「Linux開発モデルは生物の進化のよう」――リーナス・トーバルズ氏 来日語録:Weekly Memo(2/2 ページ)
Linux創始者で現在も開発をリードするリーナス・トーバルズ氏が先週、関連イベントを機に来日した。記者会見や基調講演での同氏の発言をピックアップしてみた。
Linuxはクラウド時代の最有力OS
「自分の仕事で一番面白いのは、立場の違う技術者、そして利用者に、どうやって満足してもらい、使い続けてもらえるようにするか、を考えることだ」
Linuxの開発プロジェクトをリードする立場として難しい点は何か、と問われたトーバルズ氏は、「難しいというより、面白いと言いたい」と前置きしてこう答えた。ではうまくリードする秘訣(ひけつ)は? と問われると、「秘訣なんてない。18年間、自分の役目にベストを尽くしてきただけ。常にコミュニケーションを図り、どうすれば立場の違う人たちが協力し合えるかを考えてきた」と語った。
「Linuxの開発モデルは、生物の進化に似通っており、目新しいものではない」
Linuxのような開発モデルはほかの分野でも適用できるか、と問われたトーバルズ氏は、こう言って「ほかの分野でも大いに応用できると思う」と答えた。なぜ、Linuxの開発モデルが生物の進化と似通っているかについては、「何か計画を立てて発展していくのではなく、多くの人たちが異なる方向に進もうとする力が働きながら、自然な選択をしていくのがLinuxの開発モデル。この進化の仕方は生物のそれに非常に似通っている」と説明した。
「クラウドコンピューティング時代になれば、OSが求められる領域がさらに広がる。Linuxはその最有力OSだ」
クラウド時代にOSはどう変化していくのか、と問われてこう語ったトーバルズ氏は、「例えば、多様な機能を持つ小型端末がどんどんクラウド環境下で利用されるようになっていく。そうした端末のOSにはLinuxが最適だ。さらに幅広い用途に適用できるよう、安定性や柔軟性を高めていきたい」と力を込めた。
「わたしは原則としてもポリシーとしても、LinuxとほかのOSを比べることはしない」
マイクロソフトのWindows 7など競合OSについてどう見ているか、と問われてこの一言。そして「競合OSについては、個人的に興味がない。それよりもLinuxを前のバージョンからどう改善すればよいか、に注力している」と続けた。ちなみに記者会見の翌日(22日)は、Windows 7の一般向け発売日だったが、トーバルズ氏は「知らなかった」と意に介する様子などなかった。
基調講演の最後に、「あなたの後に続く有望な技術者にぜひアドバイスを」と促されたトーバルズ氏は、こう語って締めくくった。
「一番大事なのは、自分自身がワクワクできるものを見つけること。そして、それが1日10時間、10年間続けられるものであること。世の中に役立つものであればなおいいが、そうでなくても自分が楽しむことができれば、未来は開けてくる。わたしもそうして18年間、楽しんできた」
プロフィール
まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。
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