発揮できるのだろうか。
クラウドのビジネスで成功できるポイントのひとつは規模の経済、もうひとつは「プラットフォーム化」だ。規模の経済とは前述のとおり、データセンターの大規模化を進めることで、コストを削減するということだ。
プラットフォーム化とは自社単独でサービスを提供するだけではなく、他社がサービスを提供できる場を提供することで共生関係を築き、顧客への価値を高めると同時に、他社のクラウドサービスへの移行を防ぐという考え方だ。Salesforce.comによるAppExchangeなどはまさにこのプラットフォーム化を目指した取り組みである。Salesforce.comのSaaSソリューションを補完するアプリケーション機能を他社が販売できる場を設けることで、他社もSalesforce.com自身も利益を得るとともに顧客にとってのソリューションの魅力を高めることに成功している。
残念ながら規模の経済も「プラットフォーム化」もあまり日本のIT企業が得意とする分野とはいえない。一般に日本国内のデータセンターは米国と比較してはるかに小規模である。また、場合によっては競合他社を支援することで、プラットフォームの普及を進め、エコシステムを築くというビジネスモデルも苦手であると思える。ドコモのi-モードはプラットフォーム化の成功例の1つであるが、それをグローバルに拡張するという試みは成功しなかった。
クラウドにアクセスするための携帯機器のビジネスで日本企業が伝統的に得意とする「軽薄短小」技術を行かせるチャンスはある。しかし、この領域も新興国からの追い上げを受けているし、そもそもプラットフォーム提供者に対する単なるテクノロジーの提供者でしかないのは、付加価値獲得の上で決して適切なポジションとはいえない。
クラウド化する世界において、日本企業が価値を提供できるテクノロジーを持っていないということではない。ただし、そのテクノロジーから価値を得るようにできるためのビジネスモデルを構築するためのリーダーシップという点では大きな課題がありそうだ。
ということで、わたしにとってはこの最後のモヤモヤについてだけは、モヤモヤしたものが残ってしまう。
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